第10話 ゴブリンの家作り

1分近く景色に見入ったが途中で我に帰る。名残惜しいが、これからいつでも観れると考え切り上げた。

「後やってないのは集落を作るのだけだが...

しかしゴブリンの集落ってどんなものか分からないんだよな、そもそも後3つも集落作れるほどDPが余ってないしな...

いっそゴブリンに任せるか。」

美しい景色を作り終え燃え尽きてしまったのか、半ば投げやりに作業を終わらせた。


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『第2階層を「雪原」と認定しました。

雪原の生態系が再現されます。』


いつもの部屋に戻ったら、頭の中に音声が響いた。男とも女とも、子供とも老人とも捉えられる不思議な声だった。

「ダンジョンはこんなこともできるのか。何を以て判断してるんだ?」

疑問に思ったが、「そういうもの」と受け取って考察するのを止めた。

「とりあえずどうなったか見てくるか!ゴブリンも連れて行って集落を作らせよう。」

2階層の変化にワクワクしながら、最初の日に掘削していた10mの通路の奥に新たに設置されている階段を8匹のアイスゴブリンと共に降りた。

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「これは凄いな」

2階層に降りて最初に目に付いたのは、狼が兎を追いかけているところだった。

「動物が生きているのか、そのまま文字通りに。」

川の方まで行くと魚が泳ぎ、鹿が水を飲んでいるのが見えた。空では鳥が飛び、葉が落ちた木に止まって休んでいた。


「ゴブリンよ、ここで自由に暮らせ」

俺は集落①の所でアイスゴブリンにこう命令を出した。すると、1匹のゴブリンが声を上げ一斉に周囲にある木を切り崩すために幹を殴り始めた。

複数で1本の木を何回も殴っていると突然、「バキッ」と鳴り木が折れた。

「効率が悪いな。それに痛そうだ。」

水魔法で水を出しながら氷魔法で順に凍らせていく。まず直径6cm、長さ60cmの氷の円柱をつくった。そして扇形の氷を形作り円柱にくっつけ、氷の斧を作った。刃先に当たる部分の氷は薄くし木に氷がめり込みやすいようにする。

「こう使うんだ」

最初に声を上げたゴブリンの前で木を切り見本を見せる。6回振って3/4程切れたら、木が自重で向こう側に倒れた。

「倒れた木を切ってみな」

そう言いゴブリンに斧を渡す。思いのほか斧を使うのが上手く、斧を振る毎に木の溝は深くなっていく。

「手先は器用なのか?」

1つ3m程に木を切り分け、その木を他のゴブリンと一緒に集落①の中央に持っていく。

俺は追加で同じように斧を4本作り上げ、適当にゴブリンに渡した。ゴブリンは斧を持ち2人1組で散らばって木を切り、短くした木材を集落の中心へと運んでいった。

「しばらくゴブリンのことを見ているか。」


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直径50m程の空間にある木を全て切ったところでゴブリンは皆、木が積まれている中央に集まっていった。

「木を切るのは終わったみたいだな。」

これからどうするのかと気になっていたら、リーダー格のゴブリンがまた声を上げた。するとゴブリン達は丸太の両端付近の上下に斧で溝を作り始めた。また他の丸太には、その溝に合うような形の凸型が出来るように木を削り始めた。8本ずつ完成させたら壁としてそれらを交互に組み上げていく。その時、扉に当たる部分の壁に、ゴブリン1匹が余裕を持って通れる程の空間を開けた。4方に計16本、1つの壁に4本の丸太を積み上げる。丸太1つの直径が1mあるかないかだったから、3m半ぐらいの高さになった。

次に屋根を作るため、まだ使ってない丸太を階段状になるように並べ、壁の上に行けるようにした。地面の上で、屋根となる丸太が壁と合体できるよう、丸太の下側に先程と同様凸型になるよう周りの木を削る。そしてそれを運び壁の上に立つゴブリンへと受け渡した。ゴブリンは向かい側にも立ち、2匹で丸太を壁に嵌めようとする。けれども、丸太の重さと不安定な足場が原因か、壁の上から転落してしまい嵌めるのに失敗する。死にはしなかったが良いものの、今まで順調と思われた作業に曇りが見え始めた。リーダー格のゴブリンが悩んでいると、2匹のゴブリンが落ちた丸太に近づいていった。1匹は群れの中で最も大きいゴブリンで、2匹目は対照的に群れの中でも小さい寄りの体格だった。先程と同じように壁上に登り、体が小さいゴブリンがすいすいと奥の方へと進んでいく。

「足が小さいから丸太の上も先程のゴブリンより安定して歩けてるな。」

大きいゴブリンは、見た目通り力があるそうで丸太の重さにも耐えられるようだ。丸太の重さのほとんどを大きなゴブリンが任されることによって、小さいゴブリンは丸太を嵌めることに成功した。そのまま大きいゴブリン側も嵌めることができ1つ目の天井の丸太を

付けることができた。その後は、もう出来ている天井も足場として簡単に3つの丸太を嵌めた。


「ゴブリン毎にも結構得意なことが異なっているな。指示を出せる者もいれば、力仕事が他より得意な奴もいる。他の奴も何か得意なことがあったりするのかな?」

そう言い、初めての家を完成させ喜ぶゴブリン達を見た。


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