第5話 魔を否定する理
ゼロが度々気配を察知し誘導する。彼曰く、決して敵の数は少なくない。イーリエはあくまでも復讐を望んでいるけど、私たちは無理そうであれば一歩引くのも忘れないよう…………と、忠告された。
こうやって歩を早める程に、アルルが殺されたって事実がより確かに胸に刻み込まれる。イーリエ程ではないにせよ、私だって怒りを抱いている。せめて、どうしてこんな事をしているのかそれだけでも聞きたい。
「はぁ……はぁ……」
もう私の息は絶え絶え。普段から運動しなかった弊害だ。イーリエとゼロは気が付けば私の前方を走り、先導する形になっていた。ゼロとイーリエが道を右に回ると、彼は声を上げた。
「おい!!! ローズ、止まれ!!!!」
足を止める。どうして? なんで止まらせるんだい? もしかしたら、居るの? 『奴ら』が。
まだ、彼らの曲がった道の先を見れていない。よく耳を澄ますと大勢が呼吸する音が聞こえ、少し鼻を利かせると何かが焦げたような異臭がした。少し気持ち悪い。
「そこに、いるんだろ!? 帝国の彼らが! 私にも――――」
ズカズカと前に進み、私は道を曲がる。
「バ、バカ野郎!! 来るなァ!!」
ああ、何で不思議に思わなかったんだろうか。イーリエが一言も喋っていない。怒りに満ちた彼女さえ言葉を失う何かがあったんじゃないかと、予想できたのに。
私は、ローズは曲がり角の先を見る。そこには――――――
◇◇◇
村の中央広場。本当なら憩いの場となるであろうその空間は、今となっては『彼ら』の儀式の会場となっていた。広場の中央には大勢の甲冑。そして燃え盛る死体の山と十字架、十字架に磔にされた誰かだった。その誰かも、もうすぐあの死体の山の中へと溶けていくのだろうか。
その誰かは、頭に何か付けていた。かろうじて高熱に耐え形を保っている、花の…………。
「――――どうして」
イーリエが口を開く。もう声色では誰か分からない程に、怒りとも哀しみとも呆れとも受け取れるような――――どうしようもない感情に埋めつくされたのだろう。だって、あそこで、
「……アルルが燃えてる」
「ねぇねぇねぇねぇ!! 貴様、また私たちに歯向かう訳ェ? しかもお仲間まで連れてきたみたいだねェ?? アハハ!!」
無数の呼吸音と業火の悲鳴が聞こえるこの広場で、女の声。イーリエの話に聞いた通りの顔を認識できない女――いや、思っていたよりも幼く思える。少女とでも呼んだ方が適切だろう。
無骨な白甲冑の集団の中央に、燃え盛るアルルを背中に彼女は立つ。白く高貴そうな装飾の入った軍服のような服を着ている――――――聞いていた通りの恰好、間違いなく主犯格だ。よく見ると胸には何か小さいモノを入れられるようなペンダントをしていた。
「俺たちはこの子とそこで燃やされてる女の知り合いだ。俺たちはここで探し物をしたい。不要な戦いを避け、ここから居なくなってくれないか? 出来ればあんたらのような位の高そうな奴らを相手にはしたく無いんだ」
「知り合いねェ…………。その後ろの――あの耳はエルフかな? あの人はそうでもなさそうだけどね。そこの何も守れなかった役立たずと同じ顔してるし」
「……ッ!? 黙れッッッ!!!!!」
イーリエが激昂し、槍を構える。もう今にでも飛び掛かってしまいそうだったが、ゼロがなんとか右手でサインを送り彼女を抑えた。
「アハハハァ!! 面白いねェホントに」
「一応聞くが、何でこんな事してんだ?」
「へぇ、私たちに応える義理はあるとでも?」
口元だけしか見えない彼女の表情が大きく歪んだ気がした。その声には余裕が感じられる。その彼女の返答に対し、ゼロはこう返す。
「理由すら答えないなら、多少は手を出すかもしれない。とだけ言いたい」
彼は、手に持っている武器を強く握りなおす。足にも力が入ったように見えた。いつでも前に戦えるように。
……彼の顔は私の位置からは見る事が出来ない。いったい彼は今どんな思いなのだろう。私やイーリエと同じ『怒り』なのだろうか。――――それとも、違う何かを抱いているのだろうか。
「理由なんて一つ。これが仕事……いや、『使命』だから」
「…………え」
「他の大地に足を踏み入れ、そこを皇帝の物とし、奪えるものは全て奪い、帝国の偉業を知らしめる。
アンタたちのような他国の愚民は帝国の偉業を『悪行』だと言うけれど、それでも良いの。どっちみち帝国を恐れて怖れて畏れてくれるのなら、大成功だものッ!!!」
アハハハハハッと高らかに笑う。彼女の言い草は、自分たちは本当に何も間違っていないと確信しているものだ。
なんとなく私は感じていたが、やっぱり分かり合えないんだろう。このヴェル帝国という存在とは。国ぐるみでこんな事を…………いや証拠はないが、彼女たちがこのような活動が長く出来ていることを踏まえると黙認ぐらいは間違いなくしているだろう。
なおさら、許せなくなってきた。
「黙れよッ!!! 何が大成功だ何が偉業だ!! そんなの、アルルさんが報われないじゃん――――――」
イーリエの怒号が歪な高笑いと共鳴する。もう我慢の限界だろう。その声色は本当に元の彼女の面影はない。
不意にイーリエは、持っていた鉄槍で自分をずっと静止していたゼロに向かって振るう。邪魔だと言わんばかりに。
「うあぁぁぁぁああああ――――――」
そのイーリエの行いはあまりにも唐突で、私も一体彼女が何をしているのか分からなかった。
だけど次の瞬間、彼女は――――イーリエは鳥の滑空のような素早さで正面へ距離を詰めたのだ。
目で追った時にはもう既にイーリエはあの少女の前に居た。周りの部下らしき白甲冑を着た騎士連中も反応出来ていないッ!!! 人は、怒りでここまで強くなれるのか!! 私も瞬時に魔法を構える。
「な…………」
主犯格の少女の反応も鈍いように見える。これなら本当に貫けるかもしれない。
「食らえッ!!!!!!! このクソ女が!!!!!!」
イーリエは姿勢を低く、力をいっぱい込めれる体勢ですぐさま光のような速さで鉄槍で貫いた。
「な、な、な、な」
ああ、私は――――そしてイーリエはもっと周りの異常に気を配るべきだったんだ。リーダーが殺されようとしているのに何も動こうとしない周りの連中、何か諦めたかのように何もしないゼロ。そして――――――
「なぁぁぁぁぁぁぁあんちゃってェェェエ!!!」
貫こうとした瞬間に既に動いていた少女の動きに。気を配るべきだったんだ。
イーリエが貫いたのは、
そして明らかに主犯格の少女は『これからのイーリエの動きを知っていた』かのような動きだったと私の視点からは断言出来る。
「――――は」
イーリエはゆっくりと少女の方へと、身体ごと振り向こうとする。ついさっきまでの殺意は何処へ消えたのか。そこに居たのはいつもの、出会った時のイーリエになっていた。
少女はイーリエが振り返りきる直前に左手でイーリエの首を掴み――――――
「浄化」
いつの間にか右手に持っていたレイピアで、振り返ったイーリエの左目を貫いた。
◇◇◇
「イーリエ!!!!!!!!!!!!!」
つい大声で名前を呼んでしまう。だが、もうそれには何の意味も持たなかった。
まだ生きているイーリエは痛みに耐えられずもがいて叫ぶ。しかし、もがかれても微動だにしない少女はレイピアを少しだけ引き抜くと、角度を少し上向きにしてまた刺して――――――刺して刺して刺して刺した。もう左目の眼球は原形を留めておらず、『穴』からは赤黒いゼリーのようなモノが漏れ出ている。
ぐちゅぐちゅぐちゅ……というような音が聞こえてきそうなくらいに少女はイーリエの脳を、煌びやかに輝くレイピアでかき混ぜる。イーリエの顔には生気は無かった。脳を破壊されたことによって口には泡が出て、無事だったはずの右目はあらぬ方向を向き、レイピアが勢いよく引き抜かれると、イーリエは人形のようにバタリと…………。
え? 嘘でしょ。
「し、死ん…………」
「その通り!! この子は死にました!!! 私を殺そうとしたから!!! バカだねぇ!! アッハハハハ!!!!」
「ああ、えぁ、うああああぁ…………」
視界が暗く、眩しく、揺らぎ、歪む。そんな中でもあの女の悪意しか無い凶悪な笑みが口元から見える。
「…………そういえばまだ自己紹介、してませんね。私の名前はフィーリア。ヴェル帝国使節団の長、皆からは『盟主様』とか呼ばれてるんだ。よろしくねェ」
全身の力が抜けそうになる。それを必死に堪えて両足で立ち続ける。私の目には今倒すべき、呑気に自己紹介なんかしている『フィーリア』の姿だけが映る。
もう自制なんて出来なかった。アルルが、そしてイーリエが殺された。それも極めて残虐に、無慈悲に、理不尽に。
今日初めて会った人、仲良く話してた人、そんな二人の遺体を目にしてしまった私は、もう頭が真っ白だ。
ゼロは何も動かない。動揺した素振りも無い。まるであのイーリエの死が当然とでも言わんばかりに。
それに対しても苛立っていたのかもしれない。
「…………」
私は、手を伸ばす。フィーリアに向けて。
「フッ。何? 貴様はまだ何かしようというの?」
彼女がそんな事を言っている最中、私はもう『魔法』を撃つ準備を完了していた。
私は身体に身に着けたブレスレットやネックレスなどを媒体にして魔法を放つ。魔法を扱う際にイメージが湧きづらく不発しやすい欠点があるが、逆に不発する事なく放てるのなら予備動作等を悟られる事なく魔法を撃てるこの形式は実に合理的だと言える。
今なら、相手は油断して何も警戒していない。ついさっきのイーリエを……殺害した際の動きを踏まえるとかなり卓越とした身体能力を持っているフィーリアを殺すには、この不意打ちしか無い。
頼む、一度だけ……一度だけ奇跡を……ッ!!!
「食らえッ!!!!」
瞬間、私の手首に装着された魔道具が輝き、私の手のひらから全身が光に包まれた蛇のような何かを放った。
中位攻撃魔法『マジックミサイル』と呼ばれるコレは、思い通りに軌道を操る事が出来る魔力の塊を扱う。一般的には一発から二発まで一回に撃てる者が多いが、今は全力をこの一撃にこめるべきだ。なので、通常より魔力の濃度を高め殺傷力を上げる。加え、四発同時に放った。これなら彼女の取り巻きも大部分を排除出来る……。
「ぐ、ぐあぁッ!!!」
「グ……」
私の放った魔法は――――光の蛇のようなソレは使節団員の騎士たちを貫いていく。彼らの断末魔がそこら中から響き、血しぶきが飛び散る。
ああ、ヴェル帝国の人間は『人間だと思わない方が良い』とはよく言うが、どうしても心の中の良心、倫理観、人としてのリミッターが悲鳴を上げるのを感じる。人を殺めること自体はしてこなかった訳じゃない。記憶を失った後の冒険者家業でも、山賊をよく『対処』する仕事をやらされていたし。
でも、だからといって慣れる訳無い。
…………だからこそ当たり前のように人を殺していく目の前の彼女たちがより一層『人間ではない何か』に見えてくる。
そんな事を考えていたら、フィーリアの周りにいた取り巻きを倒す事が出来た。まだほんの数秒しか経っていない。そして当の本人は驚いた様子を見せつつも不気味な笑みを崩さない。
なんだか、嫌な予感がする。でももう止まる訳にはいかない。
私は、四本の光の蛇を一気にフィーリアに向け貫いた――――――
「…………え」
つ、つら、貫いたはず…………なのに。光の蛇――『マジックミサイル』はフィーリアの周囲に近づいた瞬間に散っていった!? 私のコントロールは特に問題ないはず…………。
「なんで」
「それはねェ…………帝国、いや皇帝陛下の偉大なる発明を知らない貴様の馬鹿さが招いた事態だよ」
ニタニタと、悪魔のような笑みを口元に浮かべながら彼女は近づいてくる。茫然としてその場から動けなくなってしまった私の目の前に歩いてくる。
「おい。それ以上近づくな」
「へぇ、まだいたんだ。貴様」
フィーリアに武器を向けるゼロ。それに対しても平然とした態度を貫くフィーリア。私は…………もう何も出来なくなっていた。決死の覚悟で放った私の魔法はものの見事に無駄と化したのだから。
「一旦取引の話をしないか? …………一番際世にも言ったように俺たちはあくまでも探し物の為にこの村を訪れただけだ。お前たちと殺し合うつもりは俺には無いし、殺し合う事による利益も互いに存在しない……だろ?」
「でもそちらのエルフさんは私の大切な同志をいっぱい殺してくれたワケだけどォ? 今すぐにでも貴様たち二人とも処罰してやっても良いんだ・け・ど?」
明らかにフィーリアの声色が険しくなる。じ、自分のせいでゼロまで巻き込んでしまった。いくら許せないとしてももう少し行動を気を付けるべきだった。イーリエの持つフィーリアへの怒りが、私に伝播したかのような感覚を覚える。もっと、自分を制御するべきだった。
でも、だとしても、彼の『お前たちと殺し合うつもりは俺には無い』という言葉に凄く引っかかってしまう。思えば、アルルの死体を見て以降の彼は何もしていない。イーリエを多少抑えていたものの、今思えば強い意志で止めていなかったように見えた。イーリエが死んでも彼は、動揺しているようには見えない。
「確かにコイツがいきなり魔法……っぽいアレを使った時にはかなり度肝を抜かれたな。なにせ初めて魔法を見たモノで。
でもよ、お前は確かに魔法ってのが効かないみたいだしコイツは確かにお前に敵わずに殺されるかもしれない。だが、俺はどうだ? 俺は未だにこの武器の真髄を発揮していない」
彼はそう言い放つと、フィーリアに向けたままにしていたあの鞘に収まったままの剣のような珍妙な武器を揺らす。言われてみれば私もあの武器の事を何も知らない。
そんな彼の言葉を聞いてもなお怪訝な様子のフィーリアは、私ではなく彼にレイピアを向けた。
「私はね、皇帝陛下直々に引き取ってくれて育てて貰えた孤児なの。どうして拾って貰えたのか、それは…………『人を殺す才能』ってヤツが私にあったからだよ。『ギフト』って呼んでたかな、まぁどうだって良いけどねェ」
「どうりで動きに無駄が無い訳だ。だが、俺もお前に負けてはいない。ニューシティって場所から俺は来た。どうせお前も知らないんだろう」
フィーリアは答えこそしなかったが、それこそが答えだと気づく。
「…………そこはホントに糞みたいな場所だった。ここら辺もかなりヤバイのは今日で分かったが、俺はもう二十年近くの間一人で戦い続けてきた。お前には才能が、俺には経験があるって訳だ」
「フン、それに加えてその武器の差も考えないといけないってコトかァ。なるほどね」
周囲にまた彼女の部下であろう騎士が集まってくる。一体どこからこんな人数の人が湧いてくるんだろうか。すっかりまた包囲されてしまった私たちだったが、フィーリアの一声でソレは解かれた。
「分かったわ。不確定要素が多すぎる相手と戦う理由は無い。それは確かにそうだね…………。おい!!! 総員撤収!!!」
彼女の指示によりぞろぞろと騎士たちは村を後にしていく。フィーリアも去っていく。その瞬間、こんな呟きが聞こえた気がした。
「こんなところで止まる訳に……お姉ちゃんにまた…………」
◇◇◇
「……あ」
彼らが去り火もある程度落ち着いたこのシオン村には、もう私とゼロと、全身が炭となったアルルと左目が破裂し動かなくなったイーリエしかいない。
遅れてやってくる感情の荒波。怒り、悲しみ、後悔、それらに色があるとするならもう私の心は灰色になってしまっているだろう。
ふと、彼に対する疑問が口に出る。
「なんで」
「あ?」
「なんで、そんな平気そうなの」
「…………」
座り込んでいた私だったが、立ち上がって彼の両肩を掴んだ。
「どうしてそんなに平気そうにしてるの!? あんな、あんな惨い殺され方を見たのに!! なんで!?」
「もう慣れたからだ」
「は、はぁ?」
あっけない彼の回答は、私の感情を逆撫でするには十分な起爆剤だった。行き場のない怒りが徐々に、ゼロの方へと向いてしまう。
「どうしてイーリエをもっと強く止めなかったの? どうしてその武器を使わなかったの? どうして! どうしてフィーリアと渡り合える実力があるなら! 私が魔法を使ったタイミングで斬りかからなかったの!?」
それもこれも全部、彼のせいではない。そんなのは分かってる。こんな無茶苦茶な事を言う自分に、ゼロは怒るんだろうなぁと思ってた。けど、実際に返ってきたのは――――――
「俺がアイツに勝てないからだ」
「…………え?」
「あの時にフィーリアって女に言ったのは大体ハッタリだ。俺のこの借り物の力を使えば確かに彼女を殺せたかもしれない。
だが、あの化け物じみた身体能力や未来を読んでいたかのような判断能力に差があった。『才能』とやらもあるのかもしれないが、アレは…………お前が言っていたマナによる身体強化ってやつじゃないか?」
「う、うん。そうだと思う……皇帝陛下の直々にどうのって言ってたし」
「――――――俺も似たような事はしているんだ。
身体強化施術と言って…………まぁ、ここら辺じゃ無いのだろうが。ともかくソレで俺は身体をある程度強くしている。だが、それは『人間である範囲内』での強化であって、あのマナによる強化は……言ってしまえば『人間である範囲を超えた』強化なんだろうな」
不意に彼は膝から崩れる。ついさっきまでの私のように。その姿からは、私よりも大きな絶望感に染まっているかのように見えた。
「俺はずっと、本当にずっと戦い続けた。それは強くなるため。アイツの意志を果たす為に、必要だった。けど、まだ届かないって事なんだな…………」
しばらくの間、一言も喋らない時間が続く。私は、ゼロの事を何も知らない。何故アルルたちが死んだ時よりもフィーリアの強さを思い知らされた今の方が彼の心に傷を負わせているのか、何も分からない。分かってあげられない。ただでさえ私は自分の事さえも一部分からないのだから。
やがて彼はおもむろに立ち上がる。
「行こう」
「え」
思わず間抜けな声が出てしまう、極度の緊張から脱却出来たのもあるのかもしれないが彼の切り替えの早さに驚いてしまったことの方が大きい。
もう彼にはつい先ほどまでの暗い雰囲気は無い。……………………明らかに彼との『経験』の差を感じた。年齢は私の方が圧倒的に高く、長く生きているはずなのに。
彼は私に向き合い、私の両肩を掴んできた。彼のその黄色の瞳には、私の……泣きじゃくった後のようにぐちゃぐちゃな表情をしている私の顔が映る。
「いや、こうして黙り込んでもしょうがない。死んじまったアイツらの為にも、今は前を向かないと」
「…………そうだね。まずは、私の記憶をなんとかして掘り起こしていかないと」
気が付いたら零れていた涙を拭き、私たちは進み続ける。例えどんな壁が立ちはだかっても進む。…………そこまでして取り戻したい記憶なのか、それは分からない。
でももうアルルやイーリエの事を考えると、後戻りなんて出来ないんだ。
「」
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