第47話 後追い

昼間。

小さな教会。

奥にいる神父が本を片手に目の前にいる人々に話をしている。

本には書き込みがいくつかある。本を読み上げている。

「人は死ねば、天国へ行きそこで永遠の命を手に入れられる」

聞いている人々の一人の青年が涙を流す。



夕方、小高い丘にある墓の前で青年が片手にナイフを持って立っている。

青年の、病で死んだ恋人が眠っている墓だ。

青年は言った。

「僕も永遠の命を手に入れるよ」

ナイフを自分に突き刺した。


翌朝、教会の前に二人の子どもがヒソヒソ話をしている。

「俺さ、この前、またやってやったぜ! 神父の本に落書きしてやったよ!」

「どの箇所を落書きしたんだ?」

 「『人は死ねば魂はそれぞれ世界を彷徨う』のところを『人は死ねば、天国へ行きそこで永遠の命を手に入れられる』ってね。神父は普段から書き込みをするから気付いてないぜ!」



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