第21話 王子の外出
昼の青い空。
森の中の一本の道を、一人の少年――王子が馬に乗って従者と食料や狩りの道具が入った馬車を連れて行く。
従者の一人が言った。
「王子様、初めての巡行ですよね? 数年ぶりの外出ですし、気をつけてくださいね」
「ああ、わかっている。あの者たちはなんだ?」
王子が指を指した。その先には数十人のみすぼらしい姿の人たちが木の周辺で座り込んでいる。一人が王子のもとへ来て跪く。従者が剣を抜こうとしたのを王子は片手をあげて制する。
跪いた男が言った。
「王子様! 現在の王の厳しい政治ではやっていけません! 農民は飢餓のせいで食うものがなく困っていて、猟師たちもまずしくて弓と矢を買う 金がなくて困ってるだ! 助けてくだせえ! 」
誰かが小さく「馬鹿者!」と呟いた。
王子は従者に言った。
「馬車の中の物をこの者たちに分け与えろ!」
白髪頭の従者が王子を諫める。
「食料を与えるのは構いせんが、狩りの道具はいけません。万が一、こやつらが弓を王子に向けたら……」
王子はその言葉を聞き入れた上で分け与えろことにした。
みすぼらしい姿の人たちは馬車へ駆け寄り、そのうちの一人が王子を矢で射殺した。狩りの道具が入っている馬車が漁られている。
薄暗い牢屋。
一人の男が牢に閉じ込められている。
看守の男が来て怒鳴り散らす。
「お前が民衆と手を組んで王子を暗殺したのか!」
男は笑いながら答える。
「そうですよ。馬鹿者が、世間にあまり存在を知られていない王子の前で、王子様! と、叫んだ時はひやひやしましたが」
「何故、このようなことをした!」
「理由は無能を殺したかったからですよ。このような愚かな政治を行う無能を。そういう人間が歴史を動かせる立場にいることに腹が立つんです。息子が殺された王はどうなりますかねぇ?」
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