第26章 傀儡の群れ
ヤシュナギール遺跡の内部を
途中で道が消失していたことに
が、
「ぷはっ! この
「……」
本来なら
「行き止まりか?」
長い
「
「ほう。
「いや、それはあるまい。事前にお
「その前とは、おお、そうか」
何事かに思い当たったらしいブルシモンに、シンディーソが
「何でえ何でえ、
「手鏡のことさ。そうだろう?」
今度のヌルシキの沈黙は長かった。
「……ユマの鏡を見たのかえ?」
四つん這いに疲れ、地べたに座っていたブルシモンは、ゴツイ両肩を器用に
「何という名の鏡かは知らん。知っているのは、光を当てると三つ目の顔が浮かぶことだけだ」
ヌルシキも
「もう二か月前になるかの。仲間の一人が何者かに取り
手鏡のことを言い出したブルシモンがヌルシキの言葉を慎重に考えている
「あのでっかい
ブルシモンが「少し口を
「
「飛べば廟所へ行けるのなら、おれの知り合いの見習い魔道師をここに呼んでもいいか?」
ヌルシキにも
「
ブルシモンは横目でちらりとシンディーソの顔を見たが、
「そうさな。別の船で北大陸に渡ったから、今どの
「
さすがに苦笑して、ブルシモンは「それは遠慮しておこう」と断った。
横で聞いていたシンディーソは、
「とてもじゃねえが、今は食欲が
野蛮人ではなく副隊長と呼ばれたことに、
「では、入口へ引き返そう。案内してくれ」
その頃、ブルシモンの言う見習い魔道師キゼアは、ヌルシキに影響されて食人の風習に
栄養不良状態であったシーグ人はすぐに
「ひゅららるるるいいいいいいんっ!」
「おい、
言われたイレキュモスは「ほい、そうじゃった」と
「
恐らくはキゼア自身も
が、当然、せっかくイレキュモスから
そうなると
ただ一人の女性であるディリーヌはさすがに目を
目のやり場に困っている一同の中で、イレキュモスだけがキゼアの下半身を凝視して、「はて?」と首を
すると、
「
「ふむ。なくはないが、無駄じゃろう。
「何だよ、さっきから不思議そうな顔しやがって」
イレキュモスはディリーヌに視線を走らせたが、それに気づいた本人が「気にするな。わたしは
イレキュモスも笑って「すまんの」と断り、全員に聞こえるように話した。
「わしもルフタルの全身発火は何度か目撃したが、このように男根が
「誰だよ?」
イレキュモスは言うべきか少し迷っているようであったが、「調べるなら今が良かろうからな」と
「密告結社の
「ええっ!」
「何!」
「そんな……」
全員が驚く中、一番大きな声で反応したのはビンチャオであった。
「何だと! われの得た情報では、フェケルノ帝国を実質的に支配しているという人物ではないか!」
イレキュモスは「それは言い過ぎじゃろう」と軽く首を振った。
「実際には、内政は
「ほう、秘密とは何だ?」
そのディリーヌの問いには答えず、イレキュモスはやや勃起が
「キゼアよ。恥ずかしいであろうが、確かめたいことがある。すまぬが、おぬしの尻の穴の近くを見せてくれぬか?」
これにはキゼア本人よりも、親友のエティックが
「この変態爺いっ! キゼアをてめえの
が、ディリーヌが「待て」と止めた。
「わたしも船上でキゼアを見た際、『おや?』と思ったことがある。その時は見間違えかと思ったが、確かめてみたい。キゼア、すまないが、
「おお、やはり」
声を出したのはディリーヌだけで、最初に頼んだイレキュモスも、反対していたエティックも、眉のない目を細めて見ていたビンチャオも、言葉を失っていた。
キゼアの少年らしい白くて丸い尻には、肛門と
それは小さいながらも、明らかに
長い
「……やはり
一方、ヌルシキの案内でヤシュナギール遺跡の入口となっている
日没が近づいているからである。
「ぶるるっ。この村を出る前に日が暮れたんじゃ、生きた
人体の門を出てヌルシキの姿が見えなくなるなり、シンディーソはそう
「……ダナルークは、あの手鏡を手に入れたのは密告結社の者だと言っていた。つまり、谷底に身を投げた男から手鏡を受け取った者が別にいるはず。が、村人でなければ、すぐに気づかれる。うーむ。寝返りは考えられぬから、黒魔道で操られていたのだろう。その男は、どこへ行ったのだ?」
その時、シンディーソの切迫した声が、ブルシモンを現実に引き戻した。
「おいっ、あれを見ろ!」
夕暮れの草原を、こちらに向かって走って来る人影が見えた。
「ん? おお、あれはカラン隊長じゃないか。何かあったらしいな」
普段は眠そうな目を見開き、必死の
「に、逃げるんです! 早く!」
「何から……」
逃げるのかとシンディーソが訊くまでもなく、カランの後ろから百名近い隊員たちが追って来るのが見えた。
手に手に武器を持っているが、不気味なことに誰一人声を出さず、まるで死人のように無表情のまま、ギクシャクした不自然な動きで走っている。
ブルシモンは舌打ちした。
「まずいな。どう見ても黒魔道で操られているようだが、仲間は仲間。
瞬時に状況を
「いや。ヌルシキたちに迷惑を掛けられん。下手をすれば、戦争になる。ともかく、別の方向へ誘導しよう。見たところ、あまり早くは走れんようだ」
そうこうするうちにもカランは目の前まで来ており、「何を
このような状況であったが、ブルシモンは
「おれが先導するから、遅れずについて来てくれ! シンディーソもな!」
言うなり、ブルシモンは見かけによらぬ
「ったく、あなたという人は、自分勝手に、ああ、もう、わかりましたよ!」
文句を言いながら方向転換したカランに続き、シンディーソも走り出したが、やはり気になるのか、追って来る自分の仲間たちを何度も振り返った。
「あいつら、どうしちまったんだ? 一時的に操られてるのか、それとも……。いや、今はそんなこと考えてる場合じゃねえな。とにかく逃げねえと。に、しても、腹が減ったぜ。今夜は飯抜きかよ」
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