第一章 第一界 『崩壊都市 ムー』
第7話 攻略 スタート
そこは整然とした綺麗な街並みだった。
道にはゴミどころかチリ一つ落ちていない。
代わりに人どころか生命の気配も一切無い。ただ奇妙な駆動音や電子音が定期的に聞こえてくる血の通わない雰囲気を醸し出していた。
巡回している多くの機械は仕えるべき人間がいない今、どんな命令によって動いているのか。
侵入者を見つけると即座に殺害、回収し新たな機械兵へとするのは何故なのか。
「あーあ。何で俺がこんなこと・・・」
その危険地帯に一人送り出された黒狼は何度目かになる溜息を吐き出す。
『無駄口叩かないで攻略に集中しなさい。ここはよくあるステルスゲームとは違うのよ』
黒狼は通信機能付きのカメラを持たされている。本部にいる『一点紅』たちの指示をもらうためである。
「安全地帯でふんぞり返っているおばさんとホモたちめ・・・。死と隣り合わせの俺によく言えたもんだ・・・」
『ぶつくさ言ってないでちゃんとカメラを装備しなさい!ほら『二つの道』もしっかり仕事しなさい!』
黒狼はぶつぶつ文句を垂れながら頭にカメラを装備する。
『それじゃあ頼んだわよ・・・コラ!いつまでもお互いに絡み合ってんじゃないわよ!今は攻略に集中しろ!』
『ああシン!嫌だわあなた以外に能力を使うのわ・・・』
『ああユウ!私もよ!目が腐り落ちそうだわ・・・』
二人は絡み合いながらも、お互いにしか向けていなかった視線をカメラの映像に向ける。
『さっさと終わらせてまた愛し合いましょう。シン。』
『ええそうね。ユウ』
二人の宝石のような瞳がぐるりと変化した。
片や光彩の無い真っ暗な黒に。
片や光移さぬ真っさらな白に。
『ささっとやりますわよ下郎。わたしたちの言う通りに動きなさい』
『通りにいると見つけてくださいって言っているようなものよゴミ。虫らしく物陰に隠れながら移動なさい』
「てめえら帰ったら覚えてろよ・・・!」
黒狼は二人の罵声を聞き、青筋を浮かべながらも素早く、そして音もなく移動した。
――― 『第一界』 攻略 スタート ―――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます