きのこエリア
第33話
「さてと、行くか」
廣谷はシロと共に30階の壁から出てくる。毒と火の銃を身につけて、手にはアプリで買った剣。剣の試し切りと、どういうモンスターが出るかの調査で30階に来ていた。
剣に攻撃力増加をしている為、サクサク進むだろ。と廣谷は思った。剣自体の能力は、振れば風圧が起こり、刃の風でモンスターを斬れるようになっていた。
廣谷はそれを見た時、シロに乗っていると危ないか? と思い、慣れないうちはシロには乗らないようにすることを決めた。
「シロはさっきも言った通り、後ろで待機」
廣谷の言葉にシロは頷く。前にいて風でシロを傷つけたら危ないと考えたからだった。
シロが頷いたのを確認してから廣谷は歩み始める。
きのこエリアは端や壁にきのこが生えており、そこから見える壁の色は茶色だった。そして視界が胞子でなのか少しくぐもっていて、廣谷の鼻はむずむずとした。くしゃみをしたら危ないと思い、念の為にと持ってきていたマスクをつけ先に進む。
「視界も悪いし、くしゃみをしそうになるし、何か分からない匂いがするし……いやなエリアだ」
先を進むと、茶色のスライムが現れる。最初の階だけに出るスライム。廣谷は剣を鞘から引き試しにスライムに向けて振った。
すると、スパァンとスライムの体が一瞬で真っ二つになった。それを見た廣谷は呆然としてシロの方を見る。
シロはガタガタと震えており目をぱちくりさせていた。
「威力やばい……」
「わ、わふ」
『絶対、斬られたら死ぬ……』
「そう……だな……これは、使わないでおこう……」
廣谷は剣を戻し、刀を取りに戻った。
剣を戻して刀を持ってきた廣谷はシロの上に乗って先に進む。シロは先に進みつつ、時折くしゃみをして辛そうにしていた。
「わ”ん”」
『くしゃみ止まらないぃぃぃ……』
「大丈夫……ではないな。能力使おうにも、どう使えばいいか分からない。胞子を受け付けない? くしゃみが止まる? どれがいいんだ」
「わん……」
『大丈夫、これぐらい』
シロはずびずびと鼻水を垂らしながら言う。廣谷は大丈夫じゃないだろ……と思いつつ口には出さなかった。
そうしてシロはくしゃみをしながら先に進み、31階の階段を見つける。その時にはもうシロの顔は鼻水でぐちゃぐちゃだった。
「わふぅぅ!」
『胞子がぁぁ。もうやだぁぁ!』
「分かった、帰ろう、帰ろう。シロは部屋で待機しよう。『宣言。僕達は部屋に戻る』」
流石に見るに堪えなくなってきた廣谷はシロと共に部屋に戻る。すぐに廣谷はタオルを持ってきてシロの顔を拭く。
「わふ、わん」
『うっうっ……ごめんね』
「いい、こっちこそごめん。次からは俺一人で行くから」
廣谷はシロの顔を拭いてから、まる猫を待機させて、スライムと共に部屋から出ようとする。
「何かあったらまる猫に言え。俺のスマホに通知来るようにしてるから」
そう言って廣谷は部屋から出た。
「犬は嗅覚がすぐれてるから、影響受けやすいんだろうな」
ぽつりと呟き、額を押さえてため息をつきながら先に進んだ。
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