第35話 ウサギとカメの無限地獄(二)

 西暦二〇二五年 一二月六日 土曜日


 冥土ダンジョンの戦闘終了後、空手ちゃんからメールが来た。


 空手:時子ちゃん説明して

 時子:わたしあのダンジョンで目が時計のトカゲ捕まえた、そしたら過去に戻ってココにいるの、わたし元々川乃北高校の生徒じゃなくて川南高校に通ってたの。刀剣くんも事故にあわなかったの。

 空手:盾騎士くん、あなたがついててどう言うわけ? どんな妄想?

 盾騎士:俺は時子を信じると決めた、たとえ時子がイカれて妄想に取り憑かれてたとしても、時子に今それが必要なら俺はそれに付き合う。

 空手:時子ちゃんのために?

 盾騎士:そうだ。

 時子:空手ちゃん、わたしおかしくなっちゃっのかもしれない、でもやらないで何もしないでいたくない、空手ちゃん手伝って。お願いします。

 盾騎士:こんな時にすまない、俺からも頼む。

 空手:いいわ、私が病院にいても何もできないから。


 *


 魔法歴二〇二五年 一二月六日 第六曜日


「チクタクダンジョンわたしこれで五回目だよ……」


 名前 トキコ

 種族 人間族

 職業 精霊召喚師/魔獣使い

 レベル 二四

 ダメージ 〇パーセント

 体力 五〇ポイント

 精神力 一九〇ポイント

 筋力 二〇

 魔力 六〇

 速さ 二一

 状態異常 無し

 装備 星の魔女帽子

    甘ロリマント

    甘ロリワンピース

    ラメピンクの胴鎧どうよろい

    桃の木の杖

 従者 ハラヘリキンゾクネズミ シロ

    ハラヘリキンゾクネズミ マロ


「俺はタイムリープ前を入れると四回目になるのか? 覚えてねーけど……」


 名前 タテキシ

 種族 人間族

 職業 破壊騎士

 レベル 三一

 ダメージ 〇パーセント

 体力 二九〇ポイント

 精神力 二〇ポイント

 筋力 一〇〇

 魔力 一〇

 速さ 二四

 状態異常 無し

 装備 ミノタウロスの戦斧

    鋼の全身鎧

    厨二病マント


 盾騎士くんの職業が破壊騎士になって、速さが上がってる。


「奇遇ねタテキシくん、それなら私も四回目よ」


 名前 カラテ

 種族 人間族

 職業 格闘神官

 レベル 二五

 ダメージ 〇パーセント

 体力 一五〇ポイント

 精神力 一〇〇ポイント

 筋力 五三

 魔力 三〇

 速さ 二八

 状態異常 無し

 装備 スカートヒーロースーツ

    聖なるハーフローブ    

    白金はっきんのガントレット

    白金はっきんのアーマーブーツ


 カラテちゃんは前にクリアした時よりレベルが一つ低いし、魔剣も無い……。


 時の迷宮、チクタクダンジョン、几帳面に正確に規則正しくカミソリの刃入らないほどに積み重られた石壁のダンジョンには永遠と火を灯す無限ロウソク規則的に並べられ、その奥には意地悪な攻撃をする加速の精霊ライトラビットのワゴムちゃんと鈍足の精霊ヘビータートルのブンチンちゃんが二体一対にたいいっついで暮らしている、そしてその広間の奥に時計トカゲのトケイちゃんのいる真っ白な変空間へんくうかんが存在する。

 もうすぐ日が暮れる、わたしたちはテッペン越える覚悟で、ワゴムちゃんとブンチンちゃんに挑む。

 タテキシくんがミノタウロスの戦斧を右手に持ち盾を手放した左手で石の扉を開ける。

 カラテちゃんはドワーフの隠れ工房で買った、銀より魔力伝導率が高い白金のガントレットを身構え、わたしは桃の木の杖をギュッと握った。

 タテキシくんもカラテちゃんも居る。

 わたしは諦めない、わたしはやり遂げる。

 わたしは今日過去に戻ると決めたんだ。

 絶対にみんなが幸せになれる未来をつかみ取る!


 *


「喰らえうさミミ野郎ー!」

 タテキシくんが両手持ちのミノタウロスの戦斧を加速の魔法を使うライトラビットのワゴムちゃんに振り下ろす。

「そこ逃さない!」

 カラテちゃんがタテキシくんの攻撃を避けたワゴムちゃんに鋼のガントレットで殴りかかる。

 わたしは呪文攻撃で鈍足の魔法を使うヘビータートルのブンチンちゃんに魔法攻撃をしかける、ブンチンちゃんにスロースピードの、魔法をかけさせないためだ。


 アクセラレーション


 ワゴムちゃんがまたブンチンちゃんに加速の魔法をかけた。

「まずい早く止めろ、また始まるぞ!」

 タテキシくんが叫ぶ

「ダメ間に合わない!」

 カラテちゃんが、かわすか攻撃するかの一瞬の迷いをつかれた。


 スロースピード


 今度はカラテちゃんに鈍速魔法をかけられた、速さが一番あるカラテちゃんが狙われた。


「まずい早く攻撃を!」

「ダメ、体が重い!」

「体重ふえたカラテちゃん?」

「増えてない、万全ばんぜんの体調管理!」

「テメーら攻撃に集中しろ‼」


 アクセラレーション


 スロースピード


 アクセラレーション


 スロースピード


 アクセラレーション


 スロースピード


 アクセラレーション


 スロースピード


 アクセラレーション


 スロースピード


 アクセラレーション


 スロースピード


 アクセラレーション


 スロースピード


 アクセラレーション


 スロースピード


「うう、動けないわ……トキコちゃん……」

「チクショー、またやり直しだ」

「六回目突入だーーーーーーーー!」


 *


 わたしたちはアクセラレーションとスロースピードをかけられるたびにドワーフの町にある時計台神殿の復活の魔法陣で復活を繰り返し、チクタクダンジョンに潜っていった、タテキシくんいわく完全な運ゲーだった。


 *


「クリティカル入った‼」

 それはわたしのお部屋のペリカン掛時計が「クエークエー」と大きな声を出した午前〇時の事だった。

 それは突然訪れた。

「ワゴムちゃんが光になった!」

 ライトラビットのワゴムちゃんがタテキシくんの最初の攻撃にを交わしきれずそしてそこ攻撃がクリティカルヒットと判定された。

「スゴイ! 一撃なの⁉」

 ワゴムちゃんは今までの苦労が何でもなかったかのように光の粒となって消えた。

「トキコ! 魔法を打ち続けろ! カラテ、トキコのサポート! 俺は体がはってトキコを護る‼」

 そう言ったタテキシはわたしの前に盾も持たずミノタウロスの戦斧を構え、ブンチンちゃんに立ちはだかった。

 カラテちゃんがサポートなのは今わたしとカラテちゃんの魔力の差が二倍もあってわたしが魔法を使った方が効率が良いためだ。


「光の精霊よ、浮き水晶よ、契約に従い我の元へ来たれ! 我が名はトキコ、そなたはシラタマ!」


「シラタマちゃん! レーザー光線!」

 光の精霊、シラタマちゃんのレーザー光線がブンチンにブンチンちゃんは物理攻撃に強かったが魔法攻撃には弱かった。


「トキコちゃん、ブルーポーションよ!」

 カラテちゃんがブルーポーションの入った試験管を封をやぶりコルクをぬく。

 ブルーポーションは光の青いチョウチョになってわたしの中に入って行く、魔法を使うための精神力が回復するのがわかる。


「シラタマちゃん、レーザー止めないで、打ち続けて!」

 きっと攻撃をやめたらブンチンちゃんのスロースピードの魔法が飛んでくる。

 そんな事になったら、また全滅するかもしれない。

(このチャンスをいかすんだ!)

「ヘビータートルが赤くなってくわトキコちゃん!」

「ダメージが限界を超えたんだ! ときもう一息だ、やりきれトキコ‼」

(うん!)

「シラタマちゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん‼」


 *


 ライトラビットのワゴムちゃんがヘビータートルのブンチンちゃんにお前先に行けよとせかし、ブンチンちゃんがイヤイヤコッチにやって来る。

 あの時と同じ光景だ……。


「鈍速の精霊、ヘビータートル、我と解約せよ、我とともに生きよ、我とともに世界のことわりを護れ、我が名はトキコ、そなたの名はブンチン」


「加速の精霊、ライトラビット、我と解約せよ、我とともに生きよ、我とともに世界のことわりを護れ、我が名はトキコ、そなたの名はワゴム」


 わたしはようやくワゴムちゃんとブンチンちゃんを仲間に取り戻した。

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