18、トイレの話
あーどうしよう
雨って面倒だな。
なにがって全てだけど、特に、トイレが。
突然に尾籠な話題で申し訳ないんだけど、雨がやんだらトイレを作ろうと思う。
突然の宣言にスラちゃんもパジェ君も不思議そうにしている。
「ぴゃ?」「突然どうしたんです、ご主人」
「二人には関係ないことかもしれないけど、トイレって文化的で健康的な最低限の生活には必要不可欠な物だと思うんだよ」
本日夕方から初めての雨。
だから軽食のあと、本を読んだり音楽を流したりまったり過ごしていたんだけど、ものを食べれば当然出る物もあるわけで。生理現象は止めようが無いけど、外は雨なわけで。
雨だろうと出る物は出るわけでして。
屋根も壁も無い所で深くは無い穴を掘っただけの便所は、決して使い勝手が良くなかったけど、目印に小石で囲っているし、普段穴は大きな葉っぱで塞いでいるし、まだそこまで使っていないし、で何とかなっていた。
でもね、この雨ですよ。
結構降ってるんですよ、これが。
雨粒が葉に当たる音、木々が揺れて溜まった水が垂れる音、森を覆う雨の雰囲気。
水煙のように霞む様も美しい。
けれど、
そんな全てを覆す、雨の中、森で尻を出す自分。
なんて悲しくむなしいことか……。
あと、足元からの水の跳ね返りがトイレ付近だと不潔。
事実なんて関係ない。
ただの水たまりの水であったとしても。
トイレまわりの水たまりの水が
何が混入したか不明な水が
足に跳ねるのが、とにかく不快。
それを解消するために、トイレに掘っ立て小屋を作りたい。
水洗がいいとか、浄化槽が欲しいとか無茶な贅沢は言わない。
屋根と壁と、もう少し深い穴が欲しいんだよ。
しかも、何も考えずに森の方をトイレにしちゃったから、今いる所の方が若干低いんだよね。万が一溢れたことを考えると由々しき問題だよ、これ。
明日の予定決定!
トイレ事情を改善します!
有り難いことに夜には雨がやんだので、昨日今日スラちゃんが捕ってくれた魚を焼こうかと思ったけど、地面が結構泥濘んでいる。
思ったよりも水が溜まりやすい場所だったみたいだ。そんな感じしなかったんだけどな。
明日移動する理由が増えたな。
温かい食事は諦めて、軽食第二弾でクラッカーの小袋を3人でわけて眠ることにした。
そのままじゃ空腹で寝れない気がしたもんで。
雨上がりの澄んだ空気で、星がいつもよりも更に綺麗に見える。
こんな景色を見ながら車中泊も悪くない。
荷物も広げられないし、水カゴ作戦は便利だと思ったけど、最初よりも荷物が入れにくくなったし車中泊と言っても凄く寝にくいけれど。
今、運転時とほぼ変わらない姿勢です……。
「ご主人ご主人起きてください。朝ですよ。早く移動してご飯にしましょう。おいらまずは昨日通った森の出口方面がいいと思います。
高台だけど海へ通える道があって、平地でしたし。ここよりも水場に近いですよ。何よりも、海側から回れば車が入れます。今なら海岸走り放題ですよ、ついでにドライブもしますか。
トイレにいい場所も探してみましょう」
朝早くパジェ君に起こされた。時計を見ると6時。
ちょうど登り始めた太陽を見ながら、固まった身体をほぐす。脳内お供はもちろんラジオ体操。ジャンプしたり筋を伸ばしたり。あくまで軽めに。
疲れたら意味が無いので。
「自分に乗ってシートベルトをするなんて、変な感じです。意外にきゅっとなるもんなんですね。高さが合わなくて前が見えませんけど、問題ないですよ。なんてたって車ですからね、おいら。車の方の目から見ればいいんです。あ、左、枝がすりそうです」
日の出を見ながらの体操のあと、濡れたままのタープをいったん丸めてゴミ袋に入れて、ペグの回収忘れが無いかは再度チェックした。
さあ、数日過ごしたキャンプを出発するぞ。
すぐそこだけどね。
目指すは北へ約一キロ。
パジェ君お薦めの場所。
「ぴゃぴゃーぷ(お水大丈夫?)」
出発前に水カゴの水はスラちゃんに半分以上飲んで貰った。車内がびしゃびしゃになるのは困るからさ。
……汲み置きよりもスラちゃんに水を出して貰った方が早い事はとっくに分かっているんだけど、出来ることは自分でしなくてはと思ってね。汲みに行ったんだけど無駄だったな。いや魚捕れたし無駄じゃ無いか。捕ったのスラちゃんだけど……。
出会って1日2日の子達の能力に既に甘えまくってて何言ってるのって感じだけど。
「おいらはもう二十年近くの相棒ですよ!」
そうでした。
パジェ君パジェミィだもんね。
本当に心読めるのかな?以心伝心が恐いね。
このあたりか。
道順を示すテープのすぐ横、木々が揺れても問題無さそうな場所に車を停める。
木々はまばらに生えていて、海にも森に近い。
ちょっと背の高い木が多い分、視界も開けている。
ここにキャンプを張り直すとして、
トイレは、この辺!
早い所トイレ問題は解決したいです。
実は昨日の夜、水洗トイレの横でボーと立っている夢を見たからね……。
トイレを使っているんじゃないんだ、ただ立ってるんだ。
自分の虚ろな顔が恐かった。
トイレのことばかり考えて過ごすのは、早く終わりにしたいです。
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