白い別荘②
新年になり、親戚の集まりで
高校2年の沙埜は年の離れた小さな子供達が変身ごっこで遊んでいる隅でスマホを操作していた。佑梨と顔を合わせるのは2年ぶりで、従姉ゆえ話したことは何度とあるものの何となく気まずく感じていた。というのも、母親から佑梨が東京で働いていると聞いていたからなのか服のセンスはじめ髪から爪の先までがすべて綺麗に洒落て見え、自分とは随分かけ離れた存在のように思えたからだ。
自分の家にいるならすぐにでも部屋に戻るところだがそうもいかず、スマホに視線を落とすしかなかった。
「沙埜ちゃん」
顔を上げると笑顔の佑梨がいた。沙埜は黙ったまま佑梨の茶色い瞳を見た。佑梨はロングスカートの裾を捲ると隣に座った。
「久しぶり、元気だった?」
「…うん」
「沙埜ちゃんもうすぐ高3だよね」
沙埜は軽く頷いた。沙埜の母親が長いテーブルの向こうからこちらを見たのでスマホを畳に置いた。
前は普通に話せていたはずだがその時にどんな話をしていたか忘れてしまっている。それに佑梨はもう社会人だ。何を言えばいいかわからず目先の散らかった座布団を眺めた。
「佑梨ちゃんって東京に住んでるの?」
「そうだよ」
「東京で何してるの」
「化粧品売り場で働いてる。デパートのね」
「ああ」
沙埜は困った。興味はあるが質問が浮かばない。
「実はね、沙埜ちゃんにお土産があるの」
佑梨は鞄の横に置いていた小さな白い紙袋を渡した。
「開けてみて」
沙埜は戸惑いながら紙袋を受け取った。
「ありがとう」
封をしてあるテープを開けていると、さっきまで向こうの方にいたはずの子供達がこちらに駆け寄ってきた。
「えー、いーなー!」
「こらこら、君達にはさっきお土産あげたでしょ」
「へへっ。ねえ沙埜ちゃん何もらったのー?」
紙袋に入っていたのは化粧品だった。
「これ…私に?」
佑梨は沙埜の反応を見て嬉しそうに笑った。
「よかったら使って。似合いそうな色選んだの」
佑梨からもらったのはファンデーション、チーク、口紅の3点だった。
子供達は興味をなくしたようで、大声で叫ぶと廊下へ走っていった。叔父や叔母達は酒が進み上機嫌で歌まで歌い始めている。
「私、化粧したことない」
「そうなの?じゃあ今使ってみる?塗ってあげるよ」
沙埜は少し考えてから頷いた。佑梨の姿を見ているとより興味が沸いたからだ。
「あっちの部屋行こう」
「うん」
2人は祖父が昔使用していた書斎へと向かった。
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