第46話 人間美術館

夜。

人里離れた場所にある小屋。

小屋の前に一台の車が停まった。

車からスーツを来た男が二人と老人が降りる。

老人が小屋のドアをノックする。

ドアが開くと中から老婆が出てきた。

老婆が言った。

「入んな」

小屋の中は狭く、入り口から見て右斜め前にテーブルとイスが2つ。

奥に階段がある。

老婆はイスに座り、老人にも座るよう促した。

老人が言った。

「うちの死んだ孫娘をこの人間美術館に飾って欲しい」

この小屋は人間美術館。遺体を美しく飾り付けて保管している場所だ。

二人のスーツを着た男が長方形の箱を室内に運んできた。

老人は続ける。

「交通事故で死んでな。その時、ワシは海外で仕事をしていて、側にいてやれなかった。最近、孫娘の幽霊が毎晩、ワシの側に現れるあの子は友達もおらずずっと一人ぼっちだったからのう……」

老婆は頷いて言った。

「ここにはたくさんの人が眠ってるからね、あんたの孫娘も寂しくないよ」

遺体の入った大きな箱を受け取る。

その日から老婆は地下室に籠り、死体のおめかしを始めた。

数週間後、老人はのもとに電話がきた。

老人は小屋へ向かい、地下室に入った。

地下室はとても広く、大きなケースが壁一面に並べられている。それぞれに死体が入っている。

老人は孫娘の死体の前に立つ。

無数の幽霊が娘を優しく抱き締めている。



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