第22話 神に捧げられなかったもの
広い部屋。
奥には黒板とモニターがあり、その手前に白髪頭の老人がいる。老人から見て左手側にカーテンがかかった大きな窓があり、正面にはいくつも席があってそこには二十代の若者たちが座っている。
映像系メディアの学園の講師である老人は生徒達である若者達に講義をしている。
「映像という媒体は神に捧げられなかった珍しいものだ。音楽、絵画など、媒体は神に捧げられ──そこから王族や貴族、庶民のもとに降りてきたのが多い。そして映像は人々の心に最もうったえ──」
バチンっ!
部屋が真っ暗になった。電気が切れた。
ざーっ、ざーっ。
生徒達がざわざわとする。
モニターに口もとにヒゲを生やした男の政治家が写っている。彼は大声で叫ぶ。そこから数多の悲劇が写った。
政治家の男が言った。
「お前達は私になる。映像という媒体を使って人々の心を容易く動かす私になる。それは何故か、映像は醜悪な近現代の人類が発明した媒体だからだ。ほら、見てみろ」
モニターには部屋の中が写っている。部屋の中の若者全員が口もとにヒゲを生やした男になって大声で叫ぶ。
老人は呆れて溜め息を吐く。
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