4話 カワイイは正義

…………ふぅ〜〜、落ち着け落ち着け


「今、物騒な単語が聞こえたんだけど……。えと、同じく抜けるに僕についてくるに最後は?」




「死ぬかですね」



 きき聞き間違いじゃなかった〜〜!!



「随分と物騒だね。やめなよ、命大切にしようよ」



 僕のために死ぬとかもったいなさ過ぎる。ドブに硬貨を投げ捨てるみたいなもんだ。いや、それより酷いな。



「私の命はご主人様に捧げていますから」



 平然と当たり前のように言ってのけるフェルミ。


 いらないよ、他人の命なんて。


 ハッキリ宣言するあたり、どうやら嘘ではないようだし、そこまで慕われることなんてしてないけどな…………



 ツンツン



「ねぇねぇ」


 

 ここは一度のきちんとにフェルミと話し合うか、流石にそこまでの忠誠心を見せられても困るよ〜



 ツンツンツンツンツン



「ねぇ〜ねぇ〜」



 いや〜でも、それで変わらなかったらどうしよう〜。でも、言わなかったらそのままだし…………



 ポスッポスッ



「ねぇ〜ボス〜聞いてよ〜〜」



 肩に軽い叩かれたので気になってその方向に振り向く



「ん?何?」



 今にも泣きそうな顔でうるうるな目でこちらを見つめている可愛らしいケモノ耳の女の子が立っていた。


――うん、かわええ



「どうしたのメーニャ?」




「がうがう………ボスやめちゃうの…… ?」



 この子はメーニャ・シルベスター。このギルドの幹部にしてマスコット心の癒し要員である。そのため、みんなから可愛がられている存在だ。透き通るような白銀の髪が特徴で狼みたいな耳にスラリとしたお子様ボディのこの子はとある縁があり僕がギルドを創設してすぐに拾ったのだが………


 ま、まずいメーニャが泣きそうだ…心の癒やしを泣かしてしまっては!



「例え話だよメーニャ」



 僕は彼女を撫でながら冷静に対処した。

 

 メーニャは幼いこともあってみんなの妹的な存在で殆どのギルドメンバーに可愛がられている。前にメーニャを泣かせた男性ギルドメンバーがいたが他のギルドメンバー(主に女性)にボッコボコにされていた。そんな感じなのでもしここで泣かれてしまったら部屋の外にいるメンバーに公開処刑にあってしまうので細心の注意を払われば…



 「た、例え話でもめっ……!」




 「おっと」




 メーニャが座っている僕に抱きついてきた。幸い小柄だったのでそれほど重みはなく、抱きしめることに成功する。




「いや、いや……っ」




「こらこら〜メーニャ。そんなに頭を横に振らないで。地味に僕に髪が当たって痛いから」




「ふふ、メーニャ様は甘えたがりですね」




 いやフェルミは微笑ましく見てないで助けて欲しいのだけど?




「………はぁ。僕が悪かったよメーニャ。今後、冗談では言わないから」




「うぅ……ほんとぉ…… ?」




 次は冗談ではなく、本当に抜ける時に言うつもりだから嘘ではないよね。





「本当、本当。だから落ち着いてね」




 試しに頭を撫でてニコッリ笑ってやると嬉しいそうにしていた。





「ボス〜♡ 」




 また僕に体を預けて抱きついてきた。上機嫌な様子だ。



 一件落着かな?


 「ご主人様はギルドの皆様方にとても慕われております。ですので、どうかギルドマスターをやめないでください。他の方々も心配しますよ」


 そう言ってフェルミが部屋の扉に静かに近づき開けた。なんとそこにはギルドにいたメンバーが全員集合していた。


 恐らくメーニャが騒いだからやってきたのかな?



「みんなも今の話は冗談だから気にしないでね。ほら、解散〜」


 フェルミ、メーニャに続き、また誰かにツッコまれると面倒なので先に忠告しておく。



 僕の忠告が効いたのかギルドメンバーはぞろぞろと去っていった。

 ギルドが最初のように賑わい始めた始めたメンバー達。



 この件は冗談では言ってはいけないな。言う時は本当に抜ける時にしよう。

 


 そう反省しながら再びコーヒーを啜った。


 

 うん、美味しい



 

 

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