第34話 ミノタウロスゾンビと……

 魔法歴二〇二五年 一二月六日 第六曜日


「どうしよう、タテキシくん」


 名前 トキコ

 種族 人間族

 職業 精霊召喚師/魔獣使い

 レベル 二三

 ダメージ 〇パーセント

 体力 五〇ポイント

 精神力 一八〇ポイント

 筋力 二〇

 魔力 五七

 速さ 二〇

 状態異常 無し

 装備 星の魔女帽子

    甘ロリマント

    甘ロリワンピース

    ラメピンクの胴鎧どうよろい

    桃の木の杖

 従者 ハラヘリキンゾクネズミ シロ

    ハラヘリキンゾクネズミ マロ


「ああ」


 名前 タテキシ

 種族 人間族

 職業 重装甲騎士

 レベル 三〇

 ダメージ 〇パーセント

 体力 二八〇ポイント

 精神力 二〇ポイント

 筋力 九〇

 魔力 一〇

 速さ 二〇

 状態異常 無し

 装備 甲羅割の戦斧

    フランキスカ

    フランキスカ

    鋼の大盾

    鋼の全身鎧

    厨二病マント


「タテキシくんどう……」

 私は泣き出しそうになる。

「……ウサギの方を狙おう」

「ワゴムちゃん?」

「ああ、そのウサギ、ワゴムとの勝負は運ゲーだ、あいつは早いだけで物理防御、魔法防御共にカスだ、二、三発当てたら光になって飛散する、運ゲーは好きじゃねーがしかたねー」

「うん……」

「それと先にミノタウロスゾンビを倒すぞ」

「どうして?」

「まあ今日は時間もあるし、ミノタウロスの戦斧せんぷはクリティカル率が高い、うまくすりゃー、一撃当てただけでワゴムをしとめられる」

「うん」

「ただな……」

「なに?」

「ミノタウロスの戦斧は両手持ちの武器で鋼の大盾が使えなくなる、だからテメーはテメー自身で身をまもんなきゃいけねー」

「……大丈夫、わたし出来るよ、ガンバル!」

「よし、やるぞ」

「ミノたん倒そう!」

「ミノたん?」

「ミノタウロスだからミノたん」 

「ミノたんは精霊じゃないから仲間にはならなねーぞ!」

「えー、せっかく名前考えたのにーーーー!」

「知るかバカ!」


 *


「無理、無理、無理、無理、無理、無理‼」

 タテキシくんが叫ぶ。

「怖い、怖い、怖い、メッチャデカい‼」

 わたしはミノたんの大きさを見あやまっていた、そして腐っててかわいくない!

 西の町獣人族が多く住むケモミミタウン、そこのうさミミメイドカフェ『ウサウサハッピー』のメイドさん、ウサマチ・ミミコさんの情報を頼りに、わたしとタテキシくんは冥土ダンジョンにもぐってミノタウロスゾンビと戦っていた。

 ミノタウロスダンジョンは巨大な円筒形の縦穴をその周囲に連なる階段で下に下におりる構造で、その最深部にミノタウロスゾンビがきょを構えていた。

 数年前まで生きてたらしいが転んだ拍子に後頭部をダンジョンの硬く冷たい石壁にぶつけて、死んでゾンビ化したらしい。

 ココが冥土ダンジョンだったのがこうをそうしたのかそうじゃないのかはミノたんしかわからない……。

「逃げる、逃げる、逃げる! こんなの倒せるか‼」

 ゾンビ系の魔物のまずいところはダメージポイントの特性が出ないところだ、通常ダメージポイントが上がるとそのパーセンテージによって物理魔法攻撃力防御力が低下するんだけど、アンデッド系の魔物はその数値がダメージによって低下しないのだ。

「誰か助けてーーーーーーーーーーーーーー!」

 攻撃しても攻撃しても戦えてる気がしない、とっても怖い魔物なのだ。


「しょうがないわね……バカトキコ」


 *


 数時間前

「やっぱり……カラテちゃん呼んでみない?」

 わたしはうさミミメイドカフェ『ウサウサハッピー』でうさミミパンケーキをを頬張ほおばりながらそんな話をしていた。

 やっぱり食事は美味しくなきゃ!

「ゲームして刀剣とうけん助けるからゾンビ倒すの手伝ってってか? オマエ癒水いやしみずに殺されるぞ!」

「信じてくれないかな……」

「わからんけど、目の前で幼馴染引かれた相手にする話じゃ無い気がする……」

(でも……空手ちゃんなら……)


 わたしは自分の部屋の学修机でお父さんにもらった古いパソコンの横に置いたスマートフォンの画面を見つめる。

「空手ちゃん、わたし過去にもどって刀剣くん助けたい、ゲーム手伝って、今ケモミミタウンでタテキシくんとミノタウロスゾンビ倒すさんだんしてる 送信」


 空手:ふざけないで、今そんな気分じゃ無い、しばらくブロックするからメールしないで!


 *


「しょうがないわね……バカトキコ」


「カラテちゃん⁉」


 名前 カラテ

 種族 人間族

 職業 格闘神官

 レベル 二四

 ダメージ 〇パーセント

 体力 一五〇ポイント

 精神力 九〇ポイント

 筋力 五〇

 魔力 三〇

 速さ 二七

 状態異常 無し

 装備 スカートヒーロースーツ

    聖なるハーフローブ

    銀のガントレット

    銀のアーマーブーツ


「あとで説明してよね!」


「私は祈りを捧げます、癒やしの女神の名において、清めの力をお与え下さい、神の浄化、ピュリフィケーション!」


 オダンゴちゃんの霊体にも使った神の浄化の魔法、ピュリフィケーション、聖なる光が天から降り注ぐ、そしてそれはアンデッド系の魔物には効果が絶大だった。

「メッチャ聞いてんぞトキコ! テメーも魔法使え! ミノたん倒すぞ!」

「ミノたん? タテキシ君も随分トキコちゃん色に染まったわね」

 タテキシくんはしまったって顔をした。


「光の精霊よ、浮き水晶よ、契約に従い我の元へ来たれ! 我が名はトキコ、そなたはシラタマ!」


「シラタマちゃん! レーザー光線!」

 光の精霊、シラタマちゃんのレーザー光線がミノたんに当たる。

(効いて、効いて、効いて、効いて、効いて‼)


「喰らえ! 斧スキル、天空斧流星てんくうおのりゅうせい!」


 タテキシくんがミノたんの頭上高く飛び上がりその重力加速の力でミノたんの肩から胸の辺りまでいっきに斬り込んだ!

 ミノタウロスゾンビのミノたんはその巨体をフラフラとゆらし冥土ダンジョンの床に倒れた。


 *


「ミノタウロスの戦斧だーー‼」

 タテキシくんは背中に盾を背負って巨大な戦斧を両手で持ちご満悦だ。

「タテキシくんお墓作るの手伝ってよー」


「死と循環の女神の名において、祈りと鎮魂を捧げます、この者が安らかな世界に逝けますように」

 カラテちゃんが魔法ではない祈りを捧げる。

 それは頑張って生きた者への癒やしの言葉。

 それはカラテちゃんの優しい言葉。

「ありがとう、カラテちゃん……」

 ズズッ!

 わたしはカラテちゃんを見て鼻水をすすった。

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