第8話 ゲスール

 姫は自分の部屋に帰ってくると、靴を脱ぎベッドにうつ伏せに倒れ込んだ。


「あー疲れた、今日は色んなことがあったからね」


 ペットの猫の鳴き声がするので、見ると召使のゲスールが餌をやっていた。


「いつも悪いねゲスール」


「いいんでゲス。魔王様に褒美はいただいてるでゲス。もうすぐ食事でゲスよ姫様」


「あなた何でいつもゲスとか言ってるの?」


「覚えてないんでゲスか?姫様がまだ小さかった頃に最後にゲスとつけろと言ったでゲスよ」


「そんなこと言ったっけ?」


「あの頃は姫様はかわいかったでゲス。引き裂いて食べたい程にかわいかったでゲス」


「よくそんな恐ろしいことがサラッと言えるね」


「正直に言ってるだけでゲス」


「やっぱり私にはあんたらがわからないわ」


 手を頭の後ろに組んで仰向けになる姫。疲れがたまってたのでそのまま寝てしまう。


 ZZZ。


「姫、姫、食事でゲスよ」


 姫を揺さぶり起こすゲスール。


「痛てて、爪が痛いのよあなた。もっとやさしく起こせないのゲスール?」


「ダイニングで魔王様が待ってるでゲス」


 腕を上げ、あくびをした姫はベットを降り魔王城のダイニングへ向かう。部屋に入るとクロスが掛かった長いテーブルに豪華な食事が並んでいる。テーブルの一番奥には魔王が座っていた。姫が部屋に入ってきたことに気が付くと魔王は手招きする。


 魔王の近くの席に座った姫は「なにこの料理凄いんだけど。一体どうしたのパパ?」


「誕生日の前祝いだ」


 そして久遠の炎が爛々と輝くランプを、床から持ち上げテーブルの上に置く。


「うわキレイ、今まで見た中で一番輝いてる」


「姫の為に特別に創ったからな」


 美味しい料理を食べ、魔王と楽しいおしゃべりをした姫は、上機嫌で部屋に戻った。


「見てゲスールこのランプ」


 ギョッとするゲスール。


「俺はその炎は嫌いでゲス」


「大丈夫、炎はランプに入ってるから 明るいでしょう」


「それより姫のパーティードレスが届いたでゲス」


 ゲスールが指さした先には、ひざ丈までのサテンの青いパーティドレスがクローゼットに掛かっている。


「素敵だわ」


「パーティは二日後だという事でゲス」

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