第24話 愛を操る少女

薄暗い研究室。

部屋の真ん中には寝台があり、その上に世界最古の生身の人間の死体がある。今や人類のほぼ全員がサイボーグだ。貴重な隅にあるデスクで10代半ばの研究員の少女がパソコンのキーボードをカタカタと叩いている。

研究室の扉が開くと、三十代前半の男──教授──少女の上司──があわてて入ってきて、少女に怒鳴る。

「なんということをしてるんだね! 人々──サイボーグの心にアクセスして『愛』という 感情を破壊させようなんて! そんな馬鹿げたことはやめるんだ!」

少女はエンターキーを押して立ち上がり、教授の方を向いて言った。

「人は『愛』があるから、取り憑かれるから、人を傷つけるんですよ?愛が素晴らしいものだなんて私は思えません!」

教授は少女を抱き締める。

「俺は君のことが好きなんだ……! お互いに好き同士になりたいんだ」

少女は優しく呟く。

「教授も人間なんですね……。サイボーグの体では子供を作るのは難しいけど……良かった。『愛』という感情は私たちだけのもの。ううん。私たちと私たちの子供のもの」

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