第4話 放課後
授業っぽいものも終わり放課後になると、姫とスナミは教室を出た。廊下でエンヤは姫が出てくるのを待っていた。
「やあ姫、少し僕に付き合ってくれないか?」
微笑むエンヤ。
「付き合うってどこに?」姫は怪訝な顔をしてエンヤを見る。
「体育館に一緒に来て欲しいんだ」
姫はスナミを見て
「私行ってきてもいいかな?」
「わかりました。私は噴水の前で待ってますね姫。後で落ち合いましょう。」
エンヤについていく途中、姫は渡り廊下を歩いていると、横のグラウンドにゴブリン達が集まっているのが見える。糞まみれで殴り合いをしてるようだ。
「まったくゴブリンていうのは美しくない。あんな下品なのと僕を同じ魔族に分類して欲しくないね」
姫はエンヤの方を見て
「人間のフリをしてたのにもういいの?」
「いいんだスナミが余計な事言ったから」
姫は頭の後ろで手を組み上を向いて歩く。
「うちの召使もゴブリンだけど、あのグラウンドに居るのよりはましかな」
「姫は人間なのにゴブリンの召使なんて危険じゃないのかい?いつ寝首を掻かれるかわからない」
「パパが選んだの。ゲスールは他のゴブリンと違って利害で動いてるって。褒美をやれば絶対私を殺すことはないって言ってた」
「ゲスール?姫はゴブリンに名前をつけてるんだね」
「私が小さいときに付けてたみたい、よく覚えてないんだけどね」
姫は立ち止まり、エンヤを見る。
「パパはいつも的確で魔族を見る目があるの。この学校に通う魔族もパパが全部選んだし、あなたもパパに言われて転校してきたわけだから、きっと何か理由があるんでしょ?」
体育館に入ると奥の用具入れからエンヤは剣を持ち出し姫に手渡した。
「姫は魔王様に小さいころから剣技を教わってるんだってね」
「うんそうなの、だけどパパは手加減が難しいからって、剣の稽古はほとんど他の魔族にしてもらってたけどね。女の子が剣なんて私は嫌だったんだけど、それだけは続けるようにパパに言われたんだよね」
「じゃあ僕と手合わせ願えないかな姫?」
エンヤは何も無いところから手品の様に刀を出した。
「わかったよエンヤ君。それが終われば私は帰っていいのね」
剣を中段に構える姫。姫の得意な攻撃は思い切り踏み込んだ強力な突きの一撃。残念ながらそれ以外は特に目ぼしいところはない。
エンヤは上段に構える。姫はエンヤに踏み込んでいくが、剣が簡単に捌かれる。剣に力を籠めようとする直前に受けられてしまうので、姫はすぐに疲れてしまった。
エンヤの構えが変わった。腕をまっすぐ前へ出して剣を垂直に構える。
「これを凌げるか姫」
上段だが少し斜めに振りかぶり、必殺技を大声で叫ぶエンヤ。
「炎夜新月斬」
必殺技を叫ぶ意味はあるのか?恥ずかしいと思ってはいけない。剣を持つときは無心になれと自分に言い聞かせる姫。
炎夜新月斬を喰らった獲物は、肌に円形の血の滲みが出た瞬間、剣圧で血と臓腑が炎のように噴き出して、絶命するとっても恐ろしい技なのだ。エンヤの攻撃が当たれば姫は即死だろう。
エンヤは殺気を込めた炎夜新月斬を姫の方に放つが、姫は疲れて立っているだけで、剣から発せられた衝撃波に全く気づかない。
衝撃波は姫の横を抜け拡散した。エンヤは当てるつもりは毛頭ないようだ。
「疲れたからもういいよねエンヤ君。スナミちゃんも待ってるし。それじゃあまた明日」
体育館からでていく姫を見送り、下を向くエンヤ。
少し経ってからどこからともなく魔王が体育館に現れた。エンヤの肩に手を置く。
「どうだ姫は?」
「魔王様、全然駄目です」
「そうか…」
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