第43話 雷の神殿

 魔法歴二〇二五年 一二月八日 第一曜日


「でもなんであんなにゾンビやらゴーストやら出たんだ?」

 トウケンくんが不思議がる。

「なんとか神殿まで辿りついたけど、しばらくゴーストやゾンビ退治はいいわ」

 雷の神殿、そこは白樺しらかばの森にあって、石造りの質実剛健なたたずまいの神殿。

 カラテちゃんは神殿の固く閉じられた白樺の分厚いトビラの前で延々続いたエンカウント、遭遇戦に辟易へきえきって感じだ。

「でもカラテさん、トウケンさん、私はレベルが三つも上がったからラッキーですよ、何事も経験です」

 ユウちゃんは前向きな女の子だ。


 名前 ユウコ

 種族 人間族

 職業 初心者神官

 レベル 一三

 ダメージ 〇パーセント

 体力 四五ポイント

 精神力 八五ポイント

 筋力 一七

 魔力 二七

 速さ 一三

 状態異常 無し

 装備 初心者神官の服

    初心者神官のメイス


「わたしも一つ上がったよー」

 わたしはウキウキでみんなにレベルが上がった事を話す。


 名前 トキコ

 種族 人間族

 職業 精霊召喚師/魔獣使い

 レベル 二七

 ダメージ 〇パーセント

 体力 五〇ポイント

 精神力 二二〇ポイント

 筋力 二〇

 魔力 七〇

 速さ 二四

 状態異常 無し

 装備 星の魔女帽子

    甘ロリマント

    甘ロリワンピース

    ラメピンクの胴鎧どうよろい

    桃の木の杖

 従者 ハラヘリキンゾクネズミ シロ

    ハラヘリキンゾクネズミ マロ


「それゃテメーが弱ったちぃからだトキコ!」

 タテキシくんがいい気分に水をさす。

「弱っちくない!もうすぐカラテちゃんとトウケンくんに追いつくよ!」

 わたしはカラテちゃんとトウケンくんの方を見上げる。


 名前 カラテ

 種族 人間族

 職業 格闘神官/双剣使い

 レベル 二八

 ダメージ 〇パーセント

 体力 一七〇ポイント

 精神力 一一〇ポイント

 筋力 六〇

 魔力 三三

 速さ 三一

 状態異常 無し

 装備 スカートヒーロースーツ

    聖なるハーフローブ    

    白金はっきんのガントレット

    白金はっきんのアーマーブーツ

    炎の小太刀

    炎のショートソード


 名前 トウケン

 種族 鬼族

 職業 鬼剣士

 レベル 二八

 ダメージ 〇パーセント

 体力 二四〇ポイント

 精神力 四〇ポイント

 筋力 八〇

 魔力 二〇

 速さ 三一

 状態異常 無し

 装備 虎柄とらがら陣羽織じんばおり

    黒鉄くろがね胴鎧どうよろい

    鬼族の刀、ぶつ切り丸

    炎の魔剣、レッドマジックフランベルジュ


「そうね、トキコちゃんゲームがんばってるもんね」

(ありがとうカラテちゃん!)

「まあトキコは大したことしてないけどな」

(ヒドイよトウケンくん!)

 もっと評価されたい人生です。

「テメーらくじけんなよ、レベル三〇こえたあたりからあんまレベル上がんなくなるから!」


 名前 タテキシ

 種族 人間族

 職業 重装甲騎士

 レベル 三一

 ダメージ 〇パーセント

 体力 二九〇ポイント

 精神力 二〇ポイント

 筋力 一〇〇

 魔力 一〇

 速さ 二一

 状態異常 無し

 装備 甲羅割の戦斧

    フランキスカ

    フランキスカ

    鋼の大盾

    鋼の全身鎧

    厨二病マント


「確かに!」

 タテキシくんのレベル上がるところ、あんまり見たことない。

「私たちはもう少しで上がりそうだけど……」

 カラテちゃんがマジックウインドウでステータスを確認する。

「オレもボス戦一回あれば上がるかな」

 タテキシくんもステータス画面とにらめっこ。

「ボスだー? 神殿じゃモンスターなんてでないぜ、神殿神官様が結界はってやがるからな」

「神殿騎士様もいるしね、タテキシくん」

 わたしもタテキシくんもボス戦したそうなカラテちゃんとトウケンくんをたしなめる。

「神殿騎士様って記録の大鏡の横にいらっしゃる騎士様ですよね、すごく綺麗な鎧を着ていらっしゃった」

 ユウちゃんが神殿騎士のソウゴンさを思い返している。

「ああ、アイツラその地域の騎士と中央から派遣された騎士が任命されてて神殿での揉め事を起こさないように見張ってるからな、見た目も腕もご立派なもんさ」

「そうなんだー」

 タテキシくんはその騎士と戦いたいって顔をしている……わたしはとってもぶっそうだ顔だと思った。

(怖い怖い……)

「でも、その地域の騎士様だけじゃなく、中央からも騎士様が派遣されてるんですね」

「神殿にはセーブ/ロードの大鏡や死者復活の魔法陣、神聖魔法の契約をする神様のぞうなんかあるからみんなで守ってるのよ」

「地方の連中の監視も兼ねてなんだろう」

 タテキシくんが嫌な言い方をする。

「タテキシはひねくれてるな、そうすることでお互いの信頼が築けてるならいいじゃないか?」

 トウケンくんがタテキシくんをたしなめる。

「信頼ねーー」

 タテキシくんがそう言ってそのシステムを馬鹿にしたように笑う。

 確かに何もなく人を信頼するのはむずかしいんだろうな……わたしはすぐ信じちゃうからいつもおじいちゃんとおばあちゃんに「気をつけろ」って言われる……。

「じゃ、さっさと雷の神様と契約して、帰りましょ!」

 カラテちゃんが息が整ったとばかりに、雷の神殿の白樺の扉をあける。

「帰りもゴーストとゾンビだらけだろうけどな」

 トウケンくんもひねくれてる。


 *


「ちょっと待てやゴラー‼」

 タテキシくんが怒るのもムリもない、私たちは神殿の中でエンカウントした。

 記録の大鏡の前にゴースト、オオカミ人間のワーウルフゾンビ、そして群れをなすオオカミゾンビを引き連れて、神殿神官ゾンビがあらわれたのだ。

「フハハハハッ、我はこの神殿の神殿神官なり、この雷の神殿は我が支配する、われに逆らうものはゾンビとなってひれ伏すがいいじ!」

(……なんてはずかしい人だ、神殿占拠なんてしたら討伐のリクエストがマジカリタの人からアナザリアンギルドに入って討伐隊が来るのに……)

「あっ、もしかしてこのリクエストって……」

「エルフに騙されたんだ! これゴースト討伐のリクエストじゃねー、神殿神官クラスの討伐リクエストだ‼」

 タテキシくんが頭を抱える。

「やっぱりエルフって正確悪い!」

 カラテちゃんが頭を抱える。

「見てトキちゃん! 神殿騎士様が倒れてる!」

 ユウちゃんが指を指す。

「死者復活の魔法陣に転移してないって事はまだ生きてるぞ!」

 トウケンくんが炎の魔剣、レッドマジックフランベルジュをその背中から抜いて構える。

「うう、逃げろ、貴君きくんら、コヤツは強い……」

 神殿騎士様の一人が立ち上がろうとしてる。

「カラテちゃんまだゾンビ化してないっ‼」

 わたしは助けようと前に出ようとするが一瞬でゾンビとゴーストが神殿騎士を取り囲んでしまう。

「そいつは後回しだ、まずコイツをなんとかしねーと近づけもんしない!」

 タテキシくん前に出たうえで盾の裏でサインを送る。

 カラテちゃんとトウケンくんは何かに気づいたみたい。

 わたしは……。


「光の精霊よ、浮き水晶よ、契約に従い我の元へ来たれ! 我が名はトキコ、そなたはシラタマ!


 光の精霊さん、白い光の玉みたいな浮き水晶のシラタマちゃんあらわれる。

「シラタマちゃん! ビカッて光って‼」

 シラタマちゃんが神殿高くて登って当たり全てが真っ白になるような光を放った。

「なんだ⁉ 精霊魔法か⁉」

 神殿神官ゾンビがその視力を奪われる。

 周りのゴースト、ワーウルフゾンビ、オオカミゾンビの群れは神殿神官ゾンビに支配され、神官神官ゾンビの指示をまってしまって動けないでいる。


「レッドポーション、ブルーポーション、イエローポーション、グリーンポーション‼」


「レッドポーション、ブルーポーション、イエローポーション、グリーンポーション‼」


 カラテちゃんとトウケンくんが手持ちのポーションを全種類神殿騎士様に向けて放った。

 体力回復のレッドポーション、精神力回復のブルーポーション、傷回復のイエローポーション、状態異常回復のグリーンポーショはそれぞれの色の光るチョウチョになって倒れてる神殿騎士の元に飛んで行き、その体の中に入って行く。

「おお助かる」

「回復しもうした」

 二人の神殿騎士様がポーションの回復力で立ち上がる。

「騎士様! 神殿神官ゾンビをおさえてて! ユウコちゃん! まず周りからげずるわ、わたしに続いて演唱して‼」

 カラテちゃんがユウちゃん指示をだす。

 ――ユウちゃん?

 ……大丈夫!

 ユウちゃんしっかり前をみてる!


「私は祈りを捧げます、癒やしの女神の名において、清めの力をお与え下さい、操られし哀れな魂に浄化と救いの光を、ピュリフィケーション!」


「わっ、私は祈りを捧げます、癒やしの女神の名において、清めの力をお与え下さい、操られし哀れな魂に浄化と救いの光を、ピュリフィケーション!」


 雷の神殿全体に聖なる光が降り注ぐ。

 ゴースト、ワーウルフゾンビ、オオカミゾンビの群れたちは二人の神官の浄化の魔法で光の中に消えて行く。

「おお、なんと美しき光か……」

「おおなんと美しき神官か……」

 二人の神殿騎士がカラテちゃんとユウコちゃんに見とれる。

「ふざけるな! 我の計画が、世界制覇の野望が‼」

(恥ずかしいからやめてゾンビさん!)

 神殿神官ゾンビはたぶんゾンビ化して思考能力を失ってる……。

 そうあってほしい。

 わたしはそう思った。


「焼き切れろゾンビ! 炎の魔剣、レッドマジックフランベルジュ‼」


 トウケンくんの炎魔剣が神殿神官ゾンビを斬りつける。


「「私たちは祈りを捧げます、癒やしの女神の名において、清めの力をお与え下さい、闇に落ちた神官に救いの光を差し伸べて下さい、ダブルピュリフィケーション!」」


 神殿神官ゾンビにまばゆいばかりの聖なる光が天から降り注がれた。

「そんな、我の夢が……我の理想が…………」

 神殿神官ゾンビは天をあおぎ、天へとその両腕を伸ばし光になって消えていった。

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