12、スラちゃんは凄い
歩こう歩こう〜ぴゃんっ もっとあるこう〜ぴゃー
楽しくなる歌を歌いながらスラちゃんを肩に載せて歩く。
スラちゃんも上機嫌。
肩に乗るのむり!と言われたのがショックだったのか、あの後スラちゃんはぷるぷると震えだした。どうしたんだ、どうしようと自分がオロオロしている間にも揺れが激しくなっていく。
もうほとんど本体が分からないほど高速に大きく揺れて、そして縮んだ。
「ぴゃっひゃ〜(できたー)」
満足そうなスラちゃんはオレンジくらいの大きさになっている。
手のひらにものるし、肩に乗っても問題ない大きさ。どういう仕組みなのか水を大量に飲んだときの手触りの余韻も残しつつ、破裂しそうな不安感はなくなり重さもオレンジくらい。
そしてそのまま満足そうなスラちゃんは、肩の上で歌に合いの手を入れながら揺れている。
よかった。
小さくなってくれて本当に良かった。
せっかく出来た仲間に圧死させられるなんて未来は回避できた。本当にまた走馬灯がでかかったからね。危なかった。
「スラちゃんもご飯食べる?」
枝集めとスラちゃん巨大化事件のお陰で昼はもうとっくに過ぎている。
まあ三食食べなくても、遅めの朝食、早めの夕食、くらいでも良いかも。
昼休みが決まっているわけでも無ければ、時間通りに行かない事もあってもいいし。臨機応変に。
ところでブレクファーストとランチでブランチなら、ランチとディナーでなんて言うんだっけ。なんか言葉があったような無かったような。
手近な木にロープをかけて物干し竿を作る。小さなピンチハンガーを持っている事を思い出し、衣類を洗っていない事を思いだした。
流石に初日から服や靴下は替えているけど、洗い物溜まっているんだよね。しまったなー。タオルが汚れたから、とタオルだけを持っていってしまった。
おばあさんは川に洗濯に行きました。は定番なのに。明日にでも行こうかな。
しわになっているタオルをパンパンと振って伸ばし、ロープにかけていく。風にタオルがなびくのが面白いのか、ロープに跳び乗ったスラちゃんが器用に上で跳ねている。
「こら、ロープが弛んじゃうから下りて」
「ぴゃーん(はーい)」
飛び降りた先はすぐ横にあったパジェミィのボンネット。黒い車体に、スラちゃんの動いた跡が出来る。
パジェミィ結構汚れてた。
あとで洗車もしたいな。
パジェミィにはお世話になってるんだし。
バケツに柄杓を突っ込み手を洗う。何回もくみに行くのは面倒なので、節水。今日はこの水で持たせたい。
洗車……
後で考える。
柄杓は本当は釣りの時に餌をまく用のなんだけど、気にしない!
おとなしく背面タイヤに座って(?)待つスラちゃんを確認して、火を熾す。水はともかく火に飛び込まれたら心臓が止まる。
飯盒に米一合をセットして、お肉を取り出す。
魚にしようかと思ってたけど、魚よりこっちの方が鮮度的に先だろう。ちょっと茶色くなりかけてる。
ダッチオーブンに切ってきた野菜ミックスを適当に入れて炒める。エリンギ追加。キノコ好き。
フライパン代わりにする蓋には軽く油を引いて肉を焼く準備。タレはさっぱりポン酢を用意。
片手鍋みたいなメスティンだと取り皿にも出来るイメージがあるんだけど、今のところ飯盒があるから買ってないんだよね。
集め出すとキリが無いし。
買う基準は基本的にIH対応かどうか。ダッチオーブンは使えた。たまに家でも使う。重いけど便利。
スチール皿と割り箸(コンビニで貰う、元から割れてるやつ便利。溜まりがちだし)も用意して準備よし。
スラちゃんおいでー
飯盒をひっくり返して蒸らしつつス、スラちゃんを呼ぶ。
薪を組んで作った即席の椅子にスラちゃんも座り準備よし。
「火は触っちゃ駄目だよ。熱いからね」
ぴゃん〜(わかった〜)と鳴きながらお行儀良く待っているのが微笑ましい。
肉を焼き始めると途端に良い匂い。
ハイボールを……いや流石に今日はまだ早い。
後の予定を考えぐっと我慢しつつ、肉をパクり。
スラちゃんにも分けてあげると嬉しそう。
ところでどのくらい食べるだろうか?朝よりも大きいし食べる量も増えるのかな。大きいままじゃなくて良かった。
食糧危機が一気に来るところだった。
炒めた野菜に肉を載せて出してあげると、野菜も美味しそうに食べている。好き嫌いはないようだ。
焼き肉丼もしたいけど、今回はシメのご飯があるのだ。
最後に焼き肉で出た油にチューブニンニクを入れてガーリックライス。
網焼きも良いけど、鉄板だとこれが出来るから良いよね。
「うま〜」
「ぴゃ〜」
さて、お腹も満足、ということで洗車しますか。
洗車は水をザブザブ使った方が傷が付きにくいし、汚れも落ちるイメージがあるんだけど、今回は後ろにタープを張ったままだし、節水だからなあ。
濡らしたタオルでふいていこうか。
いつも積んでいる洗車用ぞうきんに水を含ませる。
やっぱりもうちょっと水が無いと拭きにくいな。車体が暖かいからかすぐにタオルまで乾いてくる。バケツの水全部使い切っても良いか。
面倒くさいけどまた汲めば良いんだし。
「ぴゃ〜?(なにしてるの?)」
「んーパジェミィを拭いてあげてるんだよ。ちょっと水が足らないから、持ってくるね」
車体後方、タープ側からバケツを持って戻ると、スラちゃんの触手から水が溢れていた。
え?
「ぴゃぴゃぴゃ〜(いっぱい飲んだからお水出せるようになったよ)」
え?
え?
スラちゃんに聞いたところ、
いっぱいお水を飲んだから、いっぱい出せるんだそうです。詳しい仕組みは本人も分かってはいそうです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます