第7話 マジカルアースとドワーフの町
西暦二〇二五年 一二月二日 火曜日
ワールドシミュレーター・マジカルアース
ニューゲーム
ロードゲーム
「ロードゲームっと」
お父さんからもらった古いパソコンの画面に作品名と選択肢が示され、わたしはロードゲームをマウスで選択した。
*
パソコンの画面にはオンラインゲーム、アースシミュレーター・マジカルアースの魔法世界が一人称視点、現実と同じ自分自身の目で見た感じで広るゲームだ。
いわゆる
このゲーム、三人称視点
アイテムの鏡か、町の窓ガラスに
(かわいい服買ったら絶対、全身鏡でチェックだ!)
私はセーブ/ロードポイントである大きな
*
魔法歴二〇二五年 一二月二日 第二曜日
「お嬢さん申し訳ない、私も記憶の銅鏡を使いたいのだか」
わたしの後ろからに耳の長い長命種族、エルフ族の人が声をかける。
「あっ、すいません直ぐにどきます」
「お気になさらず」
エルフ族のヒトが優しい笑顔をみせる。
「はっ、はいすみませんエルフさん‼」
わたしは深々と頭を下げる。
エルフ族の人は穏和だが顔に出さず根に持つタイプなので恨みを買ってはイケない。
わたしは神殿の奥、ゲームデータをセーブ/ロードをする為の記録の銅鏡の両脇にいる神殿を守る全身ヨロイの神殿騎士に
(ここはドワーフの町だから、エルフの人はわたしたちと同じ冒険者さんかな?)
そしてわたしは死者復活の魔法陣の奥、鏡に向かって並ぶ長椅子の一つに座った。
エルフさん、ダンジョン攻略の前にセーブに来たとかかな?
*
「失礼、先程はすまなかったね」
セーブを済ませたエルフさんが長椅子の間の通路を通りわたしのところを通るさい声をかけてくれた。
(もしかしていい人?)
エルフさんの腰のベルトにチラリと金時計のチェーンが見えた。
(ああ、時計を買いに来たのかな? それとも修理?)
「いえ、こちらこそボーとしていて」
「ここの懐中時計はとても質がいいんだよ、エルフなんてやっていると時間の
わたしの視線に気づいてエルフさんが少し照れて笑った。
わたしは人を見かけで判断しちゃダメだと思った。
この時計台神殿、いや神殿の全てが沢山の人間種や亜人種の人々が利用する、魔法世界マジカルアースを支える重要な場所。
みんなの場所なんだ。
*
時計台神殿のあるチクタクタウンは小さな職人の町で神殿にはあまり人はいないがよく見るとチラホラと長椅子に座ってお祈りをするドワーフさんが居るのに気づく。
わたしはカラテちゃんとトウケンくんにゲーム内メール、ゲームメールを送る。
フレンドリストに入ってるキャラクターがゲーム内に居ればゲーム内でメールが出来る。
わたしの部屋の勉強机の上、お父さんのお下がりの箱型の機械、デスクトップパソコンの画面ではわたしのキャラクター、精霊召喚師が人差し指をスマートフォンの画面を上から下へとスワイプするように空中をスベらせて、マジックウインドウを開いてキーボードを選択、キャラクターもわたしもキーボードの前に居る状態になった。
「カラテちゃんトウケンくん、もう入ってる? 送信」
カラテ:もういるよ、今トウケンと体力回復のレッドポーション、精神力回復のブルーポーション、傷回復のイエローポーション、状態異常回復のグリーンポーションを満タンまで買った所よ。
トウケン:トキコ、お前も満タンにしとけ、神聖魔法や精霊召喚を回復に回すと精神力そっちに取られていざって時に困るぞ。
二人とももう来てるんだ。
当然だ、わたしより家につくのが早いんだから。
「大丈夫、わたしは満タン、直ぐにでも冒険出来るよ。わたしもそっち行く? 送信」
二人はこの時計台神殿がある、チクタクタウンに先についていた。
カラテ:神殿で待ってて、入れ違いになったら大変。
トウケン:そうだぞあっちこっち行って迷っら大変だ。
(ひどい、わたし迷ったり……するけど……)
わたしは二人のフレンドメールを読んでひどいと思ったが前科がありすぎて、仕方ないと思い直した。
信頼って言葉は、信頼にたる行動をとった人間にのみあたえられる称号だ。
「わかった神殿の
わたしはカラテちゃんとトウケンくんの既読がつくと長椅子から立上り時計台神殿正面の大扉から外へ出た。
*
「トキコちゃん待ったーー?」
カラテちゃんがわたしを抱きしめて笑う。
このゲームはキーボードで打った文字入力で大抵の行動がで出来るしマイクでひろった言葉や声に出る感情から自然な表情や仕草も自動生成してくれる。
「カラテちゃん、わたし頭モゲちゃうよ」
パソコンのモニターの中でカラテちゃんのキャラクター格闘神官がわたしキャラクター、精霊召喚師を前後にブルブルと揺らす。
エフェクトがスゴイダイナミックだ、自動生成
名前 カラテ
種族 人間族
職業 格闘神官
レベル 二四
ダメージ 〇パーセント
体力 一五〇ポイント
精神力 九〇ポイント
筋力 五〇
魔力 三〇
速さ 二七
状態異常 無し
装備 スカートヒーロースーツ
聖なるハーフローブ
銀のガントレット
銀のアーマーブーツ
「大丈夫か? モンスターたおす前にダメージおうぞ」
「あっ、トウケンくん!」
「神殿敷地内は非戦闘エリアだから私そんな事はしませーん!」
トウケンくんが笑いながらわたしたちに声をかける、トウケンくんはこの前の失敗を怒ってないみたい。
名前 トウケン
種族 鬼族
職業 鬼剣士
レベル 二四
ダメージ 〇パーセント
体力 二〇〇ポイント
精神力 四〇ポイント
筋力 六〇
魔力 二〇
速さ 二七
状態異常 無し
装備
「そうだトキコこれをつけてろ、あとカラテも」
トウケンくんが方位磁針、二つのコンパスが縦に並んだペンダントをくれた。
「トウケン何これ?」
カラテちゃんが突然のプレゼントに驚く。
「コンパスの針見てみろよ」
トウケンくんが得意げに笑う。
「何よ気味悪い」
カラテちゃんが少し嬉しそうにそのペンダントのコンパスを水平にした。
「あっ、トウケンこれ!」
「コンパスがわたしたちを指してる!」
カラテちゃんの二つあるコンパスの針がわたしとトウケンくんをさしていた。
「ああ、さっきドワーフの店で買ったんだ、パーティーコンパスっていって、設定をしたコンパス同士が引き合って位置を示すんだ」
トウケンくん、わたしがよく迷子になるから買ってくれたんだ。
(優しい!)
「それとトキコ、これでもはぐれるようならお前の腰にリードつけてカラテに持たせるからな‼」
「わたしワンちゃんにクラスチェンジ⁉」
(トウケンくん優しくない‼)
「あら、じゃトキコちゃんにはイヌミミとか買わないとね」
カラテちゃんは楽しそうだがトウケンくはこの前の事やっぱり怒ってた‼
わたしは慌ててパーティーコンパスのペンダントを首にかける。
「大丈夫! コレがあればはぐれたりしないよ‼ わたし、もう迷わない‼」
ちゃんとしないと今度はリードつけられちゃう⁉
「わかったわかった、リードはジョーダンだ」
トウケンくんはおなじパーティーコンパスのペンダントをすでに首から下げている。
「三人お揃いだねトウケン、トキコちゃん」
そしてカラテちゃんも嬉しそうにペンダントをかけた。
わたしも嬉しくなってカラテちゃんとハグする。
(カラテちゃんは今日もかわいいのです!)
そしてトウケンくんは少し照れくさそうに頭をかいた。
トウケンくんの頭には今日もカッコイイ
*
「トウケンくん、やっぱり鬼族って良いよね」
わたしは羨ましそうにそう言った。
わたしも角がほしかった。
「人間族以外のキャラクターってランダムで入るらしいけど、ルールがイマイチでわかんないわね、トキコちゃん」
カラテちゃんがトウケンくんの角を見上げる。
わたしたちはチクタクタウンの町を歩きながらそんな何気ない会話をする。
石を積んだ壁に質素な黄色の瓦屋根の素朴な二階建ての建物がならんでいる。
窓は十字にくぎられ、大きなガラスを作る技術はなさそうだか、それでも時計に使えるほどは質の良い透明なガラスがハマっていた。
わたしとわたしのかわいいカラテちゃんがテラテラとガラスに映っている。
時計台神殿のある大陸中央部の小さな町チクタクタウンは沢山のドワーフ職人さんたちか作った機械工芸の町でその主要産業は時計とからくり機械だった。
時計台神殿の
「オレも知らん、キャラクター生成の質問でランダムで決まるんじゃないか?」
このゲーム、ワールドシミュレーター・マジカルアースはニューゲームを選ぶとキャラクター生成が始まる、いくつかの質問に答えて行くと自分自身や自分の理想が反映したキャラクターをAIが生成してくれる、どうやってかは知らないけど自分とよく似たキャラクターが出来上がるのだからスゴイシステムだ。
でも人間族以外の種族になる人はかなり珍しいみたい。
「わたしの時はなんかAIさん、何回かフリーズしたよ」
わたしは笑顔で答える。
「キャラクター生成でもバグったのかトキコ……」
「へへへ」
わたしはなんか笑った。
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