第32話 コンビニのトラックと二週目の鏡アルマジロ

 西暦二〇二五年 一二月五日 金曜日


「おじいちゃん新聞どこ?」

 わたしは朝早く起きて、新聞を探していた。

「そこにあるだろ?」

 おじいちゃんが今日届いた新聞を指差す。

「違うの前の新聞」

 わたしがそう言うと、おじいちゃんはいつもおく新聞箱ではなく、おじいちゃんとおばあちゃんの部屋からその新聞を持って来てくれた。

「もしかしてこれかい?」

「うん……その新聞」


 城下町新聞

 西暦二〇二五年 十二月三日 水曜日号

 昨日、一八時ごろ大型トラックと高校生が衝突。高校生は意識不明の重体、同じ場所にいたクラスメイトとトラックの運転手は軽症。トラックの運転手は長時間労働の睡眠不足で事故を起こしたとして警察が業務上過失致傷の疑いで現行犯逮捕。記者の取材によりトラックの運転手は一度コンビニエンスストアで休息を取るも配送に遅れがしょうじるとして運送を強行したと判明した。

(このコンビニが分かればトラック出るの止められるかも?)

 わたしは全てを救う方法を考えていた。

 刀剣くんも空手ちゃんも盾騎士くんもトラックの運転手さんも規律護先生も黒猫ちゃんも全部すくいたかった。


 *


「それ城下町マートだ、クラスメイトがバイク通学で事故を起こしたトラック見たって言ってたぜ、なんかやたらカエルが乗ってて笑ったって笑えねーー話してやがったぞ」

 わたしは今日も川南高校に盾騎士くんに会いに来ていた。

(盾騎士くんもトラックの事、調べてくれてたんだ)

「そのコンビニに先回り出来たら事故止められるかな?」

「駅向こうの二つ先の交差点だから刀剣達をまたければ行けなくはないけど……どうやって止める?」

「きっと話したらわかってくれるよ」

「長時間労働の睡眠不足で事故なんだから無理じゃね、きっと休みたくても休めないんだろ?」

「でも……」

「まあ、時子が無事ならもう一度戻るっててもあるしな……話してうまく行くんだったら話してみ」

「うん!」

 わたしは言葉の力を信じたい。


 *


 魔法歴二〇二五年 一二月五日 第五曜日


「鏡アルマジロはライトラビット、ヘビータートル戦では役に立たないから今日はレベル上げに専念しよう」

「嫌です!」

 わたしとタテキシくんは鬼族の村でタテキシくんの投げ斧、フランキスカを購入して今日の方針について話し合っていた。


 名前 トキコ

 種族 人間族

 職業 精霊召喚師/魔獣使い

 レベル 二二

 ダメージ 〇パーセント

 体力 五〇ポイント

 精神力 一七〇ポイント

 筋力 二〇

 魔力 五三

 速さ 一九

 状態異常 無し

 装備 星の魔女帽子

    甘ロリマント

    甘ロリワンピース

    ラメピンクの胴鎧どうよろい

    桃の木の杖

 従者 ハラヘリキンゾクネズミ シロ

    ハラヘリキンゾクネズミ マロ


 名前 タテキシ

 種族 人間族

 職業 重装甲騎士

 レベル 三〇

 ダメージ 〇パーセント

 体力 二八〇ポイント

 精神力 二〇ポイント

 筋力 九〇

 魔力 一〇

 速さ 二〇

 状態異常 無し

 装備 甲羅割の戦斧

    フランキスカ

    フランキスカ

    鋼の大盾

    鋼の全身鎧

    厨二病マント


「ナゼ鏡アルマジロが必要なんだ?」

「カガミちゃんはわたしの大切な友達です!」

「…………」「…………」

「状況わかってんのか? どんだけ寂しがりやだ、友達ゲームの中にしか居ない人か!」

「違うもん、刀剣くんも空手ちゃんも盾騎士くんもだし、おウチにはデメちゃんもいるし、近所の猫ちゃんもワンちゃんも友達だもん! それにA組の八花さんだってもうすぐ友達になる予定だもん! 寂しくないよわたし友達いっぱいいるよ‼」

 わたしは一度つくった友達は絶対に手放さないと決めてる派の人間なのだ。

「オマエの話聞いてると、またに悲しくなるわ……」

「悲しくない! わたし悲しくないよ‼」

 タテキシくんは涙がジワる目頭をおさえた。

(失礼すぎるよタテキシくん!)


 *


 古墳ダンジョン、鬼族の村の近くにある半円球の山のようなダンジョン、入り口は巨石の扉があり、その奥に鏡アルマジロノカガミちゃんが居る。

 古墳ダンジョンの通路は巨石で組まれた巨大な通路があり、その通路をヒカリキノコが青白い光で照らしていた。 

 通路には魔物は出ず、そのまま大きな半円球巨体広間に出るはずだ。

 ヒカリキノコが天井で星みたいに輝きまるでプラネタリウムノような光景が広がる。

「なんかあの鳥居、見たことないかなタテキシくん?」

「鳥居なんてどこでも同じだ、鳥居マニアか!」

(なんか気になるんだよ……)


 *


「そんなことより俺の後ろに隠れてろ鏡アルマジロがどこかにいるはずだ」

「鳥居の右側だよ!」

「場所知ってんなら先に言え、秘密主義ですか、サプライズですか!」

(誕生日⁉)

「魔法反射があるはずだから物理攻撃で押すぞトキコ!」

「わかってるタテキシくん!」


「物理防御の精霊よ、契約に従い我の元へ来たれ! 我が名はトキコ、そなたはオダンゴ!」


 物理防御の精霊、オダンゴちゃんがあらわれる。

 オダンゴちゃんはいつものようにたくさんの足をパキパキ動かす。

 やっぱりかわいい!

「トキコ、トウケンもカラテもいないんじゃどう見てもパワー不足だ、テメーはダンゴムシ使って自分のガードをしつつ傷回復のイエローポーションと体力回復のレッドポーションで俺の支援に専念しろ! 俺はテメーの回復あてにして大技ぶっ放し続ける!」

「わかったタテキシくんがオフェンス、わたしがサポートね!」

 タテキシくんがわたしの前で長方形の鋼の大盾を構えつつ体力を技の発動に注ぎ込む。


「斧スキル、飛び込み大地斬だいちざん‼」


 盾騎士くんが鳥居に向かって盾を前に弾丸のように飛んで行く。

「そこか! 鏡野郎!」

 タテキシくんがカガミちゃんを見つけ、大盾を後ろに引く反動で斧を振り落とした。

 カガミちゃんは丸まってガードするけどダメージをおう。

「トキコ、レッドポーション!」

「はい!」

 わたしはポケットから試験管に入ったような赤い液体レッドポーションをタテキシくんに向け封の付いたコルクのフタを開ける、レッドポーションは赤い光のチョウチョになってタテキシくんの体に吸収される。

 スキルを使っておおはばに減ったタテキシくんの体力が回復した。


「もう一度だ、斧スキル、回転胴体斬かいてんどうたいざん!」


 タテキシくんんがマントをひるがえしながらフィッとその場所で浮くそのまま回転して斧をカガミちゃんに斬りつける。

「レッドポーション!」

「はいっ!」

 わたしはオダンゴちゃんで自分を守りながらタテキシくんのサポートをし続けた。


「くらいやがれ、斧スキル、天空兜斬てんくうかぶとざん!」


 天高く伸ばした腕から重い斧が振り落とされる。

(なんか技名が厨二病っぽい? 特撮ヒーローやアニメに出てくる必殺技みたい……)

「痛った! トキコダメージ回復だ、イエローポーション!」

「はいっ! イエローポーション!」

 わたしは試験管の封をやぶりコルクを抜く、イエローは黄色いチョウチョになって傷口を癒やす。

「ドンドンワザ撃って削るぞオラーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー‼」

 わたしとタテキシくんは繰り返し繰り返し攻撃と回復をして、ついにカガミちゃんを倒した。

 カガミちゃんは光りの粒となって一度消える。

 時間はすでに〇時を回っていた。


 *


 カガミちゃんが再び光と共に顕現けんげんしてわたしの前に現れる。

(やっぱり爪あわせて、モジモジしてる)

 かわいい!


「魔法防御の精霊、鏡アルマジロ、我と解約せよ、我とともに生きよ、我とともに世界のことわりを護れ、我が名はトキコ、そなたの名はカガミ」


 わたしはカガミちゃんと契約した。

 魔法防御の精霊、カガミちゃんが仲間になった。

 また友達を取り戻した。

 わたし、やりました!

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