第15話

 20時になったのを見た廣谷はダンジョンへの準備を始める。軽く着替え、銃と刀、カードケースを持って緑のエリアに入る。

 シロの上に乗りながら出てくるモンスターを撃っていると、ふとモンスターの数が前回より少ない事に気づいた。


「他の探索者がもうここに来た? 早いな」


 もう来たなら出会う可能性ありそうだな。と廣谷は思いながらダンジョンを進んでいく。

 そしてゴーレムの部屋に到達すると、そこにはすでに他の探索者がいた。四組の探索者はゴーレムに苦戦しているようで廣谷はじっとその様子を見る。


「『……宣言。刀に即死効果の力が宿る』……念の為に。使う必要が無ければいいが」


 ここで簡単に手を出すと何かしら言われてしまう可能性を感じ、廣谷はじっと刀の柄をトントンと押しながら何も起きない事を願う。一回目に撃破したからか、廣谷の前に柵は降りてきていなかった。

 そして数分後ゴーレムがぴたりと止まる。だが溶けない。

 四人は疲れた様子で嬉しそうに歓喜の声を上げていた。そして先に進もうとした瞬間、ゴーレムが再び動き出した。

 

「な、なんで動いて……!?」

「もう無理だよぉ……疲れた……」


 動き出したゴーレムに困惑しながら武器を構える探索者達。廣谷はシロの背中を叩いて「進め」と指示した。

 ゴーレムは振り上げたこぶしを四人に振り下ろそうとした。その場から逃げ出そうとするもの、唖然とするもの。絶望するもの。立ち向かおうとするもの。

 

「使う必要が出来てしまったか。死ね」


 振り下ろす直前、廣谷はゴーレムを切り裂いた。流石に硬い体だから刀折れるか?  と思ったがまだ折れている様子はなく、廣谷は安堵した。

 切られたゴーレムは刀に付与した即死効果によりその場で溶けて消えてしまった。そしてその場に残される一つの銃。

 

「え、え……」

「いき、てる……?」


 探索者達が困惑した様子で廣谷を見る。


「……すぐに警戒を解くな。怪我をしてるならあの道を進め、回復出来る」

「え、えっ……」

「……ひろさん?」


 探索者の一人が廣谷の配信名を呼んだ。


「そうだが。とりあえず今日はあの道に進んで回復してから帰れ。今の君達じゃ、この先に進むのは命取りだ」

「本物だ……シロくんかわいい……」

「聞いてるのか? 早く帰れって」


 廣谷の言葉に四人はシロに近づく。そしてシロの体を触りだし、廣谷は機嫌が悪くなる。うちの子に何してるんだ。許可してないぞ。廣谷はそう思った。


「は、や、く、か、え、れ」

「ひろさん、入り口まで送ってくださいよ」

「は? 送るわけないだろ、さっさと行け」


 嫌そうな顔をする廣谷に一人が何度も送ってくれと頼み込む。それに周りの三人がやめておいた方がいいと止めるが、その探索者段々調子に乗っていく。


「ねえ能力教えてくださいよ、俺達の能力も話しますからさあ。それにひろさんの後ろに浮いてるそれなんです?」

「……調子に乗るな。シロ、先に進むぞ。そしてお前は二度と助けない」


 シロに指示し、その場に去る。背後から「酷い」だの「ひろさん!」等の騒ぐ声が聞こえた。

 それを廣谷は無視しシロに先に進ませる。助けるんじゃなかった。あの野郎……。と廣谷は機嫌が悪くなった。

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