第18話
「こないだはどうも」
「お礼はたっぷり返させてもらうじゃん?」
痩せぎすの男子とツーブロック頭の男子。どちらも包帯まみれの
「ふーん。こいつが最近イキってるらしい、梅組の転校生なんだね」
否、もう一人いる。
渡り廊下の曲がり角より少女が現れる。うねる髪の毛を
「私は
要するに不良の逆恨みである。
調子に乗って痛い目に遭い、汚名返上にと身内に助けを求める。テンプレート通りの展開に失笑を禁じ得ない。
(へぇ。あの女、いいかんじの瘴気を醸し出しているねぇ)
怪異を見抜くヴェノの洞察に間違いはない。
両脇でぺこぺこしている男子二人を
しかし、これ以上の依存は身を滅ぼす。いかにして
(いけずだねぇ。意地なんて張らず、気軽に私を呼んでくれないかい?)
誰がするか。
暴走のリスク
ああ、面倒なことになった。
ちら、と後ろを
「そんな暇はない。もうすぐ授業が始まる。そっちも同じはずだろう。だからどいてくれないか?」
「悪いけど、その願いは聞き入れられないね。皆勤賞なんかより私らのプライドの方が百倍重要だよ」
交渉決裂、取り付く島もなし。話し合いで解決は無理らしい。
かといって力尽くの突破は論外だ。戦闘は避けたいのに選択肢がほとんどない。八方塞がりである。
(なんだい、面白そうだってのに。私は準備万端、いつでも行けるよ?)
だから、嫌だと言っている。
(意気込みはいいんだけどね。あっちがその気な以上、どうしようもないんじゃないかな?)
ヴェノに賛同するのは
いくら俺が非暴力を貫こうと、相手が対話拒否で攻めてくるのだから戦闘不可避。抵抗しなければ好き放題に
激突はもうすぐそこまで迫っている。
増入の全身より〈怪異持ち〉特有の瘴気が、
「
増入は瞬く間に黒色の獣へと
(あの女の中にいるのはリンフォンみたいだね)
リンフォンとは、とある正二十面体の立体パズルと、それに付随する怪奇現象の名称である。熊、
増入の〈怪異能力〉はその変形機構が元となり、熊に変身する能力として発現したのだ。恐らくこの他にも、鷹や魚への変身も控えているだろう。
「藤村、逃げろ」
仁王立ちマナーモード状態の彼女に、さっさと立ち去るよう促す。
「えっ、でも」
「鏡の中でもどこでもいい。早くここから離れるんだ」
とてもじゃないが、召喚なしで彼女を守り切れない。自分の身すら危ういのだから当然である。
(だからぁ、私を頼ればいいんじゃないかなぁ。それで万事解決だよ?)
しつこい、うるさい、黙っていろ。
お前との漫才に割けるほどの余裕はない。売り切れ御免だ。また明日にしてくれ。
と、内なる怪異を
斜め右後方へと跳躍、紙一重で斬撃を回避する。攻撃対象を失った刃は空振り、木製の床に引っ掻き傷を残す。
本気で殺すつもりの一撃だった。
殺意を募らせてまで俺を打ち負かしたいのか。逆恨みも
「この私の攻撃を
剛腕を振り上げて第二波、更なる
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