第19章 裏切りの代償
キゼアは動揺したものの何かの間違いと思ったらしく、
「ぼくの両親は二年前、
相手は「すまぬ」と頭を下げたが、その後に続く言葉は一層驚くべきものであった。
「おまえをアージュ村の
キゼアは動揺のあまり
「
珍しく声を荒げて否定しようとしたキゼアだったが、相手の目から大粒の涙が
改めて見直すと、相手の耳の上に
相手は、
「本当にすまなかった。おまえを
が、キゼアは歯を
「お
相手は再び大きく息を
「そうか。
キゼアは
「……あなたの、お名前だけ、聞いてもいいですか?」
相手は
「わが名はルフタル! 世間からは
「そんなに大軍が乗っているのか? それとも、新兵器が
と、横に浮かんでいたイレキュモスが「これこれ」と苦笑した。
「そんなに問い
「……あ、はい」
それでもすぐに話し出さないキゼアに、エティックが「じれってえな」と言うのを、ディリーヌが「聞け」と
キゼアは何度か深呼吸して自分を落ち着かせ、「それでは、お話しします」と
聞くうちにイレキュモスの笑顔が消え、最後に相手の名前を聞いた瞬間、反射的に舌打ちしてしまい、「すまん」とキゼアに
「あの裏切り者が、あ、いや、あやつが関わっていたとはな。が、それにしても……」
改めてキゼアの顔を見ながら複雑な表情をするイレキュモスに構わず、ビンチャオが「向うがその気なら、全力で戦うまでだ!」と
が、すぐにディリーヌが
「まあ、待て。猛進するばかりが戦術ではあるまい? ここは
ビンチャオも小隊長まで
ディリーヌも「わたしが誘導しよう」と言いながらそれに続く。
一方、話し
「あんまり深刻に考えるなよ。敵の魔道師が言ったこった。まるっきりの
何か考え込んでいたイレキュモスは「……あ、うむ、そうじゃな」と
ヤンルー連合王国の船が進路を大きく
「……な、何ですか、これは……」
隊長のカランは普段眠そうな目を見開き、
その視線の先に、異様な門がある。
大人二人がやっとすれ違える
その表面を飾るのは、なんと、バラバラにされた人体のようだ。
まだ生々しく血が
カランの横に立っているブルシモンも鼻に
「見たことのある顔が並んでるな」
「え?」
言われたカランは改めて生首に目をやって、
「こ、これは港にいた騎兵部隊のシーグ人、ですね?」
「ああ。
「に、しても……」
カランは犬のようにブルッと体を震わせた。
「
このような状況であったが、ブルシモンは岩のような顔で苦笑した。
「決まってるじゃないか。警告さ」
「誰が誰に何を警告するんです?」
息せき切ったように質問するカランに、ブルシモンは太い肩を
「ヤシュナギール族が、おれたちに、こうなりたくなかったら大人しく帰れ、って言ってるのさ。それより」
ブルシモンは横目でさりげなく部下たちの様子を
「隊長のおまえがそんなに動揺しちゃ困るな。服の中で小便ちびったとしても、見せかけだけでも堂々としててくれ。それでなくとも
カランもハッとしたように「ですね」と
「ヤシュナギール族の風習にしても、ここまであからさまなことをするのは、いよいよわたしたちが秘宝に近づいたという証拠。さあ、皆さん! これから」
向き
「うわっ! なんか来たぞ!」
「怪物だ!」
「く、
「逃げろ! 逃げろ!」
「
舌打ちして隊員たちを
カランは、どこに焦点を合わせればいいのかわからなかったらしく、反射的に目を細めた。
「ん? 何だ、これ?」
門の向こうの道を
白い塊の正面には
「……
カランの口から思わず
「そうか、これがマセリか」
ブルシモンの言葉に、カランは裏返った声で「何ですって?」と
「まあ、おれも
「な、何を
しかし、ブルシモンは首を振った。
「いや、
ブルシモンは
「
言うなり駆け出したブルシモンに「隊長はわたしですよ!」と文句を言いながらも、カランも全力で
フェケルノ帝国の派遣部隊が
「ここからなら、迷わずヤシュナギールの遺跡まで案内できる」
自信に満ちた声で宣言するディリーヌに、隊長のビンチャオは皮肉を込めて「遺跡が掘り返され、秘宝を
鼻で笑ったディリーヌは
一方、ルフタルと名乗る人物から自分の子であると告げられて以来
「なあ、元気出せよ、キゼア」
「ああ。わかってる。みんなに迷惑はかけないよ」
そうして二人並んで砂浜に立つと、同じ年齢とは思えぬほど体格が違っている。
色黒で長身のエティックに比べ、ずっと船室に
その細い肩を抱き寄せ、エティックなりに
「おいらと一緒に体の
「……」
が、その視野の
もっとも、当のイレキュモスの顔は暗い。
ディリーヌが馬の
「わしの名は知っておるようであったが、態度は
「ほう。わたしの記憶が間違っていなければ、この漁港はベギン族のものだと思うが?」
「おお、そうじゃよ。族長のダスタニという男と、長老のタルザノという老人と話をしたんじゃが」
いきなりディリーヌが笑い出し、「それを早く言ってくれ」とイレキュモスの背中を
「な、何じゃ?」
驚くイレキュモスに「ああ、すまぬ」と笑いながら
「わたしは南大陸へ渡る前、剣の修行のためベギン族の村に
「おお、そうか。では頼む。何なら、連れて飛ぼうかの?」
ディリーヌは、一瞬考え、首を振った。
「いや。申し訳ないが、その場に
「
大声で叫んだのは無論イレキュモスではなく、その時ようやく船から降りて来たビンチャオであった。
「勝手な
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