第七話 救出後①

 ルオから私が魔眼持っていることを知らされたあと、小屋の外から鎧を着た人がたくさん来た。また、悪い奴らが来たんだと思ったけど王国の騎士らしくて、ストロングって人とその部下が連れていかれた。


 ルオはこの街にやってきた経緯を細かく話してくれた。公爵になるための箔を付けるためにストロングを捕まえてにきたとか、王家と親戚だから王国の騎士と共に行動をしているだの、色々言ってたけど用はこの街に仕事をしにきたってことだ。


「ルオは帰っちゃうの?」


 小屋にある木箱に座った私は横にいるルオの顔を見上げる。


 王国の騎士はもう小屋にはいない。ここには私とルオだけだ。


「この街にもう用はないからな」


「そう……」


 今にも消えそうな声を出してしまった。行かないで欲しいと言いたかった。


 気分が落ち込んで、うつむいているとルオは外に向かって歩き出す。後姿を見てあっと声を漏らすと、ルオが振り向く。


「付いてこいレイラ」


「えっ、なんで……」


「今の俺は公爵だ、王国に黙って人間の一人や二人連れ出しても問題ない」

 

 助けてくれるって言ったこと覚えてたんだ。


「どうした来ないのか」


「ううん、行く!」


 首を横に振って、笑顔で返事をした。


 ルオに付いていくと、とある場所で立ち止まっていた。そこは私がいた娼館の前だった。


「ここレイラがいたところだろ」


「そうだけど、それがどうしたの?」


「そうだな……」


 ルオは尻すぼみに呟くと、娼館の方を向いたまま目を吊り上げて怒りを露わにしていた。


 なにをする気なんだろう?


「ここを燃やそう」


「ええっ!」


 目を丸くしてしまっった。


「ここで暴力を受けていたんだろ。やり返したいと思わないのか?」


 思うけども。いきなり燃やすとか言い出すなんて思わなかった。それに――


「――やり返すなら自分の手でやりたいかな」


「剣ならあるぞ」


 ルオは着ているコートの中から右腰に差してある短剣を見せる。


「いらない、だってプスって刺して終わりでしょ。今までやられた分と釣り合わないよ」


 自分でも物騒なこと言っているなと思っていると、横にいるルオと目が合ったまま数秒経つ。


 もしかして私が変なこと口走ったから引いているのかな? でもルオの方が散々、物騒なこと言ってそうだしやってそうだし。引かれるとは思えないんだけど……。


「なるほど、それもそうだな」


 ルオは顎に手を当てて頷いていた。これは多分、感心しているのかもしれない。


 彼は彼でどうかしているなあと思っていると、ルオは再び口を開く。


「なににしろ、ここの娼館街は風営法を守ってるお店の方が少ない、人身売買に違法薬物の売買、従業員に対する暴行。子供を娼館で匿って売るために育てるのはもっての外だ。この街の所有権が正式に王国のものになったら、お店一つ一つに調査が入って逮捕者が続出するだろう。そのとき、お前に暴力を働いた連中を引き取って罰してやろう」


 そう言い切ると、口元を歪ませていた。


「拷問でもするの?」


「レイラが望めばな」


「うーん、考えとくよ」


 もう二度と人に暴力を働かないようにしたい。そうするには死ぬことより怖い目に合わせるしかないのかな。ルオならいくらでも死ぬより怖い目に合わす方法を思いつきそうだなあ。

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