31.愛は平等に
「なんでそうなるのよ! 私はイヤだからね!
アナタはなんで平気でそう言うこと言えるのよ、絶対おかしいよ!」
「なんでぇ? ウチにはそっちのが理解できないよ。
スイーツだってシェアした方が楽しいしでしょ?
独り占めしようなんてウチはズルだとおもぅょ?」
「だからそれとこれとは全然違うって先から言ってるじゃないの!
歯ブラシはシェアしないでしょ? そう言うものだってあるんだからね!」
「んむむ、じゃ、じゃあ、歯ブラシもシェアするから!
それならいいでしょ!?」
「いいわけないでしょ! そう言うことじゃないってなんでわからないのよ!
もうアタシのことはほっといて! 気にしなくていいから!」
美知子と久美は意味がなく不毛な言い争いを続けていた。その中心には当然高波がいるのだが、二人の言い争いをただ笑ってみているだけで止めようとはしない。さらにそこへ、浮かれていて頭花畑の金子が戻ってきたのだ。
「どうしたんだ二人とも、ゲーセン行こうぜゲーセン。
ほれ、早く行くぞー」
「随分とご機嫌じゃないの。
でもこっちは今それどころじゃないんだけど見てわからない?
この頭おかしい女をどうにかしてよ、もう!」
「久美ちゃんってばひどー。
ウチは頭おかしくなんてないもん、テストはいつも上位だしさ。
それにこういうのなんて言うの? 慈愛? 無償の愛ってやつ?」
「もう胡散臭い宗教みたいなことばっか言ってさ。
金子君に聞いてみなって、絶対おかしいっていうから!」
「金ちゃんはそんなこと言わないよねー?
ウチはさ、久美ちゃんがタカシを好きだからシャアしよって言っただけだもん。
そうじゃないとずっと片思いでそのままになっちゃうでしょ?
ほら、おかしくないじゃん!」
「うむ、それはおかしい、いやおかしくないかも?
なんせ相手はこのナミタカだしなぁ。
普通はおかしいけどコイツが絡んでるならそれもアリってとこか?」
「金子君! なに言ってんのよ!
アタシはちょっとは気になるって言っただけなの!
そしたらミチったら急に変なこと言いだしてさ……
一緒に付き合えばいいなんてどう考えてもおかしいじゃないの!
それならクラスメートの今だって立場的には変わらないわよ」
「違うよ、全然違うの!
久美ちゃんもタカシに抱かれていいよって言ってんの!
そしたら公平でしょ?
ホントはウチが東高へ編入すればもっと公平なんだけどさ」
「いくらなんでもそれはやり過ぎでしょ……
大体アタシはそんなこと望んでないんだからね?
誰もが肉体関係を求めてるだなんて決めつけないで!
さっきからずっと同じこと言ってさ、しつこすぎるのよ。
当事者のアンタもなんとか言いなさいよ!」
「えー、オレはどっちも好きなように決めていいってば。
それに従うだけだからさ。
あえて希望を言わせてもらうなら三人でってのは避けたいくらいかな」
「さ!? アンタなに言っちゃってんのよ!?
そんなのありえない、いやいや、アタシとアンタがそうなることがあり得ないって言ってんでしょ!」
「またまたー、久美ちゃんって潔癖症? それとも逆処女信仰みたいな?
自分のことを好きな人に捧げたいってキモチはわからなくもないけどさ。
相手が童貞じゃなかったら意味ないじゃん、不公平じゃん、ほぼ無理じゃん」
「そういうこと、じゃ…… ない…… けどさぁ。
できれば誰でも良かったみたいなのはいやって言うか……」
「やっぱ久美ちゃんってヴァージンなんじゃん。
かーわーいーいー! 初めてで怖いかもだけどタカシなら安心だよ?
優しいしすごく上手だから、それに久美ちゃんの好きな相手じゃん」
「うるさい! 別に処女だからって恥ずかしくないもん!
こうなったらずっと守ってやるんだからね!
雰囲気やノリに流されてこんな奴にくれてなんかやらない、絶対に!」
話がまとまるのを待ちながら笑っているだけの高波は当てにならず、金子も眺めてるだけではしかたない。野次馬が集まってきているこの惨劇を桃子が見たら、学校前で金子
金子は早く止めないとと、ムキになって興奮している女子二人の間に入ろうともがいてみたが、全く歯が立たず諦めかけていた。
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