第31話 おはよう
寂れて汚らしい住宅街。貧しい人達が住んでいて治安が悪く、荒れ放題いだ。
ある二階建ての一軒家。建築年数は古く、庭には雑草がたくさん生えている。
ある冬の朝、目を覚ました少年が家の玄関前に出て伸びをする。
少年が左斜め前に視線を動かすと老婆がうずくまっている。
「大丈夫ですか?」
少年はかけよって声をかける。
老婆は弱々しく震えた声で言った。その肌は殴られた痕や痣だらけだ。
「痛みもあるけど、寒いからとりあえずそこの家に入れてくれないかねぇ」
少年は老婆を家にあげて、和室へ案内した。
二人はテーブルを挟んで向かい合って座る。少年は席を外した。キッチンで茶色の冷蔵庫を開けたがなにも入ってない。母が来たのでお茶がどこにあるか聞いた。
「なんでそんなことを聞くの? ……いや、そこの黄色の棚の引き出しの中にあるけど」
お盆にお茶の入った湯飲みを一つ乗せて運んできた母と共に戻ってきた。
少年が老婆の再び座り、彼の母は湯飲みをテーブルの上に置くと部屋を出た。
少年は言った。
「なんであそこでうずくまってたんですか?」
老婆は答える。
「ここがあたしの家だったからねぇ」
「ここは僕の家です」
老婆は苦笑いしながら言った。
「あんた、いつ目を覚ました?」
「……? どういうことですか?」
「眠った後、目を覚ますだろう?」
「今朝、目を覚ましましたが……」
「あんた、性格は几帳面かい?」
「はい。家の掃除や庭の手入れは毎日やります。家族総出で」
「じゃあ、なんで雑草まみれなのかねぇ」
「……なにが言いたいんですか?」
老婆は少年の目を見て言った。
「あんたはロボットで、目を覚ましたのは数年ぶりなんだよ。……あんただけじゃない。世界中のほとんどの人間は、実はロボットさ」
「は? なにを言ってるんですか?」
「黄色い冷蔵庫の中にはなにも入ってなかったはずだよ。何故かって? あんたはロボットだから食糧なんていらないからねぇ」
少年は目を見開いて怯えた声で言った。
「あなたは何者なんですか?」
「……本物の人間さ。そしてこの家の元住人。あんたたちロボットに迫害されて追い出されたんだよ。リセットされたらまた忘れるんだろうけど。おやすみ」
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