第4話 来訪者

~???視点~

〈ここに洞穴があるぞ!〉

『本当か? それは幸運だ。』

〈全く、急な吹雪に巻き込まれたのは不運だけどな〉


2人は警戒しながらも洞穴に入っていき、濡れた服を脱ぎ、暖を取り始めた。

〈やっぱこういう時、火魔法は頼りになるな〉

『訓練しない俺ではこの火を灯すので精一杯だがな』

〈それでも火魔法を使え無いよりは断然楽だぞ!〉

『女神様の御業に感謝だな』


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


~主人公視点~

初めての睡眠は得体の知れない感覚により、目覚めさせられた。

「どうやらもう人類がダンジョンに侵入したらしい」

侵入者は2人とも人族の男だった。1人は小さい盾と剣を、もう1人は弓を持っていた。

「今すぐ殺してもいいが、けしかけたゴブリンを見られて逃がす訳にはいかないな。」

俺は訪問者の詳しい状況を知るためにコアに触れた。

コアに触れると、ダンジョン内各地の俯瞰視点と声をひろうことができるのだ。


~???視点〜

『どうやらどこかに水筒を落としてしまったようだ。』

〈まじか!? 俺の水筒はほぼ空なんだよな。〉

『吹雪はいつ止むかわからない。なるべく節水していこう。すまないな。』

〈しょうがない、狩りにアクシデントは付き物よ。〉


~主人公視点~

「どうやらあいつらは水に困っているようだな。」

俺は数秒考え結論を出した。

「水魔法を使って、水滴の音で3つ目の部屋におびき寄せるか。あそこなら床が凍ってるし簡単には逃げられないだろう。ゴブリンも3つ目の部屋に全員移動させようか。」

やるべき事が決まり、すぐに俺は3つ目の部屋に向かう。そして、ゴブリンを招集し、入口に連なる通路からは死角になる場所で水魔法を使い始めた...


『道が崩落しているかもしれないから気をつけろよ』

水魔法で壁に水を少しずつ掛けること小一時間、やっと来訪者共は入口から動き出したようだ。


(あいつらが氷の上を歩くまで我慢だ)

俺は初めての戦闘に逸る気持ちを抑え、確実に殺せるまで待った。ゴブリンも空気を読んだのか鳴き声が更に抑えられていた。


コツン、コツン、

来訪者は慎重に、されど確実に1歩ずつ部屋へと近づいてくる。




ツルッ ドンッ

「ゴブリンよ、行け!」

戦いの狼煙は、弓を持つ男の落下と共に上げられた。

滑った拍子に手を前に着いた体勢で落下したので、復帰までには大分掛かるだろう。それに、落とし穴の幅の小ささもそれに一役買っているだろう。

剣士は、後ろにいる仲間の突然の落下とゴブリンの登場に虚を突かれ、動き出しが遅れていた。後ろに逃げようにも、自分も落ちるかもしれないという疑念が、彼の後退を躊躇させたのである。

「フロストバイト」

俺は、ゴブリンが剣士に到着する前に、剣士に向け手から冷気を飛ばした。顔を狙って放ったが相手の持つ盾によって防がれたようだ。

「遠すぎて盾に霜をつけることしかできなかったな」

しかし相手は防御に気を取られたことにより、ゴブリンは距離を詰めることに成功した。4匹のゴブリンは途中、落とし穴に落ちたりもしたが、6匹はついに剣士に飛びかかり始めた。


〔スラッシュ〕

そう唱えると、男の剣は白く輝く光を纏い、たちまち2匹のゴブリンは死体と化した。その勢いのまま次なる敵へと踏み出そうとしたが、氷に滑り勢いは殺されてしまう。


(ゴブリンがこんな簡単にやられるとは。俺がどうにかしないとな。)

両者とも行動を起こさないことで戦いが停滞し、俺には相手を鑑定する余裕が生まれた。

「鑑定」

ヴィーク Lv1

-剣術-

-盾術-


「見た目まんまのスキル構成だな」

新たに追加情報は無いが、その情報が俺には嬉しかった。

(相手は俺に近づくしかないが、この地面ではそれも難しいだろう)

俺は相手から3m程の場所まで走り、近すぎず遠すぎずの距離をとった。


〈お前は何者なんだ? ここはダンジョンなのか?〉

俺はそれに無言で、フロストバイトを返した。ヴィークは先程と同じように盾で防ぐ。しかし、時間を掛けながらも盾は中央から凍り始めていた。

ヴィークも盾が凍り始めたのに気づいたのか、顔に焦りが見え始める。

《これは不味い、盾で防ぎ続けていたら次第に腕までも持っていかれるぞ。ティムはまだ戻ってこないのか!》

ヴィークは心の中で毒付きながらも、仲間の復帰まで耐えるため必死に盾で防ぎ続けた。



ヴィークの左腕から盾が落ちるのと、俺の手に向け弓が飛んできたのはほぼ同時だった。俺は弓から避けるため魔法をやめ、横に飛び退いた。

『遅れてすまない。』

〈いや、いい援護だ。あの弓が無かったら、そのまま凍らせられていたところだった。〉

『矢の数は残り5本しかない。緑の怪物ゴブリンどもの相手は頼めるか?』

〈任せろ。ティムはあの魔法使いの相手をしてくれ。近接の俺には分が悪い。〉


(時間をかけ過ぎたな。まだ俺には相手をすぐに仕留める術がないのが悔やまれる。)

「ゴブリンよ、剣士にかかれ!」

数が増えたのは相手だけじゃない。ゴブリンも穴から復帰し、今の数は8匹だ。


「第2ラウンドの開始だな。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る