第9話 かわいいお人形さんと供養

夕方、一軒家の薄暗い子供部屋で、少女──由紀が壁にもたれ掛かって女の子の人形を抱き締めている。壁のカレンダーの15日のところには『人形供養』と書いてある。人形と会話をしている。

「ねぇ、由紀ちゃん。ずっと側にいたいよ」

「ずっと一緒だよ」

がちゃがちゃ。がちゃ。

部屋のドアが開いた。

由紀の母──早奈英が部屋に入ってくるなり怒鳴った。

「いつまでそんなおもちゃで遊んでるの!? 早く勉強しなさい!」

「お母さんうるさい! おじいちゃんがくれた大切なものなの!」

早奈英は、由紀に近づき顔をひっぱたく。

「私のお父さんが死んだのだは何年前だと思ってるの!? いい加減に忘れて、勉強よ! 勉強!」



「熱いよ! 熱いよぉ……! 」

由紀が子供部屋で目を覚ますと、真っ暗だった。そして、人形がなかった。

由紀は急いで家を出て走った。大きな広場へ行くと、大きな焚き火があり、そこで無数の人形が山のように積み重なって焼かれている。大勢の人が火の回りに立っている。早奈英もいた。由紀の人形も焼かれている。

「お母さんの意地悪! おじいちゃんはお人形さんの中に自分の命をいれてたんだよ! 悲しい時も苦しい時も辛い時も、毎日、おじいちゃんとお話してたの! それを焼いたらおじいちゃんが死んじゃう!」



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