第40話 最期の言葉
少し早く着いた僕たちは、海の見えるベンチに座って話をする事にした。明美の体はもう消える寸前だった。
「もう、、夢が終わるみたいね」
明美がそう言った。夢の終わり……。それは、現実での明美の死が近づいているという事。
「まだ、、もっと明美と色んなことがしたいよ。まだ、、やりたい事リストも全然出来てないし……。同窓会だってこれから一緒に行こうよ!!」
「出来ないよ……。もう、、私の体はみんなに見えない。行っても意味がないよ」
「そんな事ないよ……」
「ゆうくん。今までありがとう。ずっと死ぬのが怖かったけど、ゆうくんと会えて本当に毎日が楽しかった。この夢の世界も色んなことが出来て良かったよ」
「そんな、、別れの言葉なんて……聞きたくないよ」
鞄の中から僕は四角い小さな箱を取り出した。東京で買った20万の金色の真珠の婚約指輪。少し、高かったけど、全財産をこの指輪に捧げた。
僕の気持ちをちゃんと……伝えないと。
「明美、、僕、明美の事がずっと、ずっと、ずーっと大好きだったよ。だから、、最後にこれを……」
そう言って、僕は四角い箱を明美の手元に渡した。
「え、、これって……」
箱を開けた明美は、嬉しそうな顔をしていた。
「え、、指輪!?」
「明美、これからもずっと一緒に居ようよ。」
「……ありがとう」
目には涙が浮かんでいた。指輪を左の薬指に付けた明美の下半身が光の粒子となって消えていく。
「まだ、、もっと明美と話したいよ。まだ、、もっと一緒に居たいよ。お願い、、行かないで。僕達がこの世界に来れたみたいにもう1度奇跡起きてくれないかな……」
「無理だよ……。私は、、もう死ぬんだよ。死ぬってどんな感じなんだろう。少し怖いな。でも、、この指輪のおかげで少し怖くなくなったよ。死んでも絶対にこの記憶は忘れないから……。あとは、、手紙に書いたから。じゃあ、、今までありがとう。さよなら……」
その瞬間、一気に周りが純黒に染まり始めた。
「祐介、、、起きろよ……」
拓海の声でやっと目を覚ました。ここは、、どこだろう?周りを見てすぐに病院だと分かった。
病室のベッドで何故か僕は寝ていた。
「何で……ここに?」
「やっと目を覚ましたか……。お前、あの日から1週間ずっと目を覚まさなかったんだよ」
1週間も!?1週間眠り続けるなんてあり得るのか?何かの病気かもしれないと不安になる僕の右手に1冊のノートが握られていた。
「このノートは……」
「なんか、昨日からずっと持ってたよ。僕も見てみたけど、何にも書いてなかった」
その右手に持っていたノートの表紙には、「未来日記」と書かれていて、1ページ目を捲ると、2033年6月1日と1番上に書かれていた。
拓海には見えなかった文字が何故か、、僕には見える。他のページにも見覚えのある内容の日記が書かれていた。
「これは、、あの時の――」
「お前、そのノート読めるのかよ」
「うん。ハッキリと文字が見える。それより、明美は?」
「隣の病室でずっと意識不明のままだよ」
体を起こした僕は、隣の病室に日記を持ったまま、向かった。隣の病室では、明美は意識不明のまま眠っていた。
明美の左手の薬指に金色の真珠の指輪を付けていた。その指輪は最期に僕が夢の中であげたものだ。
そして、3日後。明美の心臓は止まった。僕は、明美の病室で1日中泣き続けた。
やっぱり明美が死ぬのは辛い。なんで、、明美が死なないといけないんだろう。いっそのこと、、僕も死にたい。そんな思いが頭の中を過り始めた。
学校の屋上に上がって、真下を見下ろしてみた。ここから落ちれば、、死ぬ事が出来るかな。明美の所に行きたい。明美と一緒に……。
「先輩!!何してるんですか!!」
狂い始めていた僕を支えてくれたのは、静香だった。明美が死んだ日も静香はずっと僕の事を気にしてくれた。
「明美の所に行きたい……」
「明美さんも、先輩に生きて欲しいと願ってますよ。だから、簡単に死にたいとか言わないでください!!」
その言葉が胸に突き刺さった。そうだ。明美のためにも生きないと……。明美に色々と教えないと……。
その時、占いに行った時の言葉が頭に蘇ってきた。
『あなたが苦しい時や悲しい時に、一緒に寄り添ってくれる人であり、一緒にいて楽しい人ですね』
今まで明美の事しか見えてなかったけど、、。静香ってこんなにも優しい人だったんだ。
静香は、僕が苦しい時や悲しい時に一緒に寄り添ってくれる今の自分にとって大切な人なのかもしれない。
そして、、時は流れ――10年後。
6月6日。夢の世界で何度も見てきた同窓会が始まる。
____
あとがき
すいません。最近、小説を書くモチベを完全に失っていました。この続きを書かないといけないとは思いながらも、、中々進みませんでした。本当に遅くなってすいません。今まで読んでいた人ももう殆どストーリーを忘れたかもしれませんし、、もう読んでくれる人自体少ないかもしれない。でも、次の話で最終回です。この話は失踪させる訳にはいかないと思っていました。なんとか、最終回まで書きます。もし、時間がありましたら、1話から読んでもらえると嬉しいですが……。どうか、最後まで応援よろしくお願いします。
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