第20章 報復の波紋
結局、交渉役の
「ちぇっ。こんな時だけ子供
体を動かしている方が気が
が、キゼア以外に働いているのは
「腹立つなあ。あいつら、
エティックが
元々敵対勢力の兵士であったという船奴たちは全員
と、その時。
ディリーヌたちが向かった方向とは逆の森の中から、
兵士たちに緊張が走り、剣を構え
が、向こうから声を掛けて来た。
「待ってくれ、
怪しくないと宣言したが、森の中からゾロゾロと
しかも、
兵士のうち一番
男たちの方も、比較的年配の
「おれたちは、フェケルノ帝国の輸送船オルジボセ号の乗組員でさあ」
それを聞いた瞬間、キゼアとエティックは顔を
「実は、いつもの
年嵩の兵士は、
「事情はわかった。が、われらはヤンルー連合王国の者。フェケルノ帝国の民間人を助けるような
代表してペラペラ
「おれたちがオルジボセ号に戻るには、どうしたって船が
オルジボセ号は商船ではあるが、長年海賊と戦ううちに、自分たちも
が、ヤンルーの兵士は鼻で
「ど
鈍い
ほぼ同時に打撲音が次々に聞こえ、残る四人の兵士たちも倒された。
思わぬ展開に
「船はおぬしたちにやる。その
黒鬚は
「お、おお。いいともさ。じゃあ、早いとこ行こうぜ。確か、さっき仲間が森の奥へ行くのが見えた。魔道師も一緒みてえだったから、戻って来ると
「人質として連れて行く」
この
「あっ、あのガキだ!」
「ってことは、もう一人は魔道を使うぞ!」
その
黒鬚もそれで
「そうやって暴れられるのも今のうちだぜ。オルジボセ号に戻りゃ、
唇を
「おい、てめえら! ヤンルーの兵隊どもにちゃんとトドメを刺しておけよ! 子供二人には
仲間がそのような目に
村の入口付近で警戒していた村民は、先行するイレキュモスを見つけると「何度来ても同じだ。族長のお考えは変わらぬ。帰れ」と追い返そうとしたが、その後ろから現れたディリーヌの姿に絶句した。
短期間
ディリーヌは苦笑しながら「どうした、わたしを忘れたのか?」と
「村にまだシーグ人が
「ど、どうしてそれを……」
思わず秘密を
「族長のダスタニに、
村人は
と、「
「わかっているだろうが、おかしな
「わかっているさ。
ムッとした顔になったビンチャオも、ここはディリーヌに
一方、
待つほどもなく、先ほどの村人が戻って来て「族長がお会いになる」と告げた。
が、四人全員で歩き出したところで振り返り、「会うのはディリーヌ一人、と言われている」と困惑の表情になった。
「わしはここで待っていよう」
即答したイレキュモスと違い、ビンチャオは
「隊長はわれだ。同席できぬなら、会談もさせぬ」
ディリーヌは笑って「いいだろう」と勝手に了承し、村人には「わたしが直接ダスタニに頼む。心配するな」と言いながら背中を押した。
その後ろをついて行きながら、ビンチャオは一人残るというイレキュモスに
村に入ると、集会場らしい場所に案内された。
集会場といっても、数本の木の柱の上に
中心の丸い木の
が、村人に付き
「ディリーヌだけ、と言ったはずだ」
何か言おうとするビンチャオを片手で制し、ディリーヌが「わたしが説明する」と断り、ビンチャオと共に椅子に座ると、ここに
「……という訳で、わたしの今の立場はガルダン王の
「そういうことだ。われらもおまえたちと
ダスタニの角ばった顔が皮肉な
「
ビンチャオは笑顔を消し、眉のない目で相手を
「得はない。が、われらに協力せねば、無事では
顔色を変えて
「まあ、待て。ここは正直に話さねば
常識的に考えれば、騎兵は歩兵の倍以上の戦力である上、ヤンルーの派遣部隊十名のうち二人は子供、一人は老人だから勝ち目はない。
イレキュモスにせよキゼアにせよ魔道で逃げることはできても、攻撃力としては
ところが、ビンチャオは強い
「何故なら、われらは地上最強のヤンルーの兵士だからだ。海賊
ディリーヌが舌打ちして「声が大きいぞ」と
「シーグ人に聞こえては、交渉も何もブチ
「何だと、この
その剣はビンチャオのものであったが、握っているのはディリーヌである。
「い、いつの
驚くビンチャオの
「おっちゃん、油断したね」
それは五歳ぐらいの男の子であり、何が起きたのか理解したビンチャオが「クソガキ!」と叫びながら
ディリーヌが苦笑して「危ないからもう向こうに行っていろ」と告げ、剣は構えたままダスタニの方を見た。
「わたしがここを出る時にはまだ生まれたばかりの赤ん坊だったが、
「ダンだ。妙に気が
意外にも
ところが、ディリーヌはクルリと剣を回し、
「おぬしさえ大声を出さぬなら、これは返す。今は仲間だからな。敵はあくまでもシーグ人だ」
一瞬、
「今は気が
また声が大きくなって来たビンチャオを
「おっ、あれは」
今しもビンチャオが引き合いに出したイレキュモスが、低空飛行で接近して来ていた。
が、その表情は
集会場の直前で地上に
「
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