story2 QUEEN




こんな毎日も今思うと、まるで夢のような日々だった。

別にこの状況から抜け出せるのならば、虐めも暴力もなんだっていい。

だから………。


まあ、そんな力も権力もない私に、何ができるというのだろうか。



 ■□■⚔■□■



「YouZooの危機についてどのような対処を‼」

「QUEENの座から降りるということに対しての反論は‼」


憎たらしい。こんな毎日はうんざりだ。

内心、今にでも首をはねたいところだが、そんな記者たちを、笑顔で流す我。

呆れや憎たらしさなどの感情が脳内でかき混ぜられ、何とも不快だ。

だが、女王としての座。

素を見せるわけにはいかない。


「………それはもう対策済みでございます」


サワザワ………


耳に響く雑音の数々。

それがなにより、私の不快感を増量させた。

………我慢だ。

あと、少しで………。



「YouZooの危機において、」



〝 我 娘 、 ラ ム ・ エ ヴ ァ リ ス を 採 用 す る 〟



「「 ………!? 」」



「なぜですか女王陛下!このような事態に娘を利用するのは………」


ひとりの記者が、驚きを隠せていない顔で、私に問いかける。


「王位継承者がいなくなる、そう言いたいんだろう?」


すると、何とも怯える表情で静かにうなずく彼。


「可愛い子には旅をさせよ」

「我が娘には将来、我のような立場に至ってもらいたいと願っている。だが同時に、女王になるにはとてつもない芯の強さが必要であるからに、彼女を戦闘に参加させ、世間の難しさを学んでもらいたい」


「もし命を落としたら………」


「王位継承は他者のものになる」


辺りがまたざわつく。

私はそのざわめきを無視し、話し続ける。


「歴代の王達は、皆そうしてきた。勿論、我もだ」


女王には絶大の権力がある。

逆らったら………この国の民共は皆知っていることだ。


まあ、女王の座にはそれくらいの度胸が必要なのは間違っていない。

だけれど、本当の理由は。


彼女が〝実〟の娘じゃないからってことが一番だ。


我は心の中でまるで悪魔の高笑いのようにつぶやいた。


血も繋がっていない者に命?

しかも何の権力もないただの子羊に?

我はそんな甘くない。


………いいや、世間も同じ立場ならば、見捨てるに違いないだろう。


「 生 き た か っ た ら 自 力 で 生 き な 」


記者が防御者ガードたちに追い払われた後、我はそう、空に向かって静かにつぶやいた。


我は生きたものだけに、希みを与えてやる。




 ■□■⚔■□■




〝義理〟母の内心を知り、床を力強く踏みつける。

まあ昔っから気が付いてたんだけどね!

正直、これしかいいストレス発散法がなかった。


「この猫被り……ッ」


心の中から溢れてきた言葉が、声に出る。

だけれど、そんなこと言っている場合でもない。


どうしよう………羊の遺伝子である私が〝ハンター〟だなんて。


〝詰んだ〟

脳内がその言葉で埋め尽くされる。

羊の遺伝子の私と、女王の遺伝子が違うくらい安易に分かる。

世間はどれだけ無責任なんだろう。

今更世間の闇深さに気が付く。


ヤダヤダヤダ。まだ愉快な人生を楽しみたい‼


といっても羊の遺伝子からして、愉快で快楽な人生とかまずなかっただろうけど。


基礎能力とは生まれたときの遺伝子から大幅に変化する。

もしもヒョウなどに生まれているのだとしたならば、隠れ身やスピード性に対して大幅にアップするのだろうけれど……。

どうせ羊という運命。基礎能力はほぼマイナスに近い。


ドンドンドンッ


そしてまた、自分自身が羊の遺伝子のことにイラつきを持ち、床を踏みつける。


女王はよかっただろうね‼なんせアナタは、見た目通りトラの遺伝子だもの‼


世間では、"トラ"が世界一の遺伝子だとされていた。

性格は……最低最悪、喧嘩体質。ダメダメ平和主義だけれども。


ドンドン、ゴンッ


一際大きな音が出た。

最後の騒音だけが、しんと静まり返った深夜の部屋に響き渡った。


「ふぅ………」


やっとのことで心が落ち着き、胸をなでおろす。


だがそんな猶予な時間もこれだけ。


明日からは、本格的に地獄が始まる――――…。

































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