第10話 本番
『ストップよ黒狼』
攻略を再開した黒狼は『二つの道』のナビゲーションに従いその場に留まった。
「タイミング考えろよ・・・」
黒狼は天井に張り付いた姿勢で停止している。文句を言いながらも全く苦にはしていなそうではある。
『ここから先には網の目のように赤外線装置が張り巡らされているわ。いくら透明になっても触れたらアウトよ』
「・・・俺も見えているが・・・忠告するってことはそれだけじゃないのか?」
『ええ、天井も床も壁も感圧板、監視カメラも動体検知に温度感知・・・さっきまでの監視が児戯に見えるほどの警戒態勢よ。ここからが本番って感じよ』
交互に交信する『二つの道』。普段お互いのことしか考えていない彼らでもしっかりと仕事として黒狼に警戒を促す。
「・・・つまり何か?壁にも何処にも触れずに網の目をくぐって行けと?」
『因みに罠が無いところにはしっかりと機械兵たちが配置されているわね・・・見た感じ人間ベースの高性能機よ』
質問をする黒狼に追い打ちをかける様に嫌な情報を告げる。
『休憩どころか一息つけるスペースも無いわね。・・・どうするの?』
『時間をかけるのも良くないわ。今はまだ他の界の動きが無いから攻略に集中できているけれども、ここでまごまごしていれば状況は悪化するわね』
攻略に暗雲が立ち込めたことで空気が悪くなる本部。打開策は無いかと話し合おうとした本部を無視するように黒狼が通信越しに話しかけてきた。
「ちなみになんだが、中枢まではあとどれぐらいだ?」
再びスキットルの中身を飲み、自身の残り体力や魔力を確認する黒狼。
『あなたまさか・・・強行突破する気?』
「帰らせてくれるなら今すぐにでもUターンするが・・・許されないなら進むしかないだろう?」
『・・・二時の方向、直線距離で1038・・・それなり遠いわよ』
距離と方角を聞いた黒狼は瞬時に飛び出す。
自身の能力を十全に使うことになったとしても、ギリギリと判断し、出し惜しみする余裕も時間も無いと思ったからだ。
――― 異常探知!異常探知!未確認物体の存在を探知!A1からJ3の部隊はB区域に出動せよ!繰り返す・・・! ―――
即座に敵の探知に引っ掛かり、大きな警報が鳴り響いた。
数分もしない内に機械兵たちが大挙として押し寄せてくるだろう。
黒狼は警報なぞ聞こえていない様に、宙を飛び抜けた。
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