第一章 魔王城
第2話 姫の学校1
「姫様、学校に行く時間ですよ起きてますか?」
「おっスナミちゃんが迎えに来た早くいかなくちゃ」
私はプリシラ姫、魔王の娘として魔王城に暮らしている人間の王女、なんでこんな事になったのか経緯についてパパは話してくれないけど物心ついたころから魔王城に暮らしているの。人間の書物を魔王城に取り寄せて貰って学校という所に興味があったのでパパに作ってもらって通い始めてもう半年くらいになるかな。
ブレザーに着替えて、赤茶色の長髪をセットし終わったプリシラは飼っている猫に挨拶して寝室を出て、塔の螺旋階段を降りる。
手足がスラリと長く同じ年の女子と比較すると少し背が高くてそこそこの美貌のプリシラ王女は人間界にいたなら、そこそこは注目される存在になったかもしれない。
「この城出るまでがしんどいのよねー」
魔族が暮らす為に作った魔王城は大型魔族が通れるように人間の城と比べて広く大きく作られている。長い石の廊下を小走りにはしり城の謁見室に出た。四方の壁の燭台には朱殷の炎が鈍い光を放っていた。部屋のやや奥にある玉座には筋肉質で大きな体、金属を張ったような固いつややかな質感の緑の肌、この城の主である魔王が足を組んで本を読んでいる。
「パパおはよう学校に行ってくるね」
「おおプリシラ姫、気を付けて行ってくるんだよ。もう直ぐお前の誕生日だが、プレゼントは何がいいか決めたかい?」
「うん帰ってきたら教えるねパパ」
魔王は手を振って姫を見送った
城を出て、跳ね橋の先に立っている鎧を着た魔族の衛兵を横目で見ながらスナミの元へ急ぐ
「スナミちゃんおはよう」
「おはようございます姫様」
この子はスナミちゃん。ハーピーの女の子。銀髪のショートで前髪は少し長め。毛髪量が多くて両目にかかってる、身長は私より少し低いくらい。時々髪をかき分けるとそこに美少女がいるのだ。胸から手にかけて鳥のふわふわで覆われていてショートパンツを履いている。羽はある程度小さく収納できるらしい。
「姫、姫」
「あっ なーに?」
「私をよく見てますね」
スナミちゃんは普段偵察の任務をしているらしい。人間に敵意が無くて、よく気が利く子なので私のお目付け役に抜擢したとパパが言ってた。でも私はスナミちゃんをただの監視役とは思ってない。私の親友だと思っている。なぜならスナミちゃんはいろいろ話を聞いてくれるし一緒にいると楽しい。スナミちゃんはやさしくて私と違って控えめで可愛くてそしてグラマラス、ぐへへ。
「どうしたんですか姫?」
スナミちゃんは私の事どう思ってるのかな?嫌われてないといいけど
横目でスナミを見る姫、それに気づいたスナミは
「私も姫様を大事な友人だと思ってますよ」
「えっ心を読んだの?」
「まさか」
二人は少し歩いて
「そういえば城の寝室が毎晩暑いって言ってましたね姫」
「なんか最近急に暑くなって、昨日はもう我慢できなくってドゲムさんにアイスゴーレム連れてきてもらって、断熱魔法を三枚重ねにしたらすっごい快適で久しぶりにぐっすり眠れたの」
するとスナミは真面目な顔になり「姫様ドゲム様は参謀なんですよ。そんな雑用みたいなことをさせるのは止めた方がいいですよ。あの方は根に持つタイプなんですからね」
「でもなんで急に暑くなったんだろうね異常気象、天変地異?」
「あーそれはあれですね、魔王様が海風が爽やか過ぎると言って東の崖下の海を溶岩地帯にしてしまったんですよ」
「なにそれ、そんなこともできるのパパ?」
「魔王様はよく泳ぎに行ってるみたいですよ姫」
魔王城から南に2キロほど歩くと魔王がプリシラのために作った学校がある。人間の小さな学校を模したものになっていて、校門を入るとまず目に留まる噴水からは赤い色の水が出ている。
「これっていつも思うんだけど本物の血ではないよね?」
「崖の上の水源の近くにドゲム様の拷問場があるらしいのですが、おそらくは関係ないと思います」
スナミちゃんは嘘を付くとき下を見る
「あっそうなの?」
聞かなければ良かった。
グラウンドからはゴブリンが興奮して何やら叫んでいる声が聞こえる。ゴブリンは野球をしているのではなく、自分の糞を投げ合って遊んでいるようだ。
学校に入った姫とスナミは廊下を歩き自分たちの教室に入った。
「おはようございます姫」
長身のゴブリンが席から立って姫の方を向き挨拶した
この深々頭を下げているゴブリンはナカジマ。ゴブリンに本来名前はないが真面目そうな響きが気に入ってナカジマと呼んでくれと言い出した。ゴブリンらしからぬ糞真面目な性格が魔王の目に留まり姫のクラスメートになった。ナカジマは授業で人間の事を知るにつけ何故か人間になりたいという思いが強くなり、学生服を身に着けて登校するようになった。下級魔族のゴブリンが中級魔族に昇進した初めての存在であり、ゴブリンの奇跡と言われている。
姫の前でナカジマはエアー素振りを始めた、これは剣についての話がしたいというアピールだ。
「ナカジマ君は毎日剣の稽古してるんだってね」
「姫の好敵手として姫を失望させないように僕は猛特訓しています。今度手合わせしてくださいよ。奥義も完成したんですよ」
魔王に育てられているプリシラ姫はナカジマにとって特別な存在であり、姫はナカジマより剣の腕が上だと勝手に思い込んでいた。そしてナカジマは人間の創作物にはまり込み、読むうちに頭がおかしくなってきて、姫は人間界を救う救世主というような妄想に取りつかれていた。ナカジマの思い込みの激しさは時として姫を恐怖させるのだが、他の下品で残酷なゴブリンとは違うので、割と姫はナカジマに好意をもっていたのだった。
「私も小さい頃から剣の訓練をさせられてるんだけどなかなか上達しなくてね」
「ご謙遜を姫様、姫様が本気を出せは剣など不要、漆黒の炎であの参謀ドゲムも従わせる事が出来ると聞き及んでおりますゆえ」
「一体ナカジマ君の中で私はどうなってるの知らないけど、私はドゲムさん嫌われてるんだから、これ以上あんまり変な事言わないでよね」
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