第51話

 奥へ進むと途中から明かりのついたランタンが出始める。壁のフックにかかっているランタンは転々と先を照らしている。


「こんな不安要素しかない階層で青いランタンとか不気味。嫌だな、意気込みが消えてしまいそう」


 返事に期待せず廣谷は独り言を呟く。道が長く代り映えのしない景色、廣谷は暇になっていた。暇だからと独り言を永遠と呟く。

 青い明かりの先を進んでいくと視界の先が開けていく。広い空間――ボス部屋だ、廣谷は経験上でそう察しを作った刀を落とさないように強く握る。

 複数の青いランタンで照らされた空間。照らされているがそこまで明かりは強くなく、ほんのり薄暗い中を廣谷はゆっくり足を動かす。変わらず廣谷の出す音しか響かない。

 部屋の中央を過ぎる。いつもならもう出てくるはずのモンスターは一行に現れない。


 出ないならそれでいい、戦闘をせずに済むから。そう廣谷は思うが、妙な気分を感じ安堵が出来なかった。

 ぞわぞわとした感覚に「出ないのではなく、すでに出てきているんじゃ?」と思えてしまう。それを考えをなくしたい廣谷は宣言した。


「『宣言。この空間にいるモンスターを僕は視認できる』……どうだ」


 発動したらぞわぞわの正体が分かる、発動しなかったらぞわぞわの正体はわからないままだが安心できる。どっちに転んでもそこまで損はないはず……。そんな思いで宣言した結果。


■■■■にんげん

■■■■■■■■いきてるにんげん

■■■■■■■■ひさしぶりにみた

■■■■きになる

■■■■きになる

 

「は」


 言葉ではないノイズが廣谷の耳に入った。ソレは明らかに言語を発していない――だが廣谷の脳はソレが発するノイズの意味が理解出来た。そんな宣言はしていないというのに。己がしたのは「視認」のみ、「言語理解」なんてした事がない。ここにあの猫玉配信機があるわけでもないのに――――。

 ゆっくりと冷や汗を出しながら廣谷は視線を音の方向へ向ける。音の発生源は上、天井。


「えっ」

 

 かわいらしい顔がついてゆらゆらと揺らいでるモンスター。それらは全て道中で見たあの青いランタンの姿をしていた。


■■■■■?きこえてる?

■■■■?みえてる?

■■■■■■■■?みえてるにんげん?

■■■■■■■■■■こんにちわにんげん

■■■■■■■?にんげんげんき?


 廣谷に気づかれている事に気づいたモンスターは嬉しそうに(?)廣谷の周りをゆらゆらと飛び回り話しかける。


■■■■■■そとしりたい

■■■■■■■■おしえてにんげん


「き、君達は、なんだ?」


 やばい見た目のモンスターかと思ったら警戒していたが、ソレは凄く友好的で廣谷は動揺して何者か問いかけてしまった。

 ソレは答える。嬉しそうに、喜んでいるように。


■■■■つかいま

■■■■■■■■にんげんだいすき

■■■■、■■■■■■■■にんげん、ぼくたちつくった


「――は、はぁ!? 作ったって、どういうことだ!?」


 衝撃の回答に廣谷はそう叫ぶ。だってこんな答えは想像していなかったから。

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