第二二話 熱心に馬術の習得①
食事の作法や人前での振る舞いをアメリアから学んだり、ルオと一緒に武術や魔眼の鍛錬を重ねる日が続く。そして、今日は前々から乗りたいと思っていた馬に乗れる日だ。
「馬は俺達にとって必須の移動や輸送手段なんですねぇ。まぁ、友達といっても過言ではないでしょ」
軍衣を着た私は楕円形の競馬場で副騎士団長のリオンから馬に乗るにあたっての心構えや騎士にとって馬がどれほど大事な存在であるかを教わっていた。また、馬を連れてきている女騎士バーバラの姿も見える。
「友達を乗り物扱いするのって変だね」
「ま、まぁそこまで細かく考えている人はいないんじゃない。馬も俺達を信頼して乗せてくれますし」
リオンは私の言葉にたじろぐ。
「ねぇバーバラ、私が乗る馬って、その子かな?」
最近はルオと一緒に訓練場に行くことが多いから騎士達とだいぶん打ち明けて、砕けた喋りができようになっていた。
「ええ、この小柄な馬です。小さいながらも品種改良によって力強く重荷に耐えることができるようになっています」
バーバラは馬と繋がっている手綱を私に渡す。
体長が一五〇センチの馬は栗毛でつぶらな黒い瞳が可愛かった。
「もう乗っていいかな?」
ワクワクしながらバーバラに聞くと、もちろんですと言葉を返してくれる。私は馬の首を撫でて、よろしくねと言い鐙に足を乗せて鞍に腰を下ろす。
「ちょっと、怖いかも」
足が地についていないせいか、浮遊感を覚える。
「練習あるのみですよ。閣下もよく気晴らしに馬に乗っているので、また一緒にいる時間が増えますよ」
私がルオともっと一緒にいたいみたいな言い方してる。実際そうなんだけど人に言われると気恥ずかしい。
「バーバラ、リオンがまた変なこと言わないように口を塞いどいて」
「かしこまりました」
「ええっ、ちょ、俺、副騎士団長だから――」
バーバラは問答無用でリオンの口を手で覆った。地位は違えど、バーバラはリオンと同期だから遠慮がない。
数日後、私はルオを乗馬に誘った。その頃には馬上でバランスをとることもできて馬を歩かせることもできていた。
遠くからバーバラが見守っている中、乗馬しているルオの横で馬に乗る。彼は白毛の馬に乗っていて、容姿と相まって、王族のような出で立ちだった。
他愛ない話をしながら、競馬場周りにある道を歩く。ここは馬を歩かせるための道でもある。
「もっとスピード出せないのか?」
「今はこれが限界かな」
「そうか」
「ルオはもっとスピード出したいの?」
私の問いにルオはそうだな、と言って思案顔を浮かべる。
「やはり、自由自在に馬を動かしているときが解放感と満足感が得られるからな」
「そっかあ……」
じゃあ、もしかしたらルオは私といて楽しくないのかもしれない。気を遣って私に合わせているに違いない。
「誘っといてなんだけど、私、もうちょっと乗馬を練習するね」
私は上半身を使って手綱を引っ張って馬を止める。
「急にどうした」
少し前に進んでいたルオも馬を止める。
「馬を走らすことができないから迷惑かけてるなって思って」
「俺は別にレイラと話せれば……いや、なんでもない、せいぜい俺を参考にするんだな」
ルオは高慢な態度で馬を走らせる。彼の姿はあっという間に豆粒サイズになっていた。
「速っ……あと、なんかムカつくな」
ルオが最初に言いかけた言葉を気にしつつ、彼を見返したい一心で乗馬の訓練を中心とする日々を送った。
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