第17話 鬼族の鍛冶屋

 魔法歴二〇二五年 一二月三日 第三曜日


「おせーよ何してやがった!」

 わたしたちが鬼族の村につくとすでにタテキシくんが待っていた。

 鬼族の村は山あいの小さな田んぼのならぶ一見普通の村に見えたが家の一軒一軒が敷地のまわりに土のうを詰み小さいけど空堀があり、高く頑丈な塀と頑丈な門構えで一人一人が一国一城のあるじのように暮らしていた。

「タテキシくんだーー!」

 わたしは嬉しくなってタテキシくんに飛びつく。

 ガシャン‼

 タテキシくんは盾がアブナイと思って人一人隠れるほどの長方形の大盾を素早く引いて避けてくれたんだけど、その先のタテキシくんは全身鎧だった。

 わたしはタテキシくんの全身鎧にぶつかって鼻をうった。


 名前 タテキシ

 種族 人間族

 職業 重装甲騎士

 レベル 三〇

 ダメージ 〇パーセント

 体力 二八〇ポイント

 精神力 二〇ポイント

 筋力 九〇

 魔力 一〇

 速さ 二〇

 状態異常 無し

 装備 ドワーフ職人の戦斧

    鋼の大盾

    鋼の全身鎧

    厨二病マント


「タテキシ、先に来るならくるってメールしろよ、オレ何回もメールしたんだぞ」

「そうよタテキシ君、報連相ほうれんそうよ報連相」

 カラテちゃんとトウケンくんがタテキシくんに注意する。

「知るか!」

 タテキシくんは平常運転。

「ほうれん草?」

(そだ、明日はほうれんそう食べたいな、朝おばあちゃんにお願いしようかな?)

「トキコちゃん、報告、連絡、相談の事よ」

(カラテちゃん優しい!)

「わたし知ってた!」

 普通に嘘をつくスタイル。

「絶対知ってないだろトキコ!」

「今の流れで知ってるわけねーだろが‼」

「トキコちゃん、嘘はよくないわ……」

(わたしの信用皆無‼)

「だいたい俺は偶然この村に用があっただけで、お前らを待ってたんじゃねーんだよ‼」

「…………」

「…………」

「…………」

「「「それは無理がある!!!」」」

 わたしもカラテちゃんもトウケンくんも全力でツッコミを入れた。

(わたしツッコミ得意かも)

「へへへ」

「何笑ってんだピンク女!」

「帽子は夜空色でピンクじゃないよ」


 装備 星の魔女帽子

    甘ロリマント

    甘ロリワンピース

    桃の木の杖


「ほぼほぼピンクじゃねーか!」


 *


「で、サンシタ共、これから刀鍛冶のところに速攻行くのか?」

「タテキシ、オマエのレベルが高いのは認めるけど言い方考えろよ、コミニケーション能力皆無か?」

「そうよタテキシ君、コミニケーション能力が皆無すぎて友だちいないからゲームばっかりしてレベルが上がるのよ」

「ウッセー! 少しオブラートに包めや!」

 わたしたちは会話を楽しみながら鍛冶屋さんのはところに歩いて行く。

 冬の刈り取られた田んぼには何羽かの魔法世界カラスがいた。

「トキコちゃん、勝手に田んぼ入っちゃダメよ」

「わっ、わかってるよカラテちゃん!」

 前に人んちの田んぼに入っておじいちゃんに怒られたことがある。

 でも田んぼのあぜ道と冬の風ってけっこう好き。

(寒くなければ……)


 *


「おぬし、この玉鋼の刀もロングソードはどうにもならんなぞ」

 トウケンくんの玉鋼の刀とロングソードを見た鍛冶屋の鬼族、テッカバ・ツチウチロウタさんはそう言って首を横に振った。

 ヒタイから鋭い眼光の目にかけて斬られキズの跡がある頑固そうなおじいさんだった。

 わたしたちは今、鬼族のおじいさんテッカバさんの鍛刀場たんとうじょうに来ていた。

 鍛刀場とは刀剣を打つ場所で鉄を真っ赤に熱くして打つため炉の中は炭火で高温となり真冬だとゆうのに汗が出るほどだった。

 真っ黒な鉄クズの破片が土の地面の上に落ちている。

「なんでだ、少し刃こぼれしただけだぞ……」

 トウケンくんはテッカバさんに詰め寄る。

「何を⁉」

 テッカバさんの眼光が鋭くトウケンくんを睨みつける。

「なんだよ……」

 トウケンくんはテッカバさんの眼光の鋭さにおののき、一歩下がる。

「この玉鋼の刀もロングソードも刀身が半分も無いではないか!」

 テッカバさんがトウケンくんに二分の一ほどとなった玉鋼の刀とロングソード? を見せる……。

「あっ……」

(逃げなきゃ!)

「トーーキーーコーーーー‼」

 トウケンくんが後ろからわたしのローブの襟元をつかむ。

 チチチ!

 チュチュチュ!

 真っ白なハラヘリキンゾクネズミのシロちゃんと灰に麻呂眉のハラヘリキンゾクネズミのマロちゃんがわたしのローブから飛び出し逃げ出す!

(あっズルい‼)

「シロちゃーーん! マロちゃーーん! 助けてーーーー‼」

 わたしの叫びか鍛刀場を越えて鬼族の村中にこだまする。

「ハラヘリネズミが食べちゃったのね……、どうするトウケン?」

「うう……、じーさんそれもう直せないんだな……」

(トウケンくん可哀想)

 わたしのイヤ、シロちゃんとマロちゃんのせいだけど……。

「まあ、短くに打ち直すくらいはやれん事も無いが……」

 冒険を始めたころにカラテちゃんに魔法世界消費税三〇パーセント分を借金して買った思い出のロングソードらしい。

 幼なじみから借金するなよトウケンくん!

「刀は新調するから元の刀は小太刀にロングソードはショートソードに打ち直してくれ」

「わかった、見た所、先程の刀は人間用に打ったものだろう、ワシらみたいな鬼族はもっと肉厚な刀を使うのを好む、良ければ後でみつくろってやろう」

「ありがとうじーさん、あとコイツを使って新しい両刃りょうばけんを打ってほしいんだ」

「炎の魔法石だなわかった」

「ごめんカラテ、思い出のロングソードだったのに……」

「気にしないでトウケン、どんな物もいつかは壊れるものよ」

 トウケンくんはすまないって顔でカラテちゃんを見つめ、カラテちゃんは気にすんなって顔で笑った。

「そうだよトウケンくん、過去にこしつせず未来を見て生きて行こう!」

 わたしはトウケンくんを励ました。

「お前が言うな‼」

「トキコちゃん! 少し反省して‼」

 トウケンくんもカラテちゃんも怒ってる‼

「タテキシくん助けて、盾役でしょ‼」

 わたしはわたしを護る気が微塵みじんも無いタテキシくんの後ろに隠れた。

(あっ盾の裏に斧入ってる……)

 大きな長方形の鋼の大盾の裏にはドワーフ職人の戦斧が固定され収納されていた。

 なんかカッコイイ!

「タテキシ、トキコを渡せ、そいつは少し反省が必要だ」

「トウケン、このあともあるしお説教は短くね」

(ヒドイ、カラテちゃん!)

 わたしは世界の残酷さに絶望する。

「それよりいいのかテメーら……そのネズミ、金属食うんだろ?」

「どゆこと、タテキシくん?」

(ん?)

「トキコ! 今すぐアイツら追いかけろ‼」

「トキコちゃん! シロちゃんとマロちゃんがココの武器かじっちゃう!」

「あっ‼」

 た、大変だ、こんな所の武器かじったら倍賞金で借金まみれになっちゃう!

「タテキシくん一緒に探して‼」

「なんで俺が! テメー一人で探せ‼」

「その鎧美味しそうだからシロちゃんとマロちゃん、きっと寄って来るからーーーー‼」

「ふっっざっけんな! 絶対に嫌だ、俺に近づくんじゃねーーーー‼」

「お願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー‼」

「嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー‼」

 わたしはイヤがるタテキシくんを引きずりシロちゃんとマロちゃんを追いかけた。

「シロちゃーーん、マロちゃーーん、美味しいご飯がありますよーーーー! おいでーーーーーーーー‼」

「俺はご飯じゃねーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー‼」

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