勇者パーティーと5つの不思議

結月アオバ

曰く、勇者はとんでもない美少女である

「ぶわっはっはっはっ!!!!」


 聖騎士様の大胆な笑い声が部屋に響きました。


 ────魔王を討伐して400年。


 穏やかな日常を、この世界に残した伝説の勇者御一行様たちは────旅の途中で、なんか色々と限界突破して、エルフも裸足で逃げ出すような長命種となってしまったのでした。


「おいおいおい、王女ちゃんさぁ」


 はぁ、と両手を肩ぐらいまであげてやれやれとする勇者様。すると、自身のお綺麗な緑髪をふぁさぁとはらうと、一気に私との距離を詰めてきた。


 ひっ!か、顔が良すぎる……っ!


「こんなイケメンが、見れば誰しも気絶する美少女なはずないだろ?」


「あばばばば……」


 か、顔良~!!!!!!


 そうですよね!こんなイケメンが美少女なはずありません!


「だれもそこまで言ってないわよバカ勇者」


「おん」


 ふわり、と勇者様が浮き、元いた椅子に強制的に戻される。


 今私を助けてくれたのは賢者様。紫色の長ーい髪が特徴的なグラマラスなお姉様のような人です。


「ですが私、一つだけその噂の元となった話、知ってますよ?」


 次に声を上げたのは聖女様。水色の髪をポニーテールで纏めており、シスター服を着ている見た目か弱いお人なのですが……がくぶる。


「あん?なんかあったっけ?」


 そして最後に、最初で豪快な笑い声を上げた聖騎士様。金髪の爽やかイケメンと言った感じですが、見た目がうるさいです。金ピカです。


「あの旅ももう400年以上にもなるわけだし……マジで半分くらい覚えてねぇんだよな……」


「記憶を引き出す物があれば思い出せるのだけど……」


 以上が、我が国が誇る、魔王を打ち倒した勇者様たちなのです!


「ほら、勇者様がとある悪神達を虐殺したとき、女装したことがあったじゃないですか!」


「女装………?」


 ぽく、ぽく、ぽく、ぽく………ちーん。聖者様のお言葉により、三人が一斉に「あぁ~」と声を上げました。


「く、詳しく!」


「いやなに、俺たちの敵って何も魔王だけじゃなかったのは知ってるだろ?」


「それはもう!」


 勇者様達の旅には、多くの障害がありました。


 友人に会いに来た様なノリで遭遇する愉快犯神、国を裏から操作していた闇組織の人間、魔王軍に操られ、勇者様達を暗殺しようとしていた一国などなど。


 まぁ、ほとんど勇者様の一撃で終わったようですが。


「あれは、とある村に立ち寄った時だな。村をぜーんぶ氷漬けにした迷惑な神がいたんだよ」


「名前、なんて言ったか?」


「しらね。女を泣かせるような奴の名前なんて、覚えなくていいからな────話を戻すと、まぁ村を元に戻して欲しかったら、この村一番の美女を嫁にくれとかいうクソがいた訳よ」


「なるほど、女の敵ですね」


「そう。だから、俺が女装して敵の本拠地に乗り込んだって訳。今思えばドレスって凄いな。服の下に剣隠せるんだぜ?」


「あの時の勇者様は凄くお綺麗でしたし、噂にお鰭と背びれが着いたとしてもおかしくは無いですね」


 ふむふむ。ということはつまり、この不思議、『曰く、勇者はとんでもない美少女である』の本当のことは、女装した勇者様ということですね。


「乗り込んだあとはどうしたんですか?」


「勿論────奴らを皆殺しにした後、本拠地を丸ごと真っ二つにしてやったよ」


「ウェディングドレス、真っ赤だったもんな」


「わ、ワァ……」




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

カクヨムコン短編に応募してます。応援よろしくお願いします

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る