第一八話 武器の選定①
訓練場の武器庫に案内された私はバーバラさんに様々な武器について説明してもらう。彼女は壁に飾ってある武器や木製のカゴの中に乱雑に入ってる武器を手に取って使い方や特徴を説明してくれた。
「――これが我々の標準装備であるロングソードです。長さ九〇センチ、重さ一・五キロとなっております」
バーバラさんは得物の柄を握って色んな角度で刃を見せてくれる。
「重そうだね」
好奇心が抑えられず私はカゴの中に入ったロングソードを持つ。
「おもっ」
「レ、レイラ様、危ないのでどうか元あった場所に戻してください」
ロングソードを持ち上げようとしたけど、重くてすぐに腕を下ろしてしまった。今までまともな食生活送ってこなかったせいか、自分の筋力が低いことを再認識した。
バーバラさんが焦っているので早く武器を元の場所に戻そう。
「わわっ」
ロングソードをカゴに戻すために持ち上げようとすると、バランスを崩して後ずさりする。
「レイラ様ーーーーー!」
大声を出したバーバラさんは急いで私の背中を支える。
大袈裟すぎるよ。
「貴方様に何かあれば、私は皆に顔向けができません!」
「だ、大丈夫だから、ごめんね心配させて」
鬼気迫るバーバラさんにたじろいでしまった。でも、私が不用意な行動をしたせいだから反省しよう。
「すみません。焦ってしまって……ところで今、説明した武器の中でお気に入りのものはありましたか?」
「ん~特にないかな、どれも私に扱えなさそうだし。使えたらどれもかっこいいなとは思うんだけど……あ! ルオが使っている短剣なら扱えそうかな、軽そうだし」
「短剣は護身用の定番ですね。短剣術を身に着ければ大いに役立つと思います。レイラ様はどちらがお好みでしょうか」
バーバラさんは二つの短剣を手に一つずつ持つ。
一つはルオが使っていた短剣――両刃がついたもの。
もう一つは先端が鋭く尖ったものだ。
「やっぱり両刃の短剣かな、この細い方は切れ味がなさそうなんだけど使えるの?」
「さすがの洞察力ですね。切れ味は確かにありません」
なんか褒められた。
「細い短剣には刃が付いておらず、刺突のみに特化した武器です。鎖帷子を装備している敵には斬撃が効かないので刺突に特化した短剣が作られたのです。これをスティレットといい、もう一つはダガーと呼びます」
勉強になるなー。護身用にどっちも持った方がいいような気もしてきた。
斬撃が効かなかったらすぐに武器を切り替えてブスッと刺す感じで戦うと達人っぽくていいかも。でもその場合、スティレットだけ持っていればわざわざ、ダガーを斬りつけて効かないという事態に陥ることもなさそう。
私はじっと見てきているバーバラさんの視線に気づく。
「な、なにかな?」
「申し訳ありません。何やら真剣な顔で熟考していたので、よっぽど武器に興味がおありかと思いました」
どんな風に戦えばかっこいいのかなという、バカっぽいことを考えていただけに気まずい。
「興味というか強くなりたいと思っているかな」
「さすがです。その戦いへの渇望、ルオ様譲りです」
そんな大仰な言い方をされると、恥ずかしい。
「そういえば、ルオって短剣が得意なの?」
「ルオ様はあらゆる武器に精通しています。そもそもレッド家は生まれつき筋肉の密度が高く、人並外れた怪力の持ち主です。貴族の矜持を保つために得意分野を磨き上げて権威を誇示する努力をしておられます。ルオ様は短剣が得意と言うより短剣を好んでいますね、幾つも隠し持てるうえに急所を突けば致命傷を負わせれるので短剣をコートの下に幾つか仕込んでいると聞きます」
「暗殺者じゃん……公爵のやることじゃないよ」
ルオと顔を会わせたら、歩く人間凶器とでも呼んであげよう。
「強すぎるが故にルオ様は多くのことを成そうとするのです。我々では想像が付かない重荷を背負っているはずです、レイラ様は彼の心の支えになってください」
私は静かに頷く。身も心も強そうなルオに支えが必要のかな? と思ってしまったけど、せめて彼の足手まといにはならないでおこうと思った。
どうやら、武器庫の地下には新品の武器が保管されているらしく、バーバラさんがお気に入りの武器があったら取り置きをしてくれるらしいので私専用の武器を選定することになった。
私はまず新品のダガーを選定した。もしかしたら、ルオと共通の話題ができるかもしれないと思ったからだ。共通の話題が短剣って物騒すぎるけどね。それからレイピアを軽量化した剣――スモールソードに目を付けた。バーバラさんはお目が高いと褒めてくれた。なんでも護身用かつ貴族の装飾品でもあるので扱って損はないとのこと。
「ダガーとレイピアの模造品が室内訓練場にありますので触ってみますか?」
「えっ、いいの?」
「刃がないので構いませんよ」
「でもこの服だと動きにくいような気がする」
「ご安心ください。こんなこともあろうかと宿舎にレイラ様が着れる軍衣があります」
その言葉に私は心から喜んだ。何故かと言うと白亜の城に来てから、色んな服を着ておめかしすることが楽しいと思い始めたからだ。それに騎士達を見て軍衣を着てみたいと思っていた。
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