第3話 メールの時間
西暦二〇二五年 一二月二日 火曜日
「空手ちゃん校門に居るよ、まだ帰れない? 送信」
――既読
ピン!
空手:ごめん時子ちゃん刀剣が先生に捕まった。あの先生融通がきかないから。
「刀剣くん大丈夫? 送信」
(刀剣くん逮捕される‼ ついに高校教師に逮捕権が‼)
わたしの頭に変な新聞記事が浮かぶ。
わたしは今、隣町の
それを見てるおばあちゃんはとても嬉しそうなのだ。
空手:先生、刀剣の髪の色のまだ疑ってるみたい、地毛なんだからいいかげんヤメてほしい。
(あー、刀剣くんの髪、ホント染めたみたいに真っ赤っかだから……)
「どのくらいかかりそう? 送信」
空手:先生しつこいから、しばらくかかる。時子ちゃん先に帰って良いよ。
(先に帰りたくない! 直接話したい!)
「帰らない、駅まで一緒がいい、寂しいからメールしてて。 送信」
今日のわたしは少し甘えん坊で、ワガママだった。
空手:いいけど暗くなるよ?
城下町駅から、鉱山町駅まで三十分くらいのかかる。
きっとこのまま空手ちゃんと刀剣くんを待ってたら帰ったころには真っになる。
(おばあちゃん心配するかな?)
「おばあちゃんにメールする。 送信」
空手:そうしな。
わたしは遅くなるとおばあちゃんを心配させて困らせるかなって思いながら、メールの文面を考える。
「おばあちゃん、友達待ってから帰るので少し遅くなります。心配しないでね。 送信」
(おばあちゃんメール見てくれるかな?)
――――既読
(あっ、既読、おばあちゃん見た)
(…………)
(…………)
(…………)
(…………)
(おばあちゃん心配させちゃった、……どうしょう、先に帰ろうかな……)
ピン!
空手:おばあちゃんなんて?
(空手ちゃんだ‼ 早くメール返さなきゃ‼)
(だめ、先におばあちゃん‼)
「大丈夫だよおばあちゃん、もう高校生だよ、一人で帰れるよ。 送信」
「おばあちゃん、おじいちゃんが迎えに来てくれるって言ってたけど、一人で帰れるって返信した。 送信」
(アレ? ちゃんと送れてる?)
わたしはメールアプリを確認した。
(ホッ)
「良かった、間違って逆に送ったかと思っちゃった……」
ピン!
空手:あんまりおばあちゃんとおじいちゃんを心配させちゃダメだぞ!
(うん、そうだね……)
ピン!
(うん、空手ちゃんも刀剣くんもとっても大切な友達なんだ……)
*
わたしは空手ちゃんと刀剣くんが通う高校の校門の前で待つ。
わたしの目の前にはこの高校の生徒さんを相手にずっと商売をしている小さな商店があり、暗くなり始めると灯りをつけて部活がえりの生徒さんを待っていた。
空手:時子ちゃんのお母さんは?
今お母さんは東京の大学に出戻りしてる、何か数学的におかしな現象が起こってるらしくて、お母さんが大学時代に研究した事が役に立つかもしれないらしい。
お母さんはわたしも東京に来るように言ったけど、わたしはココで空手ちゃんと刀剣くんと同じ高校を受けると言ってコッチにのこった。
(狙ってた高校は落ちちゃだけど……)
「お母さんはまだ大学、何か説明してくれたけど太陽系の星の重さがおかしいんだって、わけわかんない……。 送信」
空手:
「空手ちゃん、お母さんに勉強見てもらったらダメだよ、言ってる事がワケワカランすぎるから。 送信」
わたしも空手ちゃんや刀剣くんと会うまではお母さんに勉強教えてもらっていた、でもお母さんが変な教え方してるってわかったので教えてもらうのをやめた。
だってお母さん計算機がエラー出すような計算を暗算するんだもの、普通の人には無理って気づいた時にはもうわたし小学校六年生だったよ……。
ピン!
空手:それな!
「そうだよ、お母さん大学でも変人扱いで追い出されてコッチに帰って来たんだもん。 送信」
お母さんの逸話は尽きることが無い。
空手:頭良すぎるのも考えものね。 お父さんは?
「お父さんは本の虫、お母さんがやめたあとも大学にのこって歴史の文献あさり。 送信」
お父さんはお父さんで
大学がそんなバカな研究にお金出すからお父さんはずっと
たまに返って来たかと思えば刀剣くんのウチの神社に入りびたって古文書をあさってたって話。
ピン!
空手:そういえば鬼神神社で古文書パクられたって刀剣が言ってた。
(あれか? お父さん何やってるの?)
「それウチにある。コッチのアパート引き払った時におばあちゃんとおじいちゃんのウチに持って行った荷物に鬼神神社の古い本があった。 送信」
ピン!
空手:時子のお父さんも
「刀剣くんにウチにあるってメールしようか? 送信」
ピン!
空手:やめときな、今メールすると先生ますます怒って刀剣の帰りが遅くなる。後で私から伝えとく。
「わかった、お父さんにはわたしから言っとく。人の家の物で勝手に持って来ちゃダメって! 送信」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます