6、一眠りして、満身創痍

あー体力と筋肉が欲しい。

全身が熱を持ったように痛い。筋肉痛がひどい。しかも来るのはやい。まだまだ若いな私。


落ち着いてみたら、見れば見るほど擦り傷切り傷打ち身だらけ。

最近登山はおろかトレッキングも行ってない。ワンコの散歩しかしていない。

運動不足だ。

田舎者は足腰強いなんて幻想だったんだ。コンビニにも車で行くもん。



いたたたた

呻きながら車から這い下りる。

昨日はあまりに疲れていて、暗くなる前に倒れ込んで眠ってしまった。

現在時刻を確認すると、まだ真夜中の内。辺りは暗いけど車の中は安心できた。

昨日の夕方、横になりたくて後部座席の荷物をいくつか引きずり下ろしたところから記憶が無い。

荷物を下ろした分、自分がギリギリ横になれるスペースを確保したら寝てしまった。


車外に置かれた荷物は幸いはそのままそこにあった。

けれどそのままにしてはおけない。

すぐに雨は降りそうに無いけど、水の豊かな島なら雨も多いはず。

屋根は欲しい。


荷物のいくつかを積み直して、今度は運転席に座る。

座席を深めに倒し、もう一度横になる。多少荷物がない分座席は昨日よりだいぶ倒れる。とはいえ、平面にならないのは寝にくい。これはそういう構造だから仕方ない、けど運転席の方が何故か落ち着く。慣れの問題かな。


スライムを揉みながら今日(昨日?)のことを考える。


水は確保できる目処が付いた。

毎回バケツを持っていくのは大変だけど、タオル類入れにしている洗濯カゴの一つに大きなゴミ袋でもかぶせれば即席の水瓶が出来そう。汲み置きしておこう。袋が水圧に負けるかな。どうだろう。

手や身体を洗うだけなら最終的には下流の方の水でも良い気がするし、一回やってみよう。


寝る場所も車がある。背が低いから後部座席を倒してギリギリ横になれる。ちょっと曲がり気味だけど。長時間過ごすには、荷物を載せたままじゃちょっと狭い。寝返りもうてないし真っ直ぐになりたい。

外に出すか。

でもそうなると荷物の置き場に困る。ただでさえ車外に置きたくないのにバラバラと置いておくわけにはいかない。抵抗がある。

やっぱりテントを使おうか。


そもそも持ち物のほとんどはアウトドアグッズだから外で良いんだけどね。

とはいえ雨ざらしはまずいし、まだまだキャンプギア不揃いだから、家と兼用のものとか結構あるんだよね。


雨の日は自分も物も車内に入るとして、休憩所は欲しいよな。




あーーー

四次元ポケットが欲しい。

安心してものを入れておける能力が欲しい。アイテムボックスとか収納魔法とか、そう言う魔法多いじゃん。なんで使えないの。

そもそもこういう不思議な現象には説明者が不可欠なんじゃ無いの。何で誰もいないのかね。



貴方はなんたらの巫女です、とか

皇子を呪うための生け贄にーとか

王に選ばれたーって使者が説明してくれたり、

勇者になって魔王をどうのこうのって王様に頼まれたり

間違って召喚しちゃった☆ごめんね、って神様が出てきたり。

なんかそう言うの。

あるでしょ、色々と。


何をどうしたら良いか、今何がどうなってるのか。

教えてくれる存在がいないと何も始まらないじゃん。始まる前にそのうち終わっちゃうよ。


そういえばあの大猪どこ行った。

あの子が出てきて何かしら説明するのが筋なんじゃないの。

それとも大猪は関係ないのか。

ただの事故?

今の状態こそが事故だけどさ。



何をどうしたら帰れるのか、ここがどこなのか誰か教えてくださいよ。


……。


誰かを待ちながら、今後必要なモノを考えよう。


収納魔法。

本当に欲しいけど、魔法なんてどうにも出来ない。


何かしらの説明。

本当に欲しいけど略。


帰る方法。目標は無事に帰宅する事。

明日?今日?で休み終わりだけどどうしよう。欠勤の連絡も出来ない。

自営業だからって勝手は出来ないんだよ……。


体力と筋肉。

あーからだが痛いと気分が沈む。

どうしようも無い事を考えてしまう。

昔は筋肉も秘めたおデブだったんだけど、筋肉量減ってたんだな。出てこい昔の杵柄。光れ秘めたポテンシャル。


火は必要に応じておこせる。ガスボンベの予備もある。ライター持ってる。マッチもある。木もその辺にたくさんある。


後必要なのは食料と居住スペースの確保だな。


考えてたとおり、車を拠点にするとしても過ごす場所または荷物置きのテントかタープが必要だと思うので、明るくなったら行動しよう。

食料はあるけど、数日しかもたない。

一応食事の予定表買い出しの時に作ったけど、どこに詰め込んだんだっけかな。


そもそも本気のサバイバルを想定して用意していない。

キャンプへ行くつもりだったから。

米は多めに持っている。二キロの袋だから、十三合くらい?

余ったら日常使いしようと思ってジッパー付きのを買ってきて良かった。

非常持ち出し袋は車用の予備の袋。出先で何かあったとして、水とクラッカーとか必要最低限で家に帰り着くまでの一日から二日分しか想定していない。

あ、生ものを食べなきゃ。



冷蔵ボックスの生ものが心配になりエンジンをかける。

音に驚いたのが鳥が鳴きながら飛び出したけど気にしない。

昼間散々うおー!ぎゃー!と騒ぎながら森を歩いたのだ。耳慣れない声に寄ってくる獣がいるならもうとっくに来てる。


なんなら来るなら来い。

もふもふのお友達は不思議現象につきものでしょ。


温度設定を見ながら二十分ほどエンジンをかけながら音楽を流しだらだらした。ラジオは試してもやはり入らない。

唯一車に乗っていたCDでハロウィンソングを流す。

よし楽しくなってきた。



釣りもしよう。いや、やっぱりまずは罠を作ってみよう。

ゆっくりと糸を垂らしていると色々焦燥感がきてヤバそうだ。そう言う焦りや不安はお魚さん感じるから。

何よりも罠なら放っておけば良いのが良い。

今日の予定は魚の調達チャレンジと、ベース基地作りだな。


楽しんでいこう。

ポジティブ大事。


この世はでっかいキャンプ場!


あ、違う歌出た。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る