第8話 『二つの道』の真価
『二つの道』はシン=アイリスとユウ=アイリスの能力者の呼称だ。
二人は双子の兄弟であり、ご立派なのを持っている方がシンで普通サイズがユウという違い以外は鏡写しのように似た容姿をしている。
華奢な見た目通りに戦闘は苦手であり、時間が無くてもお互いで慰めあってばかりいるが、こと今回の攻略のように後方支援。特に探知、探索には絶大な力を発揮する。
『機械兵が一体と監視カメラが3台。監視カメラの視野範囲に入れば即終わりだから気をつけなさい』
『この機械兵は魔物のゴブリンが使われているのか動きは単純よ。死角にいればまずばれないわ』
カメラ越しでも状況を把握し指示を飛ばす二人。彼らには多くが見えている。
自身が視界に入れている生物、非生物問わず、視界を持つものの視界をジャックするシンの『孝道(アドミニスター)』と五感で感じた感覚を他の感覚でも受け取れるユウの『忠道(オブセッシブ)』の合わせ技により、多くの罠や監視カメラ機械兵の巡回の目が届かないルートを導き出していた。ちなみに普段は二人で能力を行使しながらお互いを五感で感じあっている。
『東に5歩、北に12歩。そこから壁に張り付いて駆け抜けなさい』
『街灯の高さを超えないように跳んで移動なさい』
無茶としか思えない指示を飛ばす二人。
如何に敵に見つからない最適なルートが分かったとしても指示通りに動けるかどうかは別だ。しかし、黒狼はぶつくさ文句を言いながらも着実に歩を進めていた。
「なんで俺がこんな・・・忍者なら夜叉王のやつがいるだろう・・・!?」
物陰に隠れ、壁を走り、危なげ無く音も無く、盗人としての技能と彼自身の能力を駆使しながら進んでいた。
『見つかったら機械兵を破壊すればOK、なんて都合の良いものじゃないのよ。一度でも見つかれば街全体に通達され大挙として機械兵が現れるわよ』
『一点紅』は事前にネモから受け取った街の地図を片手に文句を言う黒狼を諫めていた。
『地図のおかげで道はわかっても配置された機械兵や監視カメラはやっぱり増えているわね・・・無策で突っ込んでいたら即お陀仏ね』
「俺への配慮が無いのは無策って言えるんじゃねぇの?」
口を開けば愚痴と文句しか言わない黒狼との会話は不毛と思ったのか『一点紅』と『二つの道』は攻略へと意識を割いた。そんな本部の反応につまらないと思った黒狼は舌打ちを一つすると目の前の攻略に集中した。
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