第一九話 武器の選定②
――宿舎の女性用更衣室の鏡前にて。
「どうかな?」
私は青を基調としたスカートタイプの軍服を着ていた。意外にも可愛らしいデザインだ。
「お似合いです。凄く可愛い……あっ」
バーバラさんは口を片手で覆ってた。どうやら、つい口を滑らしてしまったようだ。
「申し訳ありません、出過ぎたことを言ってしまいました」
「そんなことないよ、嬉しかったです」
私は素直に思ったことを伝えると、バーバラさんはほっとした顔を見せてくれた。
それから、訓練を体験しに、宿舎から出て室内訓練場と名付けられた建物の中に入ったけど、目を丸くしてしまう光景がそこにはあった。
「ぐああああああ!」
「ぬああああああ!」
絶叫して宙を舞う二人の騎士は床に体を打ち付けて、ぐったりとしていた。死んでないと思う。
次に目に入ったのは青を基調としたズボンタイプの軍衣を着たルオと茶髪センター分けの男性騎士だ。二人はロングソードの模造品を打ち合っていた。
「相変わらず、やりますねぇ」
茶髪の騎士は左右に振るわれるルオの武器を受け流す。
「お前もな。さすが騎士団副団長だな」
ルオは茶髪の騎士が突き出したロングソードを、背中を反らして避ける。
「お世辞はいいですって、なんせ俺らは三人がかりで閣下と戦っているんですから。まっ、二人はもうのびてしまいましたけど、ねっ!」
語尾を強めると共に茶髪の騎士は体を捻って、全力の横薙ぎをルオに食らわせようとした――
――キンッ!
室内に鋭い音が響く。なんと、ルオが武器の切っ先を当てるだけで、勢いのある横薙ぎを止めていた。
「いやぁ、化け物ですね……」
感嘆する茶髪の騎士。
そのとき、ふと、ルオと目があった――
「――あっ」
私は思わず声を漏らした。ルオが私と目線を合わせたまま、騎士に得物で頭を叩かれていた。
「勝った、皆勝ったぞ!」
茶髪の騎士は両手を上げて、先程、倒れた二人の騎士のところへと向かった。三人は無邪気にハイタッチしていた。
倒れていた騎士は喜色を浮かべ口を開く。
「いやぁ、閣下、お嫁さんに目を奪われてましたね」
「はっはっはっ」
彼らは悪戯っぽい笑みを浮かべると、茶髪の騎士は私を見て、納得した顔を浮かべる。
「あっ! そういうこと! 次回から閣下と手合わせするときはレイラ様に見学してもらおうかな」
騎士達は笑いあった。私の隣にいるバーバラさんは額に手を当てて溜息を吐いていた。
「お前ら……」
ルオはロングソードを握った拳をわなわなと震わせていた。
「命は欲しくないようだな」
ルオは模造品の武器に炎を纏わせたかと思えば、全身から炎を噴き出していた。
「撤退しろ!」
三人の男騎士は慌てて外へと飛び出そうとするが、ルオが床を蹴ると足裏から炎が噴射し、あっという間に三人の前に回り込む。
「さてと」
ルオは武器の切っ先で床を叩く。茶髪の騎士はいやぁー困ったなーと、諦観していた。
私のせいで騎士達が傷付けられるのは嫌なのでルオに注意しよう。
「ルーオ!」
「なんだ」
私はルオに詰め寄る。
「というかなんでこんなところにいるんだ。その恰好はなんだ」
「私も武術ってのを体験しようと思って、ルオみたいに色んな武器扱えるようになりたいし、私に色々教えてよ。それに騎士の皆をあんまり怖がらせたら駄目だよ」
「……まぁ……いいだろ。お前らレイラに感謝しろよ」
ルオは顕現させた炎を消して、部屋の中央へと私を誘う。騎士達はレイラ様ありがとうございますとか女神様に感謝とか大袈裟なことを言っていた。
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