第16話

 二人は先に進み15階に到着し少し歩いていると、分かれ道があり、その右側に看板あった。看板にはマークがついていた。上への矢印と箱のような絵が描かれていた。

 

「なんだこれ」


 シロに指示し、看板の方向に向かわすとそこには色の違う壁。近くには上矢印のボタン。


「なんだ……これ」


 そう呟きながらボタンを押す。少ししてからチーンと音が鳴り壁が開いた。そこはまるでエレベーターのような内装をしていた。


「……エレベーター?」


 シロから降りエレベーター内部を見る。そこそこ広く20人くらいなら余裕で入るのでは? と廣谷は思った。

 流石にシロは入れそうにないので一度シロを手乗りサイズにしてから、廣谷は中に入る。まる猫も入ったのを確認してから扉を閉め、沢山ついているボタンを見る。

 25階、35階、45階と10階ごとに下がるボタンを見て廣谷は25階を押してみた。


――ビー!!


『この階層は解放されておりません』


「なら1階は……」

 

 下の階に行けない事を知った廣谷は上の階のボタンを押す。するとがこんと音を鳴らしてからエレベーターは上の階に向かって行く。

 そしてピンポンと音がなり続けて『一階です』と音声が流れた。

 扉が開き廣谷は先に進む。進んでいると見覚えのある場所に辿り着く。階段が見え上ると地上への扉。

 戻るとエレベーターの道に看板が出来ていた。15階で見た看板と同じマークがついていた。


「これでいつでも15階に行けるって事か。これはこれで便利だな……でも何で15階? 10階でよくないか……?」


 廣谷は疑問を口にする。何故。と思ったが、まあ便利になるからいいか……と考える事をやめた。


 時計を見るともう0時を回っていた。

 

「あいつらは無事に戻れたか? まあ面倒臭い奴がいたから戻るのは一苦労しそうだな」


 ゴーレムの部屋で助けた探索者を思い出しながら、エレベーターを写真に収めタイツクに呟く。


『15階直通のエレベーター解放した。まだ下の階はあるが、まだいけないらしい。ゆっくり解放していく』


「よし、今日は20階までは行きたいな」

「わん!」

『行きたいね!』


 スマホを仕舞ってからエレベーターに戻り15階まで降りる。そしてシロを元の大きさに戻してから二人は先に進んだ。

 15階をモンスターを倒しながら進んでいると、ふとラッシュの事を思い出した。意思疎通できるモンスターが他にもいるのだろうか。とぼんやり思っているとシロがある方向の道を見てから走り出した。


「なっ……!? シロ!?」

「わん! わん!」

『お母さん!』

「はあ!? お母さん!? 何!?」


 落ちないようにシロに掴まり先に進んでいくとシロに似た白いウルフがそこにいた。シロとの違いは落ち着いた雰囲気纏うのと、シロよりも大きな姿だった。


「……あら……おかえり」

「わふー!!」

『お母さーん!!』

「ちょっ……シロ止まれ!!」


 シロはお母さんと呼んだウルフに抱き着こうとする。廣谷は落ち着かせようと声をかけるがシロはウルフに抱き着く。

 その衝撃で廣谷は落ちてしまい尻餅をつく。


「大丈夫?」

「いっ……た……大丈夫です。君は、シロの母親……なのか?」

「シロ……? この子の事? いい名前を貰ったのね……。そうね、母親よ……」


 ゆっくりとした声で話しウルフ。


「私は白ウルフ一族の長、エルナ。貴方は……?」

 

 エルナは頭を下げた。廣谷もそれにつられ頭を下げた。


「姫条廣谷。白ウルフは灰色のウルフとは違うのか?」

「喧嘩別れした親戚……かしら……?」

「喧嘩別れ」

「力でねじ伏せる向こうと、穏便に済ませる私達じゃ、考えは違うの……」


 本当、嫌な親戚をもっちゃった……としょんぼりとした様子でエルナは言った。

 

「廣谷さん、この子をどこで見つけたの?」

「5階……だな。灰色のウルフ達に追われてた」

「この子はやんちゃな子でね……散歩ついでにあちらにちょっかいを出したのでしょう……。馬鹿な子ね」

「わ、わふう……」

『ご、ごめんなさい……』


 エルナがきつく睨みつけるとシロは耳を垂れ下げた。


「はは……他にも意思疎通出来る奴らはいるのか?」

「さあ……私達はあまりこの階から出ませんから……」

「そうか……シロ、行くぞ。これ以上迷惑はかけられない」


 廣谷の言葉にシロは戻ってくる。その背に廣谷は乗りエルナに頭を下げる。


「ありがとうございました」

「いいのよ……貴方もまた時間があればおいでくださいね」


 エルナも頭を下げたのを見てから二人は元来た道を進んでいった。


「お母さんに会えてよかったな」

「わん!」

『うん!』


 それにしても凄く落ち着くモンスターだった。声も凄く透き通った声だったし……。廣谷はエルナの事を考えながら先に進んだ。

 

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