第12話「縁は異なもの味なもの」 Aパート
1980年(昭和55年)11月11日、火曜日。
代休を挟んだ週明けの学校。
時間は食事も済んだお昼休み。
「雨滝妹さま(=砂姫乃)を好きになるなんて国家の陰謀んぼ!」
「砂姫乃さまぁ~! んぼっ!」
「きゃーっ!」
教室に飛び込み、砂姫乃は友人に駆け寄り救いを求める。
「真美! 愛子! 助けてぇ~っ!」
「ビッカーてのを秘密にしてた罰じゃ。ケケケ!」
「そうよ。インボーと付き合えばいいのよ」
「そ、そんなぁ~」
「砂姫乃さまぁ~! んぼっんぼっ!」
「おぉ~たぁ~すぅ~けぇ~!」
真美と愛子が「クスクス」楽しそうに、でもちょっと意地悪を含めて笑い、教室全体が愉快な雰囲気に包まれる。
「砂姫乃さまぁ~! んぼ~っ!」
体育館裏に命からがら逃げてきた砂姫乃は、そこで同じように騒動から逃れてきた雪隠せちなとバッタリ。
「死ぬかと思ったよ・・・あっ!」
「参りましたわ・・・」
「雪隠さんも?」
「はい。ほとほと困ってしまいました。やはり秘密は秘密のままの方がいいと実感します」
「そぉだねぇ・・・」
「けれど近衛初穂さんはあれから大人気で、ファンクラブもできたみたいです。ご覧ください」
窓の隙間から館内を覗く。
体育館に集まっている初穂と彼女のファンたちが集会を開いている様子。
「ムーチョ! ムーチョ!」
「ソレッ! 初穂のムチは痛いヨ!」
「鞭は誰のでも痛いですわ」
雪隠が冷静に斬り込む。
砂姫乃は眉間にしわをよせ、ある種、未知の世界を垣間見る。
「いや、でも、みんな幸せそうだよぅ・・・」
ファンたちは叫ぶ。
「キャ~ッ! ぶって~! しばいて~!」
意外とマゾっ気の多い男女はいるらしい。
いや、ホントに鞭でぶったり、しばいたりはしていない(らしい)が。
「ひゃあ~ビックリだねぇ!」
砂姫乃が驚く。
2人はそそくさとその場から立ち去る。
「ところで砂歌音さんは? 退院後いかがかしら?」
「うん。ありがとう。お姉ちゃんは元気にしてるよ。まだ毎日検査だらけで忙しいけど、来週からは来られるんじゃないかな。それまでに雪隠さん、うちに遊びにおいでよ。お姉ちゃんも喜ぶよ!」
「じ、じゃあ・・・寄せさせて頂きますわ」
「うん。おいでおいで!」
木漏れ陽が温かく心地よい。
小春日和のおてんとさんがサンサンと輝いている。
一方、こちらも昼下がりのアインザッツ邸。
相変わらず外界の明るさに反して屋敷内は薄暗い。
その一室。
「みんなが心配してる・・・。おじさまには、後悔する時間も、後悔する未来もないって・・・」
書斎にやって来たペニーが小さく震えながら涙声で訴える。
「おじさまはペニーを残して死んでしまうのですか・・・?」
老博士が立ち上がり、目の高さを合わせしゃがむ。
両肩をしっかり抱く。
目と目がお互いをじっと見詰める。
「誤解を招いたようだな」
皺の多い右手が不安げな小さな頭を撫でる。
「意地悪な言い回しをしてしまい心配を掛けた。安心しなさい。後悔する時間がないというのは、反省したからそんな時間は存在しないという意味。後悔する未来がないというのは、反省したからそんな未来は来ないという意味だ」
ペニーは細やかな瞬きを数度繰り返すと、涙が滲む両の目を左の手首内側で拭い、鼻を「すん」と小さく鳴らす。
「ペニー。私が悪かった。すまぬ。いずれにせよ、わしはまだまだ死ぬつもりはない」
そう言いながらアインザッツはスッと立って、こんなことを言う。
「・・・しかし屋敷の皆にはそう伝えるが、ナーサやオットモットたちには黙っておこう。その方が面白い」
老紳士が悪戯好きな少年のように微笑みを返す。
瞳を潤ませたペニーにもやっと笑顔が戻る。
2人の落ち着いた様子を見届けると、出窓の黒猫センチネルは再び眠りに就く。
この日より、悪人パイオビッカーの事件は一件も起こらず、平和に何事もなく数日が過ぎるのであった。
そして、11月も半ばを迎えた週末15日、土曜日、
「頭交換はぶったまげましたが、落下海域をかなり絞り込めたのは鳥男のお陰ですね、斑鳩警部」
天頂に輝く眩しい太陽の光を浴びつつ、波余城海岸を臨むテラスでヒゲダンディーと斑鳩がタバコの煙を空に向けて「ふぅー」っと吹く。
「まぁな。しかしアイツは反省の色がない。しばらく牢屋ん中だな」
「しかし“布”が発見された日にまたカゴの中に出戻りとは、鳥男にはまさにバーッドエンドですね。ふふ」
「鳥だけにな。クワックワックワッ!」
「・・・け、警部! 鳥がまだ抜けてませんよ?!」
「グワッ?」
そう。12時間ほど前になるが、反省の色のない鳥羽上は再逮捕されたのだ。
目隠しをされ、斑鳩らパボ課警察官に連行、再投獄となった。
「約束ガ チガウヨー!」
「約束を破ったのはお前だろ! もうちと反省してこい!」
斑鳩とヒゲダンディーがテラスから戻ってくる。
タイミングよく捜索チーム全員が食堂に集まる。
互いの頑張りを、功績を称え合うために。
「んでも、やっぱり見付けられたのはスクリュー姐さんの能力のお陰っス」
「お水がメイドさんになるって、かわいい能力ですね!」
憩子が感動しているのはスクリュー
それは、淡水・海水を問わず水を人型女性メイド(メイド・イン・オーシャン)に変身させ会話を可能にする。
つまり、水から直接話を聴き、情報を得ることができるのだ。
「トークの波に、
パイオボイニャー1号の落下海域にて、海上保安庁の巡視船の甲板に2人のシルエット。
あれはスクリュー波海と、何故か田舎娘訛りのメイド・イン・オーシャン。
「波海奥様」
「ん?」
「
「忙しいところごめんなさいね。聞きたいことがあるの」
「どんぞ。何なりとお尋ねくだせぇまし」
「こういう布を探しているの。1年ぐらい前だったかな、海に沈んだんだけど」
「・・・ほんだらば、しばしお待ちくだせぇ。思い
こうしてスクリュー波海は
パボ課の施設内食堂。
窓からは眩い陽光が射し込む。
「海ちゃんが落ちた“布”を覚えててくれて助かったわ」
波海がほっとしてホットミルクをぐいっと飲み干す。
チーム全員が深く何度もうなずき、ヒゲダンディーが斑鳩に聞く。
「それで警部、“布”の方は?」
「全部持ってったよ、エライさん方が」
計画が無事に完遂できたことにチームが安堵する。
が、男子高校生がふとこぼす。
「これでここも解散っスね」
「あら。距離計測で数学ガチガチのコウイチくんでも寂しいの?」
スクリューが年下を冷やかす。
「そりゃ寂しいっス。短い間だったスけど。充実した毎日だったっス」
「ごめんなさい、私も寂しいです・・・」
憩子も。
「実は僕もだ」
ヒゲダンディーも。
「・・・本当は私もよ」
実は女子プロレスラーも同感だったり。
斑鳩がパンパン手を叩いて元気付ける。
「何だ何だみんな! 今生の別れじゃないんだ。また会いたきゃ会えばいいじゃないか!」
「そうっスけど・・・」
「これだけの充実感、満足感、達成感は仕事じゃ得られなかったなァ」
「じゃあさ、みんな、今度、私の試合を観に来てよ!」
スクリュー波海が女子プロレス観戦に招待する。
「お。いいね」
「行くっス!」
「行きます! 私、絶対行きます!」
・・・そんな四方方憩子が自宅リビングで物思いに耽っていると、母親が買い物から戻ってくる。
ひと通りの迎えの挨拶を交わすと、憩子は特に深い考えも無しにふっと話を振ってみる。
「・・・ママ、私が超能力を持ってたらどう思う?」
「
買い物してきた食材を冷蔵庫に入れ終わる。
母親はイスに座りながらプリンを2つ、テーブルに置く。
「ママ、今から手品を見せてあげるよ」
憩子は席を立ち、鳥かごの文鳥ピーちゃんのフンを嗅ぐ。
母親は娘が取っている行動の意味が分からない。
憩子の髪が輝く。
「ママ、お昼にプリンとホイップクリームとフルーツの缶詰をカステラに乗せて食べたでしょ!」
「あら! どうして分かったの?」
「あのね。ママ。これが私の手品・・・。
「あらあらあら! テレビで言ってた・・・スゴイわ! 憩ちゃん! スゴイスゴイ!」
同じ頃。こちらは実家に電話を入れる漁火夜風。
「もしもし。お母さん、私。そっちは大丈夫?」
「こっちは大丈夫。お父さんも元気よ。さっきから新聞を読んでるわ。そちらの街は大変だったみたいね。夜風さんはどうなの?」
「うん。大丈夫よ。それでお母さん、あのあとパイオビッカーの話は聞いた?」
「ええ。そうそう、夜風さん。ほら。
「マシン
「そうなの。マシン太くん、小6の。あの子がそのナントカビッカーだったって」
「えっ、それで?」
「どんな機械とでも心が通うらしくて。機械と友達になれるんだって」
「凄いじゃない!」
「そうなの! だから機械修理が得意って大繁盛! 素敵よねぇ・・・」
「うん。素敵だわね・・・」
パイオビッカー夜風は、ここがチャンスとばかり意を決する。
「・・・お母さん、あのね。大事な話があるの、・・・ふたつ」
「? なぁに、かしこまって・・・?」
「実は・・・」
「・・・うん?」
暫しの沈黙。
電話では見えないが夜風は緊張で瞳が潤んできた。
だが思い切った告白の覚悟を決める。
自分の両親なら理解してくれるに違いない、と・・・。
「実はね。・・・私、パイオビッカーなの」
「パイオ・・・まぁ! まぁまぁ! お父さん大変よ!」
「それとね。好きな人が出来たの」
「好きな・・・まぁ! まぁまぁ! お父さん大変よ!」
「今からそっちに行くわ」
「い、今から? 今から? じゃ、じゃあ、夜になるわね」
「ううん。すぐに行けるの。すぐに・・・」
自然と涙を流していた夜風がすっと立ち上がり、テーブルに座っている正装の豊岡の手を取る。
豊岡も立ち上がる。
女子高校生が会社員のネクタイをきゅっと閉め直し整える。
「それじゃ夜風さん、行きましょう!」
「はい・・・」
秋の終わりともなると陽が傾くのも早い。
遠く青かった空模様も、早々に淡いオレンジ色に染まり、景色の陰影を際立たせる。
ありふれた夕方の風景。
どこにでも見掛けるごく普通の一軒家に天倉寺の表札。
明日花は半年ぶりぐらいに実家に帰る。
一人娘として父親と正面から向き合うつもりだったのだ。
しかし・・・。
しかし玄関をくぐってから十数分後、明日花が泣きながら飛び出してくる。
心配で待っていたナーサが泣きじゃくる明日花を抱き締める。
一縷の希望を抱いてはいたがそれも叶わなかった。
娘が家出したほど辛かった気持ちを、あの父親は汲めなかった。
人は簡単に変わったりしない。
悪いのは、あの父親の子として生まれた運命なのか。
ナーサも頬を濡らす。
町の午後。
天泣の冷たい時雨が通り過ぎる。
総理官邸に呼び出された斑鳩警部と坂本警部、それと塚前田警視。
雨滝砂姫乃と雪隠せちなを含む3人のパイオビッカーの活躍により、民衆が特殊な能力者に対して意識を変化させ、好転しつつあることに関してらしいが・・・。
「まぁ、この1年あまり、紆余曲折あったが、結果オーライだな」
「すみません朱鷺羽総理。寛大な措置、痛み入ります。ありがとうございます」
塚前田が頭を下げる。
「いやいや。これで正解なんだよ、正解。なぁ。いっそ法律も変えちまうか!」
あっけらかん~と総理大臣が笑う。
戸惑う警察官3人。
「いや。そこまでは・・・どうでしょう?」
森に佇むアインザッツの古屋敷。
前兆もなく呼び出しベルが「カランコロン」鳴る。
「はいはいはいはい」
梅子が応対に走る。
玄関の扉を開くと、まったく見知らぬ背の低い年配の男が立っている。
「突然お邪魔します・・・」
男はおもむろに使い古したジャンパーの胸元をゴソゴソまさぐる。
梅子が構え、戦闘体勢に入る。
懐から出てきたのは真っ黒な汚れた手帳と短い鉛筆。
男はそのちびた鉛筆の先をペロッと舐める。
梅子は一歩退き身構える。
男が上目使いで口を開く。
「・・・毎売新聞ですが、1ヶ月ぶん無料にしますんで取ってくれまへんかね? ビール券も付けま」
「帰れ!」
梅子が怒鳴る。
雨滝家の夕食時間。
この1週間、退院したにも関わらず砂歌音の検査や、風理雄の出張取材だのの毎日でやっと落ち着いて家族4人が揃う。
「それにしても、砂姫乃がパイオビッカーだったなんてね。しかも人助けまでしたって。やるわねぇ」
「もぉ~。その話はいいよぅ~。照れくさいしぃ~」
「いやいや。よくやった! パパも誇らしいぞ!」
「そう言うパパもパイオビッカーだって言うからびっくりだわ。ママは前から知ってたの?」
「知らなかったわよ! 砂姫乃と風理雄さんが超能力者なんて!」
「ごめんねママ、お姉ちゃん、何も言えなくて黙ってて」
「事情もあるみたいだから仕方ないわね。いいよいいよ。パパは何だか分からないけど秘密が多いわよね」
「すまん!」
4人は食事を頂く。久しぶりの華やかな食卓である。
ところが食事も終わりかけの頃、風理雄が突然こんなことを言い出した。
「・・・ところでママ、砂歌音、砂姫乃。相談があるんだ」
「何なの風理雄さん?」
「どうしたの? パパ」
「どしたの?」
「・・・実は。コホン」
咳払いで気合いを入れる。
「・・・実は、パパにもう1人、娘が出来たんだ。いや、出来そう、かな? 砂姫乃も知ってる娘さんだよ。明日花って女の子なんだ」
「パパ! 明日花って?!」
砂姫乃が驚いて思わず立ち上がる。
「隠し子かと思ったわ」
ママと砂歌音が顔を見合わせ声を揃える。
「いやいや。隠し子だなんて・・・」
「ママ、お姉ちゃん。明日花はね、あたしの友達でパイオビッカーなんだけど、」
「砂姫乃。パパから話すよ。実は・・・」
風理雄は妻と長女に、明日花の身の上を簡単に説明する。
日本政府所有、アインザッツ所有、個人所有、公的機関所有、海底からの回収分等。
“パイオボイニャーの布”全98枚は、パボ課の地下施設内にすべて搬入される。
そして待ち構えていた世界各国からの最高の頭脳を持つ専門家たち、およそ120名が繋ぎ合わせ作業に取り組む。
もちろん「定時になったから帰ろ」などと言う腑抜けた人間はいない。
こうして着々と、且つ確実に縫合作業は進行していった。
翌16日、日曜日、
アインザッツ邸から続く森の
雨滝風理雄とエーテル・ソ・アインザッツが木漏れ日の下、散歩をしている。
木々が風にそよぎ、小鳥が羽ばたき歌う。
1千年、1万年、それより前から延々と続く、人間が手を加えない自然の風景だ。
隣を歩く風理雄に老博士がいきなり語りかける。
「昔、君から手紙を貰ったな」
「えぇ。あの頃はまだ子供でした」
「実を言うとな、数少ないファンレターだったのだよ」
「そうだと思います」
ふたりして笑う。
しばらく行くと森が途切れ、小さな日向に出る。
「あなたのお陰で今の僕がいるんです」
「小説家兼翻訳家、だったな」
「はい。博士と同じで売れてませんけど」
「言いおるわ。しかし人生とは面白い。詩人として売れなんだからこうしてNASAの連中や君とも友人になれたのだからな」
「人生って面白いです。地図の無い旅とはよく言ったものです」
「うむ。振り返った時に、良い旅だったと、そう思いたいものだ。・・・まぁ、旅の無い地図もまた良いものだがな」
立ち止まり、ふたりは空を仰ぐ。
日曜の午後は、人を淋しい旅人にさせる。
「ミスター雨滝。地球は美しいな・・・」
「はい・・・」
はぐれ雲が気紛れに遊ぶ。
自然に口に出そうになった言葉を老博士は飲み込む。
(そろそろ知らない景色でも眺めに行ってみるとするか・・・)
日本をメインに据え、各国首脳がテレビ電話で緊急会議を行なっている。
「世界中から暗号は言うに及ばず、文字やら~言語やら~翻訳やら~クイズやら~なぞなぞやら~駄洒落やら~とんちやら~何やら~カンやら~の国境を越えた学者だの~研究者だの~プロフェッショナルだの~エキスパートだの~マニアだの~がこんなにも多く集まっているのに、一文、いや、一語、全く解読できないとは何事だッ!」
手紙の内容を早く知りたい総理大臣/朱鷺羽射矢龍が業を煮やす。
アメリカ大統領/ワシガー・ダイトリオンもその憤りに同調。
とうとう、こう言い放つ。
「コウなったラ、恥も外聞もナイ! 解カラナイよりマシダ! 世界中に公開スル! 地球人全員の共通の課題とシテ!」
首脳陣も賛同する。
「ソウダ! ソレデイイ! ソレガイイ!」
その夜、19時00分(日本時間)の時報と共に、世界中のテレビとラジオの全チャンネルに臨時ニュース放送が何の前触れもなく突然に始まる。
朱鷺羽射矢龍内閣総理大臣から全世界に向けて、衛星放送での緊急記者会見である。
「全世界の皆様、突然、申し訳ございません。実は、とてもとても重要な報告が2つ、あります。良い方と悪い方、どちらを先にお聞きになりたいでしょうか?」
「良い方で」
「分かりました。では先ず、良い報告から話しましょう」
朱鷺羽総理が真正面のメインカメラをジッと見据える。
「アメリカの人工衛星が、地球外知的生命体、いわゆる宇宙人からのメッセージ・・・手紙を持って帰りました。これが良い報告です」
場内が騒然となる。
「・・・で、では、悪い方は?」
「はい。その手紙を受け取ったまでは良かったのですが、我々政府機関や専門家組織ではついに、ぜんぜん解読できませんでした! 読めなかった! 完全に行き詰まりであります! ・・・これが悪い報告です」
その場にいた記者団から溜め息とざわめきが流れる。
おそらくカメラ、マイクの向こうの視聴者や聴取者たちも同じだろうことは容易に想像がつく。
「・・・そこで、今さら恥ずかしながら、世界中の皆様のお力を貸して頂きたいのです! よろしくお願いします! よろしくお願い致します!」
総理大臣が頭を下げる。
「では、ここからはアメリカ航空宇宙局NASAの長官に、詳しい経緯を話して頂きます。エライヒト博士、お願いします」
総理に代わり、オットモット・エライヒト長官が登壇する。
「ども! コンバンワ! ご紹介に預かりました、ワタクシ、オットモット博士です! アメリカ大統領に代わり・・・、ま、そりゃイイわ。では何よりまず先に、問題の手紙、その画像をノーカットで全て、見てもらいましょう! VTRスタート!」
こうして“パイオボイニャーの布”のすべてを繋ぎ合わせた精緻なカラー画像が、その夜、テレビで。
翌朝には新聞、小学生向け新聞、雑誌、街角ポスター、チラシ、回覧板等において一般公開されることとなった。
1980年(昭和55年)11月16日、日曜日、
地球に住む全人類が地球外知的生命体の存在を知った日である。
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