第15章 覇道の王
が、普段強がるエティックでさえ言葉を失うほど、敵は多かった。
「……こ、こりゃあ、
フェケルノ帝国の基準では、分隊が十名、小隊が百名、中隊が千名、大隊が一万名という
しかも、ヤンルー連合王国軍の特徴として騎兵の割合が高く、
今しも、多数の弓に
「
そのキゼアの提案を、最初に逃げようと言い出したイレキュモスでさえ「無理じゃな」と
「隠形した直後に
が、ディリーヌだけは冷静に敵を観察し、「妙だな」と首を
「どう見てもこの座所だけを包囲しているようだが、
ディリーヌの言葉に
「いや、それが事実じゃ。ふむ。すると目的は何であろう?」
「あっ、誰か来ます!」
キゼアの声に皆がそちらを見ると、
全体的に
こちらを
その顔に
「驚かせてすまぬ。われはヤンルー連合王国軍小隊長のビンチャオという者だ。風師イレキュモス先生に用があって参った。
ビンチャオが話している間も、弓を構えている兵士たちは全員、矢を
相手の言葉をゆっくり
「察するに、わしの意思は聞いてもらえぬらしいの」
ビンチャオの笑顔が
「わが主君は
イレキュモスは大きく息を
「が、見てのとおりわしは一人ではない。弟子が三人おる。この三人も同行させて良いな?」
エティックが文句を言おうとして
「死にたくなかったら、ここはイレキュモスどのに任せよ」
ビンチャオの方は値踏みするように後ろの三人を見ていたが、
「とても弟子には見えんな。ご老体に
イレキュモスは平然と「おお、いいじゃろう」と返事をしたが、振り返ると三人に
顔色を変えて暴れようとするエティックを力で
キゼアは
客として迎えると言いながら、結局最後まで狙っている矢が下げられることもなく、四人は用意されていた馬車に乗せられた。
客室部分に窓はなく、明らかに
「なんでえ、この
「……まあ、こんなもんじゃろ。簡易的に結界を張ったから、
話の腰を折られたエティックが「何て言おうとしたのか忘れちまったよ」と
「風師お一人なら逃げられたでしょうに、ぼくらを助けるためにこのような
が、イレキュモスは意外にサバサバした
「おまえは、わし一人なら何とかなったろうと言うが、
と、ディリーヌが首を
「どうであろう? 失礼ついでに言わせてもらえば、ご自身でも申されたとおり、風師は
イレキュモスは
「が、わしを殺すことに意味がないのなら、生かして連れて帰る目的は何じゃと思う? まさか、ガルダン王の
キゼアが「ああ、もしかしたら……」と自分の考えを述べた。
……元々ヤンルー連合王国は
従って魔道師は
そのヤンルーで、何らかの事情で急に魔道師が必要になったのだと思います。
ところが、
皇立魔道学校に属さない魔道師もいるにはいますが、能力的に
そうした中にあって、風師は皇立魔道学校の出身ながら学校とは
エティックが言うとおり現在の扱いは
ぼくの知る限り、風師に匹敵し
キゼアがルフタルの名を出した
「あんな裏切り者と同列にせんでくれ。あやつのせいで……おっと、すまん。これは個人的な感情じゃ。ふむ。まあ、ともかく、そうであれば、わしはすぐに殺されぬとして、問題はおまえたちじゃ。あのビンチャオという眉なし男に限らず、ディリーヌを狙う者は多かろう。いや、ガルダン王に
ディリーヌは笑顔のまま「意に
「玉を
それを聞いたエティックが「おっかねえ」と股間を押さえたため、その場の全員が笑った。
イレキュモスの座所のあったクレル州の
途中、野営する際にも監視は厳重で、食事中は
さすがにディリーヌには
が、案外に本人は平気なようで、「人間として
「ディリーヌの姉ちゃんのあられもねえ姿を
エティックは張り切ったが、最初に小隊長のビンチャオが色目を使ったためか、兵士たちは
そのため途中で逃げる機会などなく、王宮内で警戒が
そして六日目の早朝、ビンチャオの声が響き渡ったのである。
「ビンチャオ小隊、
馬車の客室の中でも、それに応ずる声と門が開く音が聞こえた。
「いよいよだな」
そう言うエティックの声は少し震えている。
意外にも、キゼアは落ち着いていた。
「魔道師が少ない、ということは、ぼくらの方に有利ですよね、風師?」
が、イレキュモスは
「わからん。何しろ、相手はあの
門を通り抜けてからも馬車は奥へ奥へと進み、途中、大部分の兵士たちとも
「随分でっけえ王宮みてえだな」
エティックが感心したように言うと、キゼアは笑って「広さはね」と
「帝都ヒロールの市街地のど真ん中にある
「そっか。じゃあ、おいらが飛竜部隊に入ったら、この国もお
エティックが
後方の
「さあ、
そこは中庭のような場所で、前方に一人の男が見えた。
男は半裸で
ビンチャオよりは小柄だが、見事に逆三角形をした背中の筋肉が
長い茶色の髪は後頭部で一つに
ビンチャオはその背中に向かって頭を下げつつ、良く通る声で
「風師イレキュモス先生をお連れいたしました!
それでも
かなりの速さで飛んで来た木剣は、ビンチャオの横を通り過ぎ、真っ直ぐディリーヌの顔面に当たった。
かと、思われたが、
「ほう」
声を出したのは木剣を投じた男の方で、ディリーヌは静かに
男はビンチャオよりは年配で、眉もちゃんとあったが、
「面白い。
ディリーヌは笑顔を
「女剣士ディリーヌと申します、ガルダン王陛下」
ガルダンは笑顔を見せぬまま、ディリーヌから視線を
呼ばれたビンチャオは、まるで
ガルダンは片足を上げてビンチャオの後頭部を
「余の目の前で、この
ビンチャオは額を地面に
「
その間も、ガルダンの
「ディリーヌとやら。もしもビンチャオに
「
「イレキュモスとは後で話す。そこの子供二人については、まあ、試合の結果
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