第42話 ゴーストとゾンビの森

 魔法歴二〇二五年 一二月八日 第一曜日


「ユウちゃんゴースト行ったよ!」

 わたしは名前ちぢめてユウちゃんを呼ぶ。

 なんかいいーー。

「ユウコちゃん、ピュリフィケーションよ!」

 先輩神官カラテちゃんが指示を出す。


「私は祈りを捧げます、癒やしの女神の名において、清めの力をお与え下さい、神の浄化、ピュリフィケーション!」


 ユウちゃんが実体のない死者の霊体、ゴーストにピュリフィケーション、浄化魔法をかけ、その魂を天へと導く。

 始まりの木の町から離れ白樺の森入って移行、ものすごい数のゴーストに襲われる、この前までこんな事なかった。

 遠くに天を目指し大空を覆うようなトネリコの巨大樹、始まりの木が見える。


「ユウちゃん! オオカミゾンビ来た! 数は一匹」

 わたしはユウちゃんにオオカミゾンビの方向を指差す。

 天にはすでにわたしの召喚精霊、パラボラフクロウのオサラちゃんが飛んでいて周囲を監視している。

「ユウコ、テメー一人でやるんだ、メイスを使え!」

「はい、タテキシくん!」

 タテキシくんがユウちゃんに指示を出す。

 わたしたちはあえてユウちゃんを前線に出していた。

 それはまだレベルの低いユウちゃんに経験値を与えるためだった。

「カラテ、オレはポーションでユウコさんの体力と精神力を回復させる、カラテはダメージを頼む!」

 トウケンくんが精神力回復薬、試験管に入ったブルーポーションをの封をやぶり、さっき使った神聖魔法の消耗を回復させる。

 青いチョウチョがユウちゃんの精神力を回復させる。

「わかってるトウケン、絶対死なさない、安全マージンはフルに取るわ」

 カラテちゃんが言った「安全マージンはフルに」とは常にダメージポイントを全回復状態にすると言う事だ。

「ユウちゃんがんばれーーーー‼」

 わたしは一生懸命応援した。

「はい、トキちゃん、私がんばる!」

 ユウちゃんが初心者神官の物理攻撃武器、メイスでオオカミゾンビに打撃攻撃をする。

 ゾンビにも魔力を込めた攻撃なら物理攻撃でも有効で、ユウちゃんはまだ初心者神官神官だったけどゾンビ相手なら結構ダメージを与えられていた。

「えいっ!」

 ユウちゃんの攻撃がオオカミゾンビの頭に当たった。

「すごく! ユウちゃん!」

 わたしはパチパチと拍手をした。


 *


「ユウちゃんやったねー」

 わたしはユウちゃんに抱きつく。

「本当いい感じよユウコちゃん」

 カラテちゃんがユウコちゃんと両手を合わせタッチ、ユウコちゃんは嬉しそうな笑顔を見せる。

「ユウコさん筋力と魔力のパラメータの振り分けはカラテとは逆だから結構ゾンビには物理攻撃が効くな……」

「ああ、大体カラテの奴が筋力が二に対して魔力が一、ユウコの奴が筋力一に対して魔力二ってところか?」

 トウケンくんとタテキシくんが話してる。

 カラテちゃんは格闘神官なので物理攻撃に強く、ユウちゃんは初心者だけど神官なので魔法攻撃に強い。

「ユウコちゃん、少しダメージ追ってるじゃない、今、回復魔法かけるね」

 ユウコちゃん少しオオカミゾンビにダメージもらったみたい。

「えっ? いえ、まだ二パーセントもダメージないしいいですよ」

 ユウちゃんが二つの手のひらをパタパタと振り、大丈夫だとアピールする。

(なんかかわいい)

「ううん、今は全力でユウコちゃんを守る、ユウコちゃんには早く強くなってほしいからね」

 そう言うとカラテちゃんは回復魔法の詠唱をはじめた。


「私は祈りを捧げます、癒しの女神の名において、清き霊もつその者の傷を癒やして下さい、ヒーリング!」


 カラテちゃんがユウちゃんノ手を取り、その体全体にヒーリング、ダメージ回復の神聖魔法をかける。

 ユウちゃんの体がフワリと黄色い暖かな光に包まれその傷を癒やして行く。

(なんか温泉入ってるみたいでポカポカするんだよなー、ヒーリング)

「なんか抱きしめられてるみたいにポカポカしますねカラテさん」

(はっ! 感想間違えた‼)

 抱きしめられてる感じでポカポカの方がいい感じだ‼

「そうだねそうだね、ユウちゃん、温泉、いや、抱きしめられてるみたいにポカポカだね! ポカポカ‼」

 わたしは慌ててそう言った。

「どうしたのトキコちゃん?」

 カラテちゃんがへんな目でわたしを見る。

「コイツどーせおかしな妄想してたんだろ?」

(心よまれた‼)

 タテキシくんわたしの心よむのやめて‼

「カラテ、タテキシ周り見ろ!」

(えっ?)

「テメートキコ、オオカミゾンビに囲まれてんじゃねーか!」

(アレ、オサラちゃん?)

 わたしの左横に移したマジックウインドウにオサラちゃんから警告のメッセージと赤く光る敵のマーカーがいっぱい表示されていた。

「トキコちゃん‼」

 カラテちゃん怒ってる。

「トウケンとカラテ、テメーらは魔剣を使ってオオカミゾンビをなぎはらえ! オレはユウコを盾で守る! トキコテメーは自分の身くらい自分で守れオラーー‼」

「わかったタテキシうしろは任せたぞ!」

「トキコちゃん、まだ出て来ないかちゃんと索敵するのよ!」

「わかったーーーーーーーーーーーーーーーー! ごめんなさーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーい‼」


「燃えろ、レッドマジックフランベルジュ!」


「炎のショートソード、炎の小太刀、ダブルファイヤーボール‼」


 トウケンくんが魔剣をオオカミゾンビにふりこみ、カラテちゃんが魔剣に埋め込まれた魔法石の力で炎の魔法を使う。

「わっ、わたしも戦います!」

「おいユウコ、テメー勝手に出んな!」

 ユウちゃんがタテキシくんの大きな長方形の鋼の大盾をすり抜ける。

「タテキシさんはトキちゃん守ってて下さいーーーー!」

 ユウちゃんメイス片手に手を振ってる。

 ユウちゃんすごい生き生きしてる。

 ユウちゃんかっこいい‼

「トキコテメーは俺のうしろを動くなよ、戦闘迷子なんてごめんだぜ!」

 タテキシくんがその大きな盾と大きな鎧の体でわたしの前に立つ。

(タテキシくん、かっこいい……)

 わたしはふとこんな事を考えた。

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