第20話 週末の約束と朝の約束

 西暦二〇二五年 一二月四日 木曜日


「マフラー、日曜日にしましょうか時子ときこちゃん」

「あっ、買い物?」

 わたしと空手からてちゃんと刀剣とうけんくんと盾騎士たてきしくんは一緒に学校から帰るようになっていた。

 川乃北高校かわのきたこうこうの黒いセーラー服と学ランに川南高校かわみなみこうこうの白いブレザー制服がまざっているととても目立つ。

 わたしは背がちっちゃいほうだから背の高い三人の間に挟まれるとさらにだ。

「盾騎士オマエも行くよな」

「あぁ⁉ 何の話だ!」

 刀剣くんが盾騎士くんにわたしと空手ちゃんの頭を越えて話す。

「みんなでマフラー買おうって話よ盾騎士君」

 空手ちゃんが頭を少し下げてわたしと盾騎士くんを対角線上にして見上げながら話す。

 わたしはかわいい空手ちゃんを見てる。

「勝手に買いに行けや、俺はかんけーねー!」

(コレはあれかな?)

「盾騎士くん一緒に行こうよ」

 わたしはかわいい空手ちゃんから面倒くさいって感じの盾騎士くんに視線を移し、買い物にお誘いする。

「行かねーよ」

(ツンデレかな?)

「でも行くんだろ?」

「行くわよね」

 刀剣くんと空手ちゃんが見つめ合いお互い納得の表情。

「行かねーよ‼」

 盾騎士くんの拒絶が少し笑いを含んでる……。

「ツンデレ?」

 わたしは尋ねる。

「誰がツンデレだ‼」

(やっぱりツンデレだ……)

 盾騎士くんは参加決定!


 *


「じゃ、詳細はメールでー」

「じゃあな、盾騎士」

 バスターミナルの花壇前で盾騎士くんとお別れ。

 空手ちゃんがスマートフォンを振る。

 後ろにはわたしと刀剣くん。

「…………チッ」

 盾騎士くんは最後は否定せずたくさん並ぶ中から帰り方面のバスの中に入って行った。

「また明日ねーー」

 わたしが手を振ると、バスの席についた、盾騎士くんが右手を少しだけ上げてくれた。


 *


「時子ちゃんもまたね」

「帰り気をつけろよ」

「大丈夫、おじいちゃんが迎えに来てくれる、軽トラックで!」

 城下町駅じょうかまちえきの駅舎に入るわたしを空手ちゃん刀剣くんが見送る。

(いいな二人は、ずっと一緒で……)

 わたしはそんな事を思いながら、上がピンクで下が灰色の電車に乗った。

 二両編成である。


 *


 電車はいつものように少し暗くなった線路を走る、時折夕日が目に入りマブしい。

 一人電車に乗ってるいると、わたしはつい人を探す。

 最初は何人かいた川乃北高校やわたしと同じ川南高校の生徒もいなくなりドンドンと寂しくなる。

 わたしはそうなると窓から外を見て人の姿を探した。

 そうしてるとたまに犬の散歩をしてるおじいさんがいる。

 かわいい柴犬しばいぬとおじいさん。

 よく川沿いをを散歩してる。

 たまにその柴犬を連れてるのがとおじいさんと小学くらいの子供の場合もあれば、小学生くらいの子だけが散歩してる場合もある。

 夏はよく見かけるけど冬は少し暗くなるからもっと早い時間に散歩してるのかな。

 最近はあんまり見かけない……。


 *


「おばあちゃんただいまーー!」

 わたしはおじいちゃんの軽トラックでご帰還いたした。

 いつものように玄関の土間から奥の引き戸を開けてお台所に入る。

「時子ちゃんおかえり、今日は時子ちゃんが朝言ってたほうれん草にしたよ、ほうれん草とベーコンの炒めものと、ほうれん草のクリームシチュー」

 おばあちゃんがお鍋でクリームチューを煮込んでいる。

「クリームシチューもあるの! ヤッタ」

(クリームシチュー大好き!)

「炒めものだけじゃ足らないだろ時子ちゃんは」

「うん、足らない、ありがとうおばあちゃん!」

「カバン置いて、鯉にエサあげておいで」

「はーーーーーーーーーーーーーーいっ!」


 *


 カバン、デメちゃんと鯉のご飯、手洗い。

 カバン、デメちゃんと鯉のご飯、手洗い。

 カバン、デメちゃんと鯉のご飯、手洗い。

 カバン、デメちゃんと鯉のご飯、手洗い。


 *


「おばあちゃん、日曜日、城下町市じょうかまちし行っていい?」

 わたしはおばあちゃんがご飯をよそう間に少しドキドキして日曜日の買い物の話を切り出した。

「日曜日?」

「何のようだい時子」

 おばあちゃんの疑問におじいちゃんがわたしに聞いて来た。

「空手ちゃんと刀剣くんと盾騎士くんとマフラー買いに行くの……」

「ダブルデートちゅーやつか?」

「そうなの時子ちゃん?」

「違うよ買い物だよ!」

(あっ、空手ちゃんと刀剣くんはデートかも!)

「空手ちゃんと刀剣くんは違うかも!!」

 わたしは少し言い直す。

「……盾騎士っちゅうのは男の子だよな」

「そうだよおじいちゃん」

「その子……フビンね……」

(なんでフビン?)

「行っていい?」

「おばあちゃんはいいけどお友達に迷惑かけちゃダメよ」

(おじいちゃんは?)

 わたしは向いのおじいちゃんに身を乗り出す。

「おじいちゃんは時子が怪我して帰りさえしなきゃ文句はない」

「やったー買い物だーーーー! おばあちゃんご飯ご飯!」

 わたしは一つのウレイが取れて食事に集中し始めた。

「おばあちゃん、ほうれん草の炒めもの美味しいね!」

「ありがとう時子ちゃん」

「クリームシチュー美味しいね」

「ありがとう時子ちゃん」

「ご飯美味しいね」

「ありがとう時子ちゃん」

 クリームシチューはあったかく、ほうれん草の炒めものはベーコンの油とバターでとっても旨みがいっぱい、ご飯はいつものふかふか。

 おばあちゃんもおじいちゃんもいる。

(わたしはいっぱい幸せだ)

「ばーさんや、ワシはご飯少なめでシチュー上からかけてくれ」

「おじいちゃんお行儀!」

「イヤ、これがうまいんだって」

 おじいちゃんはクリームシチューをカレーみたいにお茶碗の上にかけてお箸で食べる。

 おじいちゃんはカレーもお茶碗とお箸で食べる。

「わたしもご飯にかけてーー」

 わたしもおじいちゃんと同じのをおかわりする。

「ほら、おじいさん、時子ちゃんが真似するから!」

「いいから、ワシは混ぜたのが好きなんじゃ!」

「わたしもマゼマゼ好きー!」

「はぁ……」

 おばあちゃんがシブシブおじいちゃんとわたしのお茶碗にご飯を少なめに入れてクリームシチューをかけてくれた。

「おじいさん、私は知りませんよ、時子ちゃんが変な味覚えても……」

「大丈夫じゃろ、ばーさんの飯は何でもうまいから」

「まぁ」

 おじいちゃんとおばあちゃんはとっても仲良し!

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