第7話 ロラン王との出会い

「私は、少しずつだが確実に強くなってきている西の魔物を調査する為に遺跡に来ていた。遺跡の真ん中にある地下トンネルから魔物が出現しているとわかり、一帯の魔物を潰していると、突然一人の人間が私の眼の前に現れた。冠を被っているので王だということは分かったが、護衛も付けずこんな遺跡で何をしているのかよく分からなかった。

人間の王は勝手に共闘を申し出てきて、私の返事も待たずに戦いに加わってきた。正直、何の戦力にもならず煩くて邪魔なだけだったので、遺跡の魔物を殲滅した後、私はこの人間の王に一言物申したいと思い近づいた。

貴様はゴブリンの糞程も役に立たなかったな。二度と絡んでくるな人間の王よ、と言うつもりだったが、人間の王は私の元に来ると握手をしてくれとせがんだ。『あなたに会えて光栄です魔王。私はロランと申します』と奴は言い、憧れの魔族を見るような眼で私を見てきた。意表を突かれた私は『そうか、こんな所に私のファンがいるとは思わなかった。魔王城に一度遊びに来るがよい』と言って私は去った。

もちろん冗談だったが、奴は後日、本当に魔王城にやって来た。王のくせに護衛もなく一人でだ。衛兵がどうするのか聞いてきたので私は『とりあえず城に入れてやれ』と衛兵に言った。別に殺すのは何時でもできる。奴の目的を聞かねば。

『遠路はるばるご苦労だったな。一体どうしたロラン?』

すると奴は城を見学したいと言いだした。呆気にとられたが、私は何故か嫌な気がせず、自らロランを案内し城を内部を詳しく説明した。城の中を見て、奴が特に気に入ったのは、魔王城の至る所に据え付けられる燭台の炎だった。それは私が創りだした消えない炎、久遠の炎と名付けた特別な炎だった」


 姫は魔王の顔をじっと見て、話しに聞き入っている。


「『この素晴らしい炎を私にくれないか魔王よ、後で必ず礼をする。私は王だが科学者でもあるのだ。お前の役に立つものを持ってこよう』

私は特別なランプに久遠の炎を入れてロランに持たせた。ロランの礼など期待していなかったが、奴が後日持ってきたものは私の予想を遥かに超える発明品だった。魔族の肉体の強化、秘めた能力を引き出す装置。今より遥かに有用な肉体の使い方を教えてくれた。奴は人間なのに魔族の体についてとても詳しかった。そしてロランの協力を得て、ユニークな能力を持つ、新たな眷属を創ることが出来るようになった」

 姫は少し考えて「あれ?もしかしてそれはスナミちゃんの事じゃないのパパ?」

「そうだ、ロランの協力無くしてスナミの眼は発現しなかった。お前の学校で同じ教室にいる魔族は、ほとんどが私の眷属だ」

 姫はそれを聞いて驚く。

「奴は天才的な科学者だったが、話すことは何かおかしかった。『久遠の炎こそ魔王ファザリスの愛、そして最高傑作』私は驚いて『魔族さえ恐れるこの炎が愛だというのかロラン?』」

 姫を見て、魔王は急に下卑た笑いをした。

「奴は本当にイカれていたんだ姫。奴は直ぐに愛とか最高傑作とか言い出すのだ」

 姫は魔王の意外な一面を見た気がした。

 ダンディ魔王と言われるパパがこんな笑い方をするなんて。


 茜色の空はもう暗い赤になっていた。上を向いて魔王はしばらく空を見ていた。

「だが姫よ、私は奴のそんな所を気に入っていたのかもしれない」

 姫を見て「姫よお前の初めての誕生日パーティを開こう。多くの魔族が参加する盛大なパーティを。きっと皆がお前を祝福するだろう」


 それを聞いて、姫の気持ちは高ぶった。

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