第8話 天地創造

 始まりは無だった。時間だけが流れていた。いつからか、そこには男と女がいた。まず、2人は平坦な大地を創った。そして空を創り、空の果てには星々を創造した。星々の中の1つ、高温を放つ恒星、太陽が光と温かさをもたらした。大地に高低差を生み出し地形を創った。低い所に水を注ぎそこを海と呼んだ。太陽の熱が海の水を蒸発させ、空には雲ができた。雲は雨を降らした。2人は潤った地面に植物を植えた。植物は次第に大地を埋めていった。

 静かな世界に退屈した2人は、海と大地、そして空に意思ある生命体を創った。世界には動きが生じ、2人はそれを大いに喜んだ。しかし、それらは既に創られた世界、という枠組みの中で生きるだけだった。

 そこで女は自らに似た姿形をした生命体「人間」を作り、知能と大いなる探究心を与えた。人間は川の近くに集落を作りそこで暮らし始めた。女は白い光で集落を保護し、動物の侵入を防いだ。人々はその御業に感謝し女を「女神」と崇拝した。次第に人々は女神の業を自らも使いたいと願い、女神は人々に使えるようにと魔法を授けた。

初めは木を切り出したり、穴を掘るために魔法を使った。しかし知能と長い時間の結果、攻撃の手段としての魔法を開発した。女神は自分が知らない使い方をする人間に更に興味を惹かれた。その魔法により人間の敵はいなくなり、指数関数的に人間のコミュニティは発展した。大地は建物で埋まり作られた塔は空まで届くようになったことで、美しい景色は切り崩された。そして人間以外の生き物は住む場所を無くし瞬く間に数を減らした。

男はそれをよしとせず、人間に対抗するために女と同じような生命体を創った。それに人間より強力な魔法を使えるようにした。そして、人間を殺す度に強くなれるようにし人間を積極的に襲わせた。人間はそれを「魔人」と呼び、男を「魔神」や、女神と対象的な色から「黒神くろがみ」と呼んだ。

最初、魔人はその卓越した魔法で人間を圧倒した。しかし、人間は魔法に頼らずに槍や弓、剣で戦闘する術「スキル」を生み出したり、新たな魔法を生み出したりと対抗できるようになった。

均衡した状況に際し魔神は、他の生命体と魔人を融合した生物を創り出した。それは「魔物」と呼ばれ、人型では有り得ない足の速さや、肉体の強さ、速すぎる反応速度、そして魔人には少し劣るが魔法を使えることにより、魔人と魔物合わせた「魔族」に対し人間は大きく苦戦した。

 それに対し女神はまず、人間にも魔族を倒すと強くなるようにした。

そして、人間を「人族ヒューマン」、「長寿族エルフ」、「小人族ドワーフ」に分けた。人族には高い繁殖力と大いなる成長性を授けた。長寿族には人族の3倍の300歳まで生きる寿命と、より強固な魔法への親和性を授けた。

小人族には少しばかり人族より長い寿命と、鍛冶・工芸の才能、強い筋力、そして頑丈な体を授けた。

戦場では、長い時を生き知識を蓄えた長寿族が全体の指示を取り、小人族の武具に身を包んだ人族と小人族が魔人と魔物を抑え、後方から魔法を飛ばすという戦略で魔族の侵攻を退けるようになった。

どちらも1歩も退かない戦いに先に音を上げたのは世界の方だった。世界は両者の戦いの余波に耐えられなくなり、山は崩れ空は裂け、地面は割れ海は干上がった。もはや世界は生物が生きる環境では無く、争いも自然と終わった。女神と魔神はその惨状に後悔し、2度と世界に直接手を出さないと両者共に誓約した。

女神は世界の復旧をし再び人間が生活できるようにさせ、魔神は「ダンジョン」という新しい空間を創造し魔族の新天地を創った。

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